【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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行方不明者

「ユラは逃亡者として扱います」

 

 ヴァンやクリスたちの近くで、キラウェアからの留学生たちを取りまとめていたシュゼットは、きっぱりそう言い切った。

 

「ええええ、いきなりその決定でいいの?」

「構いませんわ。戻ってくる可能性はほぼゼロなんでしょう?」

「まあ……そうなんだけど」

 

 昨日私たちが女子寮に帰ってきた時点で、非公式に『ユラがハーティアの国宝を奪取しようとして、失敗したあげくに逃亡した』と報告されていたお姫様は、冷徹な判断を下す。

 

「昨日の件はまだ正式に届け出されておりませんが」

 

 留学生と女子生徒の面倒を見るため、彼女のそばにいたドリーがたずねた。

 

「国外での活動ということもあり、キラウェア留学生には『いついかなる時でも所在を明らかにすること。点呼に応じなかった場合は逃亡とみなす』というルールがあるのです。今回はこれを適用しましょう」

 

 シュゼットがそう宣言すると、側にいた留学生たちは一斉に頷いた。

 

「単なる行方不明者として放置して、のちのち舞い戻られたほうが面倒ですわ。キラウェア生徒のフリをして、変なところに入り込まれたら困りますもの」

「ありがとう、正直助かるわ」

「お気になさらず、彼の愚行は私たちにとっても不利益になりますもの。……あとは王子たちですわね」

 

 シュゼットがため息をつき、ドリーが眉間に皺を寄せる。私も一緒になってため息をついてしまった。

 突発的な災害時には決まって行方不明者が出るものだけど、今回は一番いなくなっては困る人物の所在がわからなくなっていた。

 この国唯一の王子、オリヴァーがどこにもいないのである。

 

「怪我人の救助のこともあるし、だいたいの場所は探したんだけどな……一向に見つからねえんだ」

 

 ドリーとフィーアを連れて、ヴァンたちのところに戻ると、ヴァンも同じようにため息をついた。横でクリスも首をかしげている。

 

「何か手がかりはないの?」

 

 そう聞くと、ヴァンはまた首を振った。

 

「お前らがセシリアを追ってた間に、聞き込みをしてみたがさっぱり。今朝はやくに、制服を着て寮から出て行ったってとこまではわかってるんだが」

「まさかユラに誘拐されたとか……」

 

 ケヴィンが心配そうな顔になる。

 普通の王族だったら、ありうる話なんだけど。

 

「その可能性は低いでしょう。意味がありません」

 

 ドリーが即答する。

 王子の裏事情を知っている私たちは、そろって沈黙した。

 

「……だよなー」

「彼がいなくなっても実は困らない、と私たちが知っている……ということを、ユラもまたわかっているはずです」

「だったら、どうしてあいつはいないんだ!」

 

 ガリガリ、とヴァンが頭をかく。

 その気持ちはわかる。

 欠点の多々ある王子様だけど、さすがに自分の責任は理解している。災害時に自分がいなくなれば、どれだけ周りが混乱するかはわかっているはずだ。だから、わざと姿を消すようなことは絶対しない。

 だとすれば、不測の事態で身動きがとれなくなっている、と考えたほうがいいだろう。

 

「結局人海戦術で探すしかねえのかよ? この忙しい時に!」

「うちのジェイドの魔力探知させるって手もあるけど、今は救命作業に集中させたいのよね」

「……そもそも、現状では探索精度がかなり落ちると思いますよ。あちこちで普段使われないような魔法を使っていますから」

 

 婚約者フィーアが付け加えた。婚約どうこうがなければ、お互いを理解してて、最強従者コンビなんだよなあ、ふたりとも!

 

「空飛ぶ使い魔とか、持ってる奴いなかったか?」

 

 ヴァンに尋ねられて、ドリーが眉間に皺を寄せる。

 

「今年の生徒の中にはいませんね」

「確かに空から探せたら楽だけど……あ」

 

 空から、という言葉がひっかかって、私はそこで言葉を切った。ドリーがこちらを振り向く。

 

「何か思いつきましたか?」

「開かずの図書室が使えるかも」

 

 隠し部屋の名前を出すと、その場にいた全員の顔つきが変わった。

 

「アレは管制施設。つまり、周囲の情報を集めて支援するためのものなの。多分、観測に必要な機能があるはず」

「行ってみましょう」

 

 私たちは、うなずきあった。

 

 

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