【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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フレンドリーファイア

「元のっつーか、こっちの世界で産まれたリリアーナのほうはどうなってんだ?」

「ん~……そこは私もよくわかんない」

 

 私はメニュー画面を開くと、パーティーメンバー候補一覧ページを表示した。ヴァンたち三人がメンバー登録されたので、候補に表示されているのはリリアーナだけだ。

 しかし、私というイレギュラーが存在するせいなんだろう。彼女のアイコンにはノイズがかかっていて、キャラ詳細も閲覧できない。

 討伐ポイントを稼げば、ヴァンたちのようにパーティーメンバーとして召喚できると思うけど、この状態で彼女を呼び出したとして、何が起こるかわからない。バグやノイズに対処できる機能を手に入れるまでは、そっとしていたほうがよさそうだ。

 

「システム側からしたら、こっちのほうが正規IDのはずなんだけどね」

「人格どころか、IDまで乗っ取ってたりして」

「言い方ぁ!」

 

 その可能性はあるけど!

 いちいち怖いこと言うのやめてくれない?

 

「……サヨコ、そこのツノつきを一発殴って追い出していいか?」

 

 話を聞いていたクリスが拳を構えた。

 

「人手が増えた以上こいつはいないほうがいいだろう」

「思い切りのいい助言ありがとう……。でも、殴るのはともかくとして、追い出すのはちょっとやめたほうがいいかな」

「何故だ? 部隊に不和をもたらす人間は、下手な強敵より恐ろしい。士気を下げるばかりのこいつをそのままにしていても、いいことはなさそうだが」

 

 クリスの言いたいことはわかる。

 実際、私もユラと喧嘩して空気を悪くさせたひとりだし。でも私たちには彼を追い出せない理由がある。

 

「説明するより、実際にやってみたほうが早いかな。クリス、思いっきりユラを殴ってみて」

「よし、まかせろ!」

 

 言うが早いか、クリスはキレイなフォームでユラに右ストレートをお見舞いした。

 女子とはいえ鍛錬を重ねた騎士の拳だ。ガードもしてなかったユラはそのまま吹っ飛ばされるはず……だったんだけど。

 

「なんだこれ?!」

 

 悲鳴をあげたのはクリスだった。

 

「クリス、大丈夫か?」

 

 婚約者の顔色が変わる。クリスは青い顔で自分の拳を反対の手でさすった。

 

「確かに殴ったはずなのに、手ごたえがない……実感がなさすぎて気持ち悪い……!」

「ユラ、てめえ何やった!」

「ひどいなあ、僕は何もやってないよ」

「じゃあなんで!」

「落ち着いて、ヴァン。ユラが何もやってないのは本当。同士討ち(フレンドリーファイア)防止機能っていって、パーティーに登録されたメンバー同士では、お互い傷つけあわないようになってるの」

「何故そんなものが……」

「ここが元は戦闘訓練用の施設だってことは説明したよね。連携の練習もしてないメンバーに怪我させないためだよ」

 

 所詮ここは訓練場。

 どれだけ敵と戦ったところで、ダンジョン外の本物の敵は減らない。

 出陣する前の訓練で使い物にならなくなったら本末転倒だから、ダンジョン内はプレイヤーが大怪我しないよう様々な制限がかけられている。

 

「だったらなおさら追い出したほうがいいんじゃないか。パーティーメンバーじゃなくなったら、心おきなく殴れる」

「逆だよ。私たちの身を守るために彼をパーティーに入れてるの」

「逆……?」

 

 クリスは不思議そうに首をかしげる。

 

「さっき軽くパラメーターを確認したよね? セシリアが二十、ヴァンが二十四でケヴィンが二十六、一番レベルが高いクリスでも三十どまり。それに対してユラはレベルカンストの超高パラメーターキャラなんだよ。パーティーから外して戦えるようになったとして、全滅するのはこっちのほう」

「やだなあ、そんなことしないよ」

 

 ツノつきの悪魔はニヤニヤ笑う。

 

「もう一度仲間にして、って呪いつきで(ていねいに)お願いするだけで」

「……つまり言うこときくまで生き地獄を味わわせるってことだろーが」

 

 彼を封じる方法が絶対ないわけじゃないけど、現時点では無理だ。

 

「それに、システムへの干渉問題もある。さっき、入り口でレリーフを焼いてたの見たでしょ? 何の制限もなくダンジョンを歩かせたら、どこでどう不具合を起こして回るかわかんないよ」

「結局目の届くところに置いて、セシリアの首輪につないでるのが、一番安全ってことか」

「不本意ながら、そうなります」

 

 セシリアが疲れたため息をついた。

 望むと望まざるとに関わらず、ユラの手綱を押し付けられてしまった彼女には、ずっとストレスがかかっている。

 

「状況はわかった。そういう事情ならユラを追い出すのは一旦棚上げだ」

 

 完全に諦めたわけではないらしい。クリスは大きく頷いた。ケヴィンがにこりと柔らかな笑顔を私たちに向ける。

 

「これからは俺たちが間に入るから、安心してね」

「ありがとう~……! 持つべきものは、コミュ力の高い仲間だね!」

 

 こんなに心が救われる笑顔が他にあるだろうか。いやない。

 

「まずは森の迷路っぽい第二階層踏破を目標にしよう」

「何かあるのか?」

 

 ヴァンに尋ねられて、私はメニュー画面を切り替えた。

 そこには階層ごとにアンロックされる機能の一覧、俗に言うスキルツリーっぽいものが表示されている。

 

「第三階層まで行ったら、人工知能による対話型ダンジョンナビゲーションが解放されるんだ」

 

 バグを直すなら、まずはナビゲーション機能をゲットしないとね!




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