【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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連戦ボーナス

「目標を発見、仕掛けるか?」

 

 開けた場所にぽつんと生えた大きな木を見つめて、クリスが言った。意見を求められたヴァンも同じように木を見つめる。そこには、わざとらしいくらいに大きな蜂の巣がひとつ、枝にくっついていた。奇妙な果実からは、やっぱり大きなハチが出入りしている。

 

「いきなり突っ込むのはナシだ。巣の中にどれくらいハチが詰まってるかわからねえ。サヨコ、なんか情報あるか?」

 

 名前を呼ばれて、私は攻略本のページをめくる。

 

「あそこにいるのは、ダンジョン用に作られたモンスター『キラービー』だよ。働きバチはだいたい三十から四十。そいつらを全部倒すと、女王バチが出てくる」

「成虫以外の気配もするんだけど?」

 

 私たちとは違うものが見えているのか、ユラが巣を見つめながら言う。

 

「それはサナギかな? 女王バチと戦ってると、一定時間ごとに羽化した働きバチがでてきて加勢するから」

「女王バチが出てきたら、あとは早めに決着をつけろってことだな」

「あんなあからさまに怪しい蜂の巣なんて、避けて通ったほうがいいと思うけど……」

 

 一緒になって蜂の巣を見ていたケヴィンが困り顔になる。

 

「それは無理。蜂の巣の中に埋まってる宝石が、ボス部屋の扉を開けるカギになってるから」

「冒険小説ではありがちな展開だけど、まさか自分でやるはめになるとはね」

 

 苦笑しつつも、攻撃をやめるつもりはないらしい。

 頼れる仲間たちは、それぞれに武器を手に持った。ヴァンは小回りのきく片手剣、ケヴィンは打撃重視のモーニングスター、クリスは使い慣れた大振りの両手剣クレイモアを装備している。

 

「女王が出てくるまでのハチの数は有限なんだろ? あんなでかいの、いっぺんに四十匹も相手にしてらんねーから、外に出て来たやつをちまちま削って、最後に女王を倒すぞ」

 

 ヴァンが作戦を指示する。クリスたちはそれに頷いた。

 第二階層の探索を始めて早三十分ほど。攻略は驚くほどてきぱきと進んでいた。さすが騎士として軍人教育を受けた三人組。作戦行動に無駄がない。

 

「僕が即死魔法を使えば、全部いっぺんに片付けることもできるけど?」

「ユラが経験値を総取りしても無駄でしょ。あんたは最低限のサポートをする係」

 

 レベルカンストキャラを活躍させたところで、私たちに得るものはない。

 

「先に攻撃力と防御力上昇の加護をかけますね」

 

 セシリアが祈りをささげるように手を組んでヴァンたち三人に魔法をかける。彼女も一応マチェットを持っているけど、前衛メンバーが加わった現在、彼女ポジションは後衛サポートだ。

 

「じゃあ、ハチを少しずつ釣っていこうか。最初は二匹でいい?」

 

 ユラが黒いもやのようなものを指先にまとわりつかせた。

 ボスガエルの時にも使っていた、挑発スキルの応用版だろう。ふっともやが巣に向かったと思うと、引き寄せられたらしいハチが宣言通り二匹こっちにやってくる。

 

「来い!」

 

 クレイモアを振り、クリスがハチに切り込んだ。一匹仕留めたところで、もう一匹がクリスに迫る。しかし、その動きはお見通しだったようで、ヴァンが剣でその勢いをいなす。剣に行く手を阻まれて、行先を見失ったところをケヴィンのモーニングスターが強打した。

 あっけなくハチは全滅する。

 

「これくらいは楽勝だね。じゃあ次は三匹いってみよう」

 

 にやり、と笑うとユラがまた黒いもやを出現させる。

 

「あ、ちょっと待て!」

「体勢を整える時間を……!」

 

 止める間もあらばこそ、黒いもやは蜂の巣へと飛んで行ってしまう。次の瞬間には三匹に増えたハチがこっちに向かってきていた。

 

「だーもうっ! クリスは右端から攻撃、ケヴィンは左側からフォロー! 囲まれるなよっ!」

 

 ヴァンの指示を受けて、三人は隊列を変える。

 セシリアも私の隣から彼らに加護の魔法をかけ続ける。直接戦闘に加わらなくても、遠隔支援をしていれば功績としてカウントされ、経験値が得られるからだ。

 

「これで、みっつめ!」

 

 クリスがクレイモアの剣の腹でハチを叩き落す。

 三対三でもまだ余裕があるのか、鮮やかな勝利だった。それがわかっているのか、ユラもにやにや余裕の笑みを浮かべている。

 

「じゃあ次は四匹いってみよう」

「おいユラ待てって!」

「お前それ、毎回一匹ずつふやすつもりだろう!」

 

 銀髪トリオの言うことをユラは意図的に無視した。

 

「大丈夫大丈夫、手に負えなくなりそうだったらデバフを追加するから」

 

 忍者はその脚力を鍛えるために、畑に植えた葦を毎日飛び越えるのだという。

 成長の早い葦は恐ろしいほどの速さで伸び、その成長速度にあわせて訓練した忍は驚異的なジャンプ力を獲得するのだという。

 だがそれはただの伝説だ。

 成長速度をはるかに超えたスピードで課題をだされたら、ついていけない。

 五匹が六匹に、六匹が七匹に、と順に増えていくハチを相手にヴァンたちは悲鳴をあげた。




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