【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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攻略開始?

「開けるよー」

 

 私たちを守る肉壁、もとい序盤お助けキャラと化したユラがドアをあけた。ついに女神の理不尽ダンジョン攻略開始だ。彼が周囲の安全を確認したのを見てから、私たちふたりもダンジョン内に足を踏み入れる。

 そこは岩壁がえんえんと続く、薄暗い洞窟だった。

 硬そうな灰色の岩盤をくりぬくようにして、洞窟が四方八方へと延びている。その様子は、アリの巣を思わせた。

 

「なるほど、ゲーム画面の風景を直接見るとこんな感じになるんだ」

 

 私はきょろきょろと辺りを見回す。

 幸いなことに、壁にはところどころ魔法で作られたらしい明かりがあり、完全な暗闇はない。カンテラや松明のような明かりをわざわざ持ち運ばなくてもよさそうだ。このあたりもゲームの設定通りだ。

 

「うわ……何この洞窟。気持ち悪ぅ」

 

 同じように周囲を確認していたユラが、嫌そうに顔を歪めた。

 

「気持ち悪いってどのへんが?」

「何の変哲もないダンジョンの洞窟ですけど」

 

 セシリアも一緒になって首をかしげる。それを見てユラは大仰にため息をついた。

 

「洞窟のくせに、どこもほとんど高低差がなくて、天井の高さが一定って地形として異常すぎない? そのくせ壁面には人の手で掘った痕跡はないし。……だいたい、この洞窟のどこを向いても空気が一定量流れてるんだけど、通気口とかどうなってるわけ?」

「そこは考えるだけムダじゃないかな。女神の作ったご都合洞窟だもん。それっぽく見せかけた人工の通路だと思うしか」

 

 ネズミの国ランドのアトラクションにいるようなものだ。一見自然の風景のように見えていても、結局は女神の手の中で作られたもの。現実との食い違いを議論しても意味がない。

 自然を研究した高低差あり、横穴あり、浸水あり、酸素残量ありの本格ダンジョンゲーもないわけじゃないけど、そんなのいちいち気にしてたら攻略が進まないし。

 

「えーと、現在地はと」

 

 私はコントローラーを操作してマップ画面を呼び出す。ドアから出歩いたおかげで、表示されるエリアが少しだけ広がっていた。

 

「小夜子さん、どちらに向かいますか?」

「まずは『気配感知』とか『ダンジョンサーチ』とかの探索に便利なスキルを取りにいこう。そこの分岐を右にいった先に、スキルが覚えられるアイテムがあったはずだよ」

「ダンジョン内で、サーチスキルが覚えられる……?」

 

 またしても、ユラの顔が歪む。

 

「迷宮って、侵入者を排除するために作るものだよね?」

 

 その本気の困惑顔を見て、私は何故彼がこんなに戸惑っているのか理解した。

 システムをハックしてるから、てっきりユラもゲーム知識があるのかと思ってたけど、実は違うみたいだ。さっきもゲームコントローラーを見て珍しそうにしてたし。

 彼があくまでこの世界の理だけで動いてるのだとしたら、この洞窟はゲーム画面じゃない。侵入者の命を刈り取ろうとする危険な罠だ。のんきに探索スキルだ、マップだって言ってる私たちのほうが異常に見えるだろう。

 

「そこは目的が逆だね。ここは、侵入者を拒む迷宮じゃない、あくまで『聖女の教育施設』なんだよ。迷路も罠も全て乗り越えられる障害として設定されてて、致命的な失敗をしない限り最下層のゴールまで到達できるようになってるの」

「ダンジョン内で攻略を助けるアイテムやスキルが手に入るのも、その一環なんですね」

「乗り越えられる障害、ね……」

 

 は、とユラが息を吐いた。

 さっきまでの困った顔じゃない。どこか不気味な黒い笑いだった。

 

「……ユラ?」

 

 セシリアが眉をひそめる。

 

「なんでもないよ。いかにもあいつららしい施設だって思っただけ。それよりのんきに話してていいの? 何かがむこうから来たんだけど」

 

 ユラが洞窟の一方を指し示す。

 通路の先からは、真っ黒な毛皮のネズミが現れた。デザイン自体は路地裏でよく見かける、いわゆるドブネズミだ。しかしその大きさが異常だった。普通のネズミの数十倍、狩猟用に飼われている中型犬に匹敵するサイズだ。

 

「序盤のザコ敵、ケイヴラット……かな……?」

 

 ゲーム画面だとザコでも、実際に目にすると結構ヤバいな?!




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