【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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救助活動開始

「ヴァン、状況は?」

「まあそれなり」

 

 校舎に戻ると、すでに臨時避難所が設営されていた。制服を着た騎士科生徒たちが、教師の指示に従って、あちこちせわしなく走り回っている。

 生徒の中心人物として陣頭指揮をとっていた、ヴァンとケヴィンがこっちを見る。クリスに背負われたセシリアを見て、二人とも顔がこわばった。

 

「おい……セシリアは」

「大丈夫、怪我はしてないわ。意識がないだけで」

「昨日からいろいろあったからね。疲れちゃったみたいだ」

「それはしょうがねえな」

 

 裏事情を知っているせいだろう、倒れた原因を聞いてヴァンは息を吐いた。

 

「救護エリアはどこなの? セシリアを寝かせてあげたいんだけど」

「ああ、それなら……」

「お嬢様!」

 

 クリスが案内しようとしたタイミングで、ジェイドがこっちに走ってきた。みんな揃いの紺のマントを着ているなか、彼だけは医療関係者であることを示す白いマントを着ている。

 彼は学生だけど、医学薬学の権威である東の賢者の一番弟子だ。スキルを考えれば当然の話だろう。

 

「体に不調はありませんか?」

「私は大丈夫よ。でも、セシリアが倒れてしまったの。診てもらえる?」

「かしこまりました」

 

 ジェイドはクリスからセシリアを受けとると、優しく抱き上げた。顔色と呼吸を確認してから、婚約者にも目を向ける。

 

「フィーアの体調は?」

「お気遣いなく、ジェイド様」

「……」

 

 にこり、と貼り付けたような笑顔を向けられてジェイドは沈黙した。

 そういえばこっちはこっちで、こじれてたんだっけ。

 ジェイドがダガー伯爵になるかどうかは一旦棚上げ中だけど、フィーアは『婚約解消して伯爵になっとけ派』だからなあ……。

 関係のこじれた従者たちの間に挟まれた主は非常に居心地が悪い。

 私は別の話題をジェイドに振った。

 

「救護所の状況は?」

「校医と医療研究者が中心になって、怪我人や具合の悪くなった生徒を診ています。師匠も一緒に働いてますよ。……ボクはお嬢様と一緒に行動することもできますが」

「今はいいわ。ふたりとも救護に集中しててちょうだい」

「かしこまりました。必要な時には呼んでください」

 

 ぺこりと頭を下げると、ジェイドは去っていった。微妙な空気の板挟みになっていた私はこっそり胸をなでおろす。どっちも大事な部下だけど心臓に悪いよ!

 

「とりあえず、セシリアの安全は確保ね。女子寮のみんなは?」

 

 尋ねられて、ケヴィンが柔らかく答える。

 

「さっき予備の服を配布して大講堂に移したところだよ。瓦礫から私物を掘り出すのは、もっと落ち着いてからだね」

「当面の生活必需品は、男子寮や他のところから引っ張ってくるしかねえな。……王都の様子はどうだった?」

 

 ヴァンに話をふられて、クリスが軽く首をふる。

 

「あちこちで大きな火事が起きてた。あっちからの救援はアテにしないほうがいい」

「市民の保護が先だろうからな……わかった。とにかく学園内でどうにかしよう」

「男子生徒の点呼はどうなったの? 連絡がつかない生徒がいるって言ってたけど」

 

 都市計画なんか考えずに作った王立学園には、雑に建てられた建物も多い。人知れず瓦礫の下敷きになってる生徒がいてもおかしくはない。

 きいてみたら、ヴァンは嫌そうな顔になった。

 

「今一番の問題はそれだな」

「うん?」

「おい、あいつら見つかったか?」

 

 ヴァンが生徒のひとりに声をかける。たずねられた生徒はぶんぶんと首を左右に振った。

 

「ジャスティンたちが捜してますが、見つかったという報告はありません」

「そうか、ご苦労」

「誰がいないの?」

 

 嫌な予感がする。

 避難所の設置や救助など、今はひとりでも人手が必要な状況だ。そんななか、わざわざ人員を割いてまで探さなきゃいけない生徒は限られている。

 

「キラウェアからの留学生ユラと……それから、オリヴァー王子、ヘルムートが見つかってない」

 

 

 

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