【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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セキュリティホール

「王家と勇士七家がその位を継承する時には、王宮にある『継承の水盤』に血を捧げなくちゃいけない。これはみんな知ってるよね?」

 

 私は継承の手続きについて、おさらいした。

 王家にとっても勇士の末裔にとっても大事な儀式だから、その場にいるメンバーは全員頷く。

 

「部外者はただの儀式だと思ってるけど、実はこの水盤はこことか空中要塞『乙女の心臓』と繋がってて、捧げられた血の情報を記録してるんだ。さらに先代の遺伝情報と比較することで、継承に値するほど近しい血族なのか確認もしてる」

「そこで、血族じゃねえって判断されたら水盤が赤く光る……だったよな?」

 

 王宮に伝わる神話のひとつだ。

 水盤に血を捧げた程度で親子関係がわかるなんて、この世界の住人にとってはおとぎ話に聞こえるだろう。でも、女神が作り上げた設備にはしっかりDNA鑑定機能が搭載されている。

 

「もう、ここにいる全員が知ってるからぶっちゃけるが、俺はクレイモアじゃなくて王族だ。俺が血を捧げたら、じいさんの孫じゃないのがバレるんじゃねーの」

「普通はね。でも、あの水盤がチェックしてるのって投入された血の情報だけじゃん。直前でクリスの血にすり替えたら、クレイモア伯の孫だよって承認されるよ」

「……は?」

 

 それを聞いたヴァンとケヴィンの表情が固まった。

 

「えええ……そんな単純なことで、ごまかせるの?」

「そんなんで認証を通せたら、乗っ取り放題だろ!」

「いや~そうでもないんだよね、これが」

 

 にやにやとユラが笑う。私は小さくため息をついた。

 

「確かに、一代に限っては誰かに成り代わるのは無理じゃないよ。でも、それだと先が続かないから意味がない」

「先ってどういうこと?」

 

 ケヴィンが首をかしげる。

 

「ええと、例えば王様Aとその影武者Bがいたとして、BがAの地位を奪おうと思ったとするよ。Aを殺してその血を採り、継承の儀式で血のすり替えをしたとする」

「Bの成り代わり成功だよな?」

「うん、Bが若いうちはそれでごまかせると思う。でも、その次の世代、Bの子どもCは王位を継げるかな?」

「あ、それは無理だね」

 

 ケヴィンがぽんと手を叩く。私も頷いた。

 

「そう、CとAに親子関係はないから、Cが水盤に血を捧げた時点でBの成り代わりがバレちゃうんだよ」

「うーん、子どもに直接継がせるとバレるのなら……Aの甥や姪……近しい血族を後継ぎに据える、とか?」

「それはアリだけど、結局元の血族に系譜が戻ってきてるから、血筋乗っ取り自体は失敗だよね」

「自分の子どもがいるのに、親戚に王位を継承すんのも不自然だしな」

「それじゃ……Aを生かしておいて、Bの子が産まれると同時にこっそりAにも子どもを作らせてたらどう? それで、代々Aの血族から血だけを採取してどこかに隠しておくとか」

「非人道的なアイデアだけど、まあ考えうる方法だよね。でも、自分の継承の嘘を暴くかもしれない一族をずーっと極秘に飼っておくって、すごくリスキーじゃない?」

「しかもこの世界は運命の女神が味方してるからねえ。途中で何かすごい『偶然』が起きて、隠された血族が表舞台に出てくるんじゃないかな」

「なるほど、結局乗っ取りがバレるから、すり替えても無駄ってことになるのか」

 

 一代限りの乗っ取りにさえ目をつぶれば、結局『血族を繋げる』という目的は達成できる。厄災の神復活まで関係者の血を伝えるには十分な機能なのだろう。もっと穴のないシステムを作っておけ、と言いたいところだけど文句を言ってもしょうがない。

 すり替えできないよう生きた人間から直接DNAを採取するシステムもあったっぽいんだけど、どうやら、五百年の歴史の中でそっちは壊されちゃったみたいなんだよね。誰が原因とは言わないけど。血統の記録が残ってるだけ、ありがたいと思うしかない。

 ふむふむ、と頷くケヴィンの横でヴァンがはっと顔をあげた。

 

「……いや、もうひとつだけ水盤の継承チェックをごまかす方法があるんじゃないのか。乗っ取りがダメなら、血を混ぜてしまえばいい」

「正解!」

 

 さすが当事者。理解が早い。

 

「ん? どういうことだ? 途中から理屈がさっぱりわからないんだが……」

 

 クリスがおろおろと婚約者たちを見る。確かにちょっとややこしいから気持ちはわかるんだけどね。

 

「俺とクリスのパターンだ。じいさんからクレイモアの爵位を継承する時、俺はクリスの血を使ってすり替えを行う。本来はこの後、さらに次のクレイモア伯が継承する時に乗っ取りがバレるはずだ。でも、俺の嫁はお前、つまり乗っ取られた本人だ。お前が産んだ子なら継承に問題は出ない」

「そういうこと。被害者Aと犯人Bが協力関係で、彼らの間で子どもを作るのなら、乗っ取りはバレない。だから、ヴァンとクリスの場合は大丈夫なんだ」

 

 性別を入れ替え、身分を入れ替え、さらに結婚までしてしまう彼らならではの解決策だ。

 

「他の誰も真似できない理由もわかるね。誰かの身分を乗っ取ろうと思ったら同性を対象にするから、間に子どもなんて生まれない」

「言われてみたらそうなんだけどな……これ、血のすり替えができなかったらヤバかったんじゃねえの。提案に乗っててアレだが、ミセリコルデはわかってて言ってたのか?」

「そのへんは全部考えた上だと思うよ。あの時点で既にフランは私の協力者で、水盤のシステムについては大体全部知ってたから」

「……お前んとこの副官、頭ん中どうなってんだ?」

 

 フランの頭の中が謎なのは同意するけど、その言い方はないと思うの!




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