【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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悪役令嬢は大災害を生き残りたい
未明の大地震


 ごごご……というわずかな地鳴りで、私は目を覚ました。

 危険な音だと本能的に感じて、体を起こす。と、同時にどすん! と大きな縦揺れが体をゆさぶる。なにがなんだかわからないまま、私はベッドにしがみついた。

 必死に目をあけると、ベッドどころか部屋全体が揺れている。

 クローゼットのドアは勝手にあいて中の服が揺れ、本棚におさめてある本がばさばさと床に落ちてくる。

 

「地震……!」

 

 前世で何度か体験した災害。

 そして現世で初めて体験する災害だ。

 つい数時間前、昨夜遅くまで前世の人格『小夜子』として女神のダンジョンをさまよっていたせいだろう。過去と現在の記憶や感情がごちゃごちゃになって、うまく頭が回らない。

 必死に息を整えながら、ベッドの上でひたすら身を守る。

 ゆさゆさと建物全体を襲う揺れは、ゆっくりとおさまっていった。

 

「結構……長かったわね」

 

 それに揺れ幅も大きかった。

 ここが王立学園女子寮の最上階、四階であることを差し引いても揺れすぎだ。部屋のインテリアはすっかりぐちゃぐちゃになってしまっている。

 私は念のため、スリッパではなく靴をはいて廊下に出た。

 

「ご主人様!」

 

 揺れが収まると同時に部屋から出てきたんだろう。フィーアが真っ青な顔でとんてきた。

 

「お怪我は!」

「ないわ。大丈夫よ」

「建物がこんな風に揺れるなんて、何事でしょうか?」

「建物じゃなくて、地面そのものが揺れたのよ」

「え……?」

 

 フィーアがきょとんとした顔になった。

 ハーティアは大陸の中心部にあり、地盤が安定している地域がほとんどだ。フィーアどころか大半の国民が未体験の災害だろう。私だって、リリアーナとしては初めてだ。

 

「リリィ……? 何が起きてるの?」

「ただごとじゃ、ないよな?」

 

 それぞれの部屋から、クリスとシュゼットも顔を出す。朝の鍛錬でもするつもりだったのか、クリスはすでに制服姿だった。

 

「リリィ様、これって……地震ですよね?」

「よくわかったわね、セシリア」

 

 真っ青な顔のセシリアも顔を出す。彼女も制服姿だけど……これは、早起きして着替えたんじゃないな。襟元がよれよれだ。きっと昨日帰ってきてからパジャマに着替えて眠るだけの余裕がなかったんだろう。よく見ると、目元に濃いクマができている。

 セシリアはもじもじと言葉を紡いだ。

 

「カトラスには、火山地帯が……あるので」

「ベティアス山は有名よね」

 

 ハーティア南の沿岸部であるカトラスには、火山に加えて地盤のゆるい地域がそれなりにある。セシリアはこの災害を実体験として知っているんだろう。

 

「災害、ってことは敵襲じゃないんだな?」

 

 思考が物騒なクリスがため息をついて肩を落とす。

 そうも言いきれないのがつらいところだ。

 私が視線を送ると、セシリアが暗い顔でうつむいた。

 

「……この災害を起こしたのは、ユラよ」

 

 私が断言すると、セシリア以外の全員の顔が強張った。キラウェアの王族として、今のところまだユラの上司にあたるシュゼットが目を丸くする。

 

「どういう、ことですの? 昨夜、あなた方が夜遅くに帰った来た時に、ユラが裏切ったとは……聞いてましたけど」

「あいつは裏切り者で、アギト国の手先なの。昨日私たちに罠を仕掛けて失敗したから、次の一手として、王宮の地下深くに眠る邪神の封印に手をかけたんだわ。この地震は封印にヒビが入ったせいで起きたものなの」

 

 何故そんなことがわかる、とは誰も聞かなかった。

 ほとんどのメンバーは私が人知を超えた情報源を持っていると知っているからだ。知らないのはシュゼットくらいだけど、彼女もまた私が突然おかしなことを言うのにはもう慣れている。

 

「だとしたら、これから……」

 

 ギシッ……。

 

 そのまま廊下で話しこもうとした私は、言葉を切る。

 嫌な予感がして、ぞっと背筋に悪寒が走った。

 

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