【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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すてーたすおーぷん

「ダンジョンを攻略するとして、まずはそこのドアから出ましょうか」

「待って、セシリア」

 

 立ち上がってドアに向かおうとしたセシリアを私は呼び止めた。

 

「いきなり外に出ないで。あの女神、ゲームバランスデザインの才能もないから。手ぶらで歩いてたら、第一階層でも普通に死ぬよ」

「ええー……?」

「あはははっ! 確かに」

 

 私の女神評がおもしろかったらしい、ユラは腹を抱えて笑い出す。私は彼を無視して、ジャージのポケットに手をつっこんだ。大きめのポケットからは立派な革張りの日記帳が出てくる。

 

「攻略本は私の装備として持たせてもらえたみたいだね」

 

 周回プレイしたとはいえ、この巨大な女神ダンジョンの全マップまでは覚えてない。RTA(リアルタイムアタック)するなら、攻略情報は必須だ。私は攻略本を確認すると、部屋の壁の一点を叩いた。すると壁の一部がスライドして中から一抱えくらいの箱が出て来る。上蓋部分が丸い素朴なチェスト。いわゆる宝箱というやつだ。

 

「小夜子さん? どこからそんなものが!」

「周回特典の初期ボーナスボックスだよ。私の存在が周回認定されたっぽい」

 

 ボックスの中にはマントとかナイフとか、ダンジョン攻略に使えそうなアイテムがたくさん詰まっていた。これを持ち出さないなんて、もったいない。

 

「アイテムボックスに、薬草、ポーション、このへんのベタなアイテムは全部持っていかないと。あとは……あー! なんでこんなものが!」

 

 ファンタジーなアイテムとは明らかに異質なモノを見つけて私は思わず叫んでしまった。

 ちょうど子供の両手に収まるくらいの機械。にぎりやすい丸いフォルムをしていて、スティックやボタンがいくつもついている。

 

「この世界でもう一度、ゲームコントローラーを見ることになるとは……」

「何それ、女神のアイテム?」

 

 ユラが興味深そうに私の手元を覗いてくる。

 

「似たようなものかな。多分大元の設計は私の世界のエンジニアだと思うけど」

 

 私はなつかしのゲームコントローラーを握りこんだ。

 とたんに、目の前に映像が浮かび上がる。画像は平面的で、そこにはマップだとか時間だとか、細かい情報が描かれていた。

 

「すてーてたすおーぷん……」

「小夜子さん?」

「なんか、コレ見たらそう言うのが作法らしいから。えーと、これはダンジョン内の情報を得るための道具だね。これは私が使っていい?」

「お願いします。私には、ちょっと感覚がわかりません」

 

 お互い、得意分野で作業を分け合ったほうがいい。私は装備品をセシリアに渡してから、改めてメニュー画面を開いた。そこにはダンジョンマップとメニューリストが並んでいる。

 まだ攻略を始めていないからだろう、マップには今いる部屋しか描かれてなかった。

 ゲームにはオートマップ機能があったから、歩けば勝手に情報が増えるはず。

 メニューから試しに『ログアウト』を選んでみたけど、ボタンが機能してなかった。ちぇっ。次に『パーティ』を選ぶと、ここにいる三人のステータスが表示された。

 

「セシリア、ジョブは聖女……能力値は高いけど、レベルは五。まあ妥当な数値ね」

 

 彼女は天才だけど実際に何かと戦ったことはない。経験値でアップするレベルは低くて当然だ。

 

「ユラは……うへえ」

 

 ユラの項目を見て、私は思わず声をあげてしまった。ジョブやプロフィール欄が見事に文字化けしてしまっている。レベルはカンストの九百九十九、スキルリストには確認しきれないほどのスキルが並んでいる。

 

「うん? でも、パラメーターは意外に低いな?」

 

 だいたい、レベル五十の魔法戦士くらいの値だ。強いけど、絶対に殺せないほどじゃない。そう言うとユラは首をすくめた。

 

「ここに来たときに、システムに干渉されちゃってさ。力が制限されてるみたいなんだよね」

「チート認定されてナーフされたんだね。システム、ぐっじょぶ」

 

 ユラが本来の能力通りだったら、ダンジョン攻略なんて一瞬だ。最下層まで一気に降りてボスを倒して終了である。でもこんなチートキャラ、好き勝手行動させるわけにいかない。

 ユラのステータスを確認していた私は、ひとつ気になるアイテムを発見した。

 

「ねえ、この服従の首輪って何? 解除不可って書いてあるけど」

 

 機能は『セシリアへの絶対服従』

 なかなか物騒なアイテムだ。この悪魔がセシリアに従ってくれるのは助かるけど。

 

「あ……」

 

 セシリアの顔がひきつる。その横で、ユラがうれしそうに制服の首元をくつろげた。そこには茨をモチーフにした禍々しいチョーカーが巻き付いていた。

 

「彼女からのプレゼントだよ!」

「ええと……彼を拘束するつもりで作った……呪いのアクセサリー……です」

 

 ヤバいものを作った自覚はあるのか、説明しながらセシリアは背中を丸めて小さくなっていく。

 

「さっき鏡のところでユラが血を流してたのって、これが原因かぁ……」

「彼を止めようと思って、呪いを発動させたんですけど、止めきれませんでした」

「ダメだよ~。僕を止めようと思ったら本気で殺すつもりで発動させないと。最後の一瞬でためらったでしょ」

「う……」

「なんでユラが説教側に回ってんだよ!」

 

 お前がシステムに悪さをしなけりゃ呪いも発動しないんだってば!




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