【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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重力魔法

 私のキメ台詞、『手品の種は明かさない』を発動すると、女友達はおとなしく引き下がってくれた。

 私はほっと胸をなでおろす。

 さっき使ったのは、開発中の『重力魔法』だ。重力を魔力で操る新魔法である。

 こういう一般的な属性魔法に縛られない技術は、国家防衛に関わるからって秘匿するよう、フランはおろか兄様にも宰相閣下にも直接口止めされている。だから部外者、それも他国人のシュゼットには口が裂けてもばらせない。

 とはいえ知ったところで重力魔法の実用化は難しいんだけどね。

 重力を自由自在に操るなんて、我ながらすごい魔法だと思う。しかし、いかんせんまだまだ問題が多い。

 第一の問題は使える人間がめちゃくちゃ限られるってこと。

 この世界の魔法は、力に対する理解と実感が必要だ。一般的な火をつけるとか風を起こす、といった魔法は自然現象を目にしているぶん、誰でも理解しやすいんだけど、目に見えない力はそうもいかない。

 地球が丸いと思ってない、下手したら地面がまったいらで、星は地球を中心に回っている、なんて考えてそうなファンタジー住民に、『万物はお互いに引き合う力を持ってる』とか『私たちは丸い地球の中心に向かって引っ張られてる』なんて解説しても、全然通じないんだよね。

 だから、重力魔法自体を発動できる人間がほとんどいない。

 開発に関わったディッツとジェイドがうっすら理解している程度だ。

 使える人間が少ない、ということは、それだけ研究が進まないってことでもある。理解されず、効率化されてないから、何をやるにしても異常に魔力を消費する。

 東の賢者の愛弟子として、十一歳のころから魔法を学んでいる私でも、ミセスメイプルを一瞬浮かせるのがせいいっぱいだ。災害の現場で連続して同じことを繰り返しやれ、と言われても三人目くらいで魔力切れで倒れると思う。

 六十キロの荷物を浮かせるのに、六十キロの荷物を抱えるのと同じだけ、魔力的なコストがかかるのでは、大きなことはできない。

 軽くするのがダメなら重くしてみよう! と思って過重力をかけて人を止めることも考えてみたんだけど、そっちもうまくいかなかったんだよね。鎧を着ている騎士は普段から重りを持ち歩いてるようなものだからかな? 父様クラスになると瞬間的に二Gとか三Gとかかけても、突破してきちゃうんだよ……。

 押さえようにも先にこっちの魔力が尽きて、倒されるのがオチだ。

 全く使えないよりはマシだけど!

 もうちょっと楽に知識チートさせてくれてもいいと思うの!

 

「リリアーナ、気分は悪くなっていませんか?」

 

 重力魔法がどれだけ負担がかかるか知ってるせいだろう。女子生徒たちのお礼合戦が一段落してきたところで、ドリーが声をかけてきた。ローブの上から羽織っていたマントを、私の肩にかけてくれる。

 女の姿でも、気遣ってくれる恋人ありがたい。

 

「ちょっと疲れたけど平気。魔力を使わなければ、すぐに戻ると思う」

「わかりました。体調に違和感をおぼえたら、すぐに報告してください」

 

 そうやってぽんぽん頭をなでてもらえたら、もうそれで疲れが結構ふっとんでいくけどねー。

 

「あなたはそう言って、無自覚にやせ我慢するので、信用ならないんですよ」

「むう……とはいえ、のんびりもしてられないし」

 

 私は、女子寮前の門に目をやった。

 嫁入り前の女子が寝泊りする建物、ということで寮の周りには目隠し用の塀と出入りを管理する門がある。その前に何人もの人影があった。

 女子寮が崩れたのを見て、心配になったほかの生徒や職員が集まっているんだろう。

 彼らの先頭には、見慣れた銀髪の少年たちがいた。

 

 

 

 

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