【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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お膝抱っこ

「なるほど……そういうことか」

 

 スキュラを討伐した私たちは、死亡した仲間を蘇生させて第五階層に移動していた。階段直後のセーフエリアで、体力を回復させながらフランに事情を説明する。

 ……それはいいんだけど。

 

「状況がわかったのなら、そろそろ降ろしてもらえない?」

「断る」

 

 私のお願いを、フランはすげなく却下した。

 非常に強い意志を感じる。

 だけど私は反論せずにはいられなかった。

 

「人をいつまで膝の上に乗せてる気だよ! この手を離せ! 降ろせ!」

 

 何を隠そうこの男、私が泣いていたのをいいことに、パーティーメンバーの救助から第五階層への移動、そして状況説明を経て現在に至るまで、ずーっと私を抱っこしたままだったのだ。私が何度『大丈夫だから降ろせ』と言っても聞く耳持ちやしねえ。

 

「お前が見るな、と言ったんだろう。触る他に生存確認する方法があるとでも?」

 

 確かに言ったのは私だけどね?

 ダサジャージを着た小柄な少女を膝に乗せて腰を抱いている、細マッチョのファンタジー騎士二十三歳成人男性ってどういう絵面だよ。

 私が見るなって言った意味わかってる?

 

「声とか気配でわかるだろ」

「その程度では不十分だ」

「どういう判断基準?!」

「俺の基準」

 

 だめだこいつ。どうにもならねえ。

 

「誰か……」

 

 助けを求めて、仲間に目を向けたら全員さっと視線をそらした。

 心優しいセシリアまでも、あさっての方向を向いて決してこちらを見ようとしない。

 

「薄情者ぉぉ……」

「わざわざ馬に蹴られに行くバカはいねえってことだ。諦めろ」

 

 ヴァンの言うことは、ごもっともだけどね!

 

「その……フランさんはどうして、ここに? シュゼット様とお出かけされてましたよね?」

 

 痴話げんかを横に置いてケヴィンがフランに尋ねた。助かったから深く考えてなかったけど、言われてみたら確かに不思議だ。この世界にはスマホも通信機もないのに、どうやって私たちの危機を知ったんだろう。

 

「ジェイドの機転と、フィーアの機動力のおかげだな」

 

 相変わらず私を膝に乗せたまま、フランが大真面目に説明する。

 

「お前たちが鏡の中に消えたあと、いつまでたっても出てこないので、ジェイドが俺を呼ぶ案を出したようだ」

「王都に勇士の末裔は何人かいるけど、ジェイドたちが頼れる範囲で、事情に通じてるっていうとフランくらいしかいないもんね」

「それで、本人は『開かずの図書室』に誰も入らないよう警備しつつ、機動力のあるフィーアに呼びに行かせたらしい」

「外は大丈夫なのか? リリィの配下がミセリコルデ家に駆けこんだら、また何か言われそうなもんだけどよ」

 

 ヴァンの懸念に、フランは首を振る。

 

「まあ、今回は大丈夫だろう。幸いその場にいたのは、シュゼット姫だけだ。あの方は今日の会合の結果、ウチの陣営と手を組むことになった。リリィの醜聞になるようなことは口外しないだろう」

 

 いつの間にそんな取り決めが。

 ミセリコルデ家、有能すぎか。

 

「問題はこれからどうするかだが……」

 

 フランの言葉に、その場にいた全員が沈黙する。

 彼の登場で危機は脱したけど、『ダンジョンから出られない』という状況は変わっていない。むしろミイラとりがミイラ、遭難者がひとり増えて、状況が悪くなったとも言える。

 小さくため息をついて、ヴァンが口火を切った。

 

「目下の課題は、魔法の火力不足だな。フラン、アンタは魔法がどれくらい使える?」

「中級程度の魔法ならそれなりに。だが、制御特化型であまり派手な火力はない」

「レベルは問題ないんだけどねー」

 

 私はメニュー画面を開いて、フランのステータスを開いた。

 彼のレベルは現在五十七。破格のレベルだけど、これはハルバードで騎士を統率しながら死線を潜り抜けてきた結果だろう。

 魔法攻撃のスキルもあるけど、彼の言葉通り威力はそれなり、保有している魔力量もそれなりだ。槍を使った中距離魔法戦士。それが彼のジョブだ。

 

「ここにアルヴィンがいたら楽だったんだがな」

「それはサヨコも言ってたな」

 

 クリスが相槌をうつ。私も頷いて、メニュー画面を操作した。

 

「第五階層まで来たし、機能拡張したら外と通信できなくはなさそうなんだけど……」

「今は保留だな。ハルバードは遠すぎる」

「ジェイドたちに伝えたとして、ここからハルバードに早馬を出して、それを見たアルヴィン兄さんが学園まで大急ぎで駆けつけて……って、何日かかるか」

「その間、私たちはずっとダンジョンから出られないんですよね……」

 

 セシリアが大きなため息をつく。このヴァーチャルリアリティ施設は、体を保存する機能をあわせ持っている。一年くらいは中に入ったままでも死んだりしないけど、世間はそんなこと許してくれない。

 

「高位貴族が図書館に行ったまま、何日も行方不明。とんでもねースキャンダルだな」

 

 ヴァンが顔をしかめる。フランも同じ表情だ。

 

「ジェイドたちが隠蔽工作したところで、ごまかしておけるのは明日の夜明けまでだろう。この件を穏便に済ませるなら、早急に脱出する必要がある」

「ただでさえ苦しいのに、時間制限つきか……まあ予想はしてたが」

「……魔法使いが増えずとも、セシリアが攻撃に集中できればいいんだな?」

 

 しばらく考えていたフランがそんなことを言い出した。

 

「それは、まあ……私が攻撃できれば、その分火力は出せます。でも、私が攻撃に回ったら、今度は回復が……」

 

 アイテムを使った回復に限界があるのは、さっきのスキュラ戦で実証済みだ。

 

「その回復を補えばいい。リリィをメンバーに加えよう」




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