【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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負け邪神

「あれ? 君たち本気で知らないの?」

 

 ユラは聖女と勇士を殺せない。そう聞いて、びっくりした私たちを見てユラもまたびっくりした顔になった。

 

「今まで私たちがどれだけあなたを警戒していたと思うんです。あなたこそ、こんなことバラしてよかったんですか?」

「ん……まあ、特別隠してた話でもないから、言っていいんじゃないかな。厄災の神本体はともかく、端末である僕には君を直接手にかける権限はないんだ」

「権限の問題なの?」

 

 ちょっと何言ってるかわからない。

 

「僕は彼女を殺すことを世界に許されてない……明確に権限の問題でしょ」

 

 ユラは肩をすくめる。

 いやいやいや、世界が許してないって、ますます意味がわからない。

 

「だいたい変だと思わなかったの? 厄災本体はまだ封印されてるとはいえ、僕はこの世界の誰よりも強いんだよ。王宮に出向いて王族と高位貴族を根こそぎ殺せばハーティア国なんて簡単に潰せる」

「でも、そうならないのは、権利を制限されているから……ですか?」

「そういうこと」

 

 いつの間に接近したのか、ユラはするりとセシリアの首に手をそえた。

 

「迷宮の外で君の細い首に手をかけて、本気で締めようとしたとする」

 

 ぐ、とユラの指が曲がる。

 

「僕らの実力差じゃ、呪いを発動させる前に君の首が折れておしまいになるはずだよね」

「やっ……!」

 

 セシリアがとっさに後ずさる。首から手を離されたユラは苦笑した。

 

「大丈夫だよ、そんなことは起きない。隕石が落ちてくるか、地震でも起きるか、何かしらの数奇なる運命(ストレンジフェイト)が発生して邪魔される。世界はそう『設定』されてるんだ」

「待って、それはおかしくない? あんたに殺された人間が何人いると思ってんの。獣人一族に、ケヴィンの婚約者たちに、シルヴァンの両親に……ダリオだってあんたに殺されそうになってた!」

「勇士の血を引かない一般人は対象外だよ。ダリオも本当に殺そうとしたわけじゃない。彼は死なない程度にボロボロにしてから、父親に殺させるつもりだったんだ。血族同士の争いなら強制力は働かないから」

「いやにあっさり教えたと思ったら、直接の殺人以外は全部ノーカンなわけか。だとしたら、シルヴァンの両親殺害も……」

「直接手を下さずに、暗殺者を差し向けた。そういうことですね?」

 

 アギト国の侵略作戦がいやに遠回しな理由がわかった。直接手が下せないから、周りの者に殺させていたのだ。

 セシリアに睨まれて、ユラはくつくつと笑う。

 

「こう見えて、運命の制限は結構強力でね。運命係数の高い人間を害そうとすると、必ず反作用が起きるんだ。血族全体を罠にかけて根絶やしにしようとしても、シルヴァンみたいに孫ひとりだけ生き残ったりするし。結局五百年以上かけて断絶に成功したのって、ダガー家くらいだったな」

「それもやっぱりあなたの仕業でしたか……」

「睨まないでよ。僕は所詮あくせく働いて人心を腐らせるしかできない、無力な存在なんだからさ」

「いやそれ充分迷惑だから」

 

 その影響でどれだけの人間が不幸になったと思うんだ。

 多分これらの工作活動が全部成功した結果が、『何やっても世界が滅亡するクソゲー』世界だったんだろう。そう考えると、彼の計画は半ば以上達成していたと言える。

 そんな事実、ヤバくて明かせないけど。

 

「本当にタチ悪いな……」

「そういう文句は創造神に言ってよ」

「なんでそこで創造神が出てくるわけ?」

「だって僕をそう作ったのは、創造神だから」

 

 

 




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