【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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パーフェクトパーティー?

「来たぞ!」

 

 ヴァンの声で、全員が身構えた。

 白い石畳の通路を、がしゃ、がしゃ、と音をたてながら鎧を着た兵士が歩いてくる。彼らは一通り兵士らしい装備を身に着けているけど、鎧も剣も、その下に身に着けた衣類もすべてぼろぼろで、あちこち汚れて錆びていた。ぼろぼろなのは装備だけじゃない。本人もだ。シワシワの皮膚は緑色に変色し、口からはどろりとした赤黒い何かが垂れている。その上目はうつろで、虹彩は完全に白く濁っていた。

 どう見てもゾンビ兵です。ありがとうございます。

 彼らの後ろからは、ゆらゆらと煙のようにゆらめく死霊の姿もある。

 第五層地下神殿ステージのご当地モンスター、リビングデッドご一行様である。

 人間っぽいどころか、ベースが人間そのものなので、心の底から気持ち悪い。

 しかし、彼らを見てもさほど恐怖は感じなかった。

 なにしろ戦力が大幅にアップしてるからね!

 

「フランとクリスがゾンビ兵に対応! 俺とケヴィンが死霊を牽制する。リリィは支援魔法、セシリアは広範囲浄化魔法だ!」

 

 ヴァンの指示に従って、メンバーがそれぞれのポジションへと走っていく。彼らの後を追うようにして、白い光が飛んでいく。

 私が放った『呪い防御』の魔法だ。

 呪いを解く魔法も持ってるけど、そもそも呪われないに越したことはないからね。

 

「はあっ!」

 

 クリスがクレイモアをふるう。物理的な体を持っているゾンビは、やすやすと吹っ飛ばされていった。しかし、動く死体は、手足が壊れているにも関わらず、ゆっくりとまた起き上がってくる。

 クリスとフランがゾンビたちの相手をしている間に、死霊が横合いから彼らに襲いかかった。ヴァンとケヴィンが間に割って入る。

 死霊の手がケヴィンに触れようとした瞬間、ばちんと白い光が弾けて死霊の手を消し飛ばした。私の『呪い防御』の魔法効果だ。よしよし、うまく機能してるな。

 

「どいて!」

 

 さらにケヴィンがモーニングスターを叩きこむと、質量がないはずの死霊の体が削れた。これも、私が事前に武器へと付与した聖なる力の加護だ。実体のない死霊を完全に倒すことはできないけど、体力を削るくらいはできる。

 

「みなさん、さがってください!」

 

 セシリアが叫んだ。

 祈るように胸の前で組んだ手には、強い光が集まっている。

 リビングデッドの呪いの力を消し飛ばす、浄化の魔法だ。

 

「来い!」

 

 フランたちが道をあけると、吸い込まれるように浄化の光が放たれ……全ての敵を焼き尽くした。あとには浄化されたドロップアイテムだけが残っている。

 

「おーすごいすごい」

 

 ぱちぱちぱち、と後方で待機していたユラがのんきに拍手した。私たちは無言で彼の祝福を無視する。

 

「……聞きたいんだが」

 

 いや、クリスが不機嫌そうに口を開いた。

 

「もうコイツは無能なんだよな?」

「第五階層の平均レベルは六十だしね。攻撃魔法どころか麻痺も毒も拘束も挑発も、通らないんじゃないかな」

 

 事実ユラはこの戦闘で何も行動していない。

 効果がなくて無駄だからだ。

 

「だったら、いっそのこと敵の前に放り込んで戦闘不能にしたらどうだ? 追放できないならせめて、物言わぬ死体にしたほうが面倒がない」

「お姫様はエグいことを考えるね」

 

 しかしその容赦ない提案は、ユラの言動にストレスをためている聖女の心を掴んだらしい。セシリアがうっすらと笑った。

 

「どうせここは夢の世界ですからね。ユラがモンスターに殺されたところで、本当に死ぬわけじゃありません。静かになるなら、それもいいんじゃないですか」

「えー、君に愛を囁けなくなるのは、悲しいよ」

 

 ユラがわざとらしく口をとがらせる。

 その態度が余計セシリアの神経を逆なでしてるってこと、わかっててやってるんだろうなあ。

 その余裕の笑みが癪に触って私は口をはさんだ。

 

「どうせ、蘇生されなくても平気なスキルがあるんでしょ」

 

 少し前から違和感はあったんだ。

 スキュラ戦でもHPとMPがゼロになった後、いつの間にか復活していた。誰もユラに蘇生魔法を使った覚えはなかったのに、だ。

 ユラは苦笑しながら肩をすくめる。

 

「ダンジョンの仕様のせいかな? 死ぬようなダメージを受けてもHP1ポイントで復活するんだよ。生きてさえいれば、そのうち自己再生スキルで完全復活する」

 

 ユラも首をかしげているあたり、現実世界では起きない現象なのだろう。

 

「死体っていうモノになった僕の体を運ぶのは平気でも、瀕死でうめいたり血を吐いたりしている僕を連れ歩けるほど、感情捨ててないでしょ。やめておいたら?」

「結局、この迷惑な男を連れて歩くしかないんですね……」

 

 セシリアが肩を落とした。

 

「まあ、悪いことばっかりでもないよ」

 

 私はセシリアの背中をぽんと叩く。

 

「小夜子がいない今、このパーティーの最弱キャラはユラなわけでしょ? 敵にとっては絶好の獲物な上、殺しても死なない。わあ、最高の囮だね!」

「……察しのいい侯爵令嬢は嫌いだ」

 

 私もユラが大嫌いだよ!

 

 

 




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