【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~ 滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
アルヴィン・ハルバード。
南部貴族をまとめる大領主、ハルバード家の長男であり、私の兄だ。
ゲーム開始時には、王立学園の魔法学の教師として登場する。
本来、領主の跡取りとして父親の元で領地経営の何たるかを学ぶべき彼がなぜ教師をしているのか?
もちろん理由がある。
彼がハルバード家の家族を心底嫌っていたからだ。
実家に帰りたくなくて、無理やり教師という理由をつけて学校に残っているのだ。
「まあ、実家のメンバーを考えたら、そう思うのも無理はないけどね」
「傍若無人でワガママ放題の妹と、それを止めないぼんやり両親ですからねえ」
「ただ嫌いなだけならともかく、放っておくと『実家はもうダメだ』って見限って、隣国のアギト国に亡命しちゃうのが問題なんだよね」
優秀な跡取りを失ったハルバード家はその後没落。旗印を失った南部はばらばらになり、最終的にアギト国に侵略されて焼け野原になってしまう。
他のルートにかまけて、彼を放っておくと南部が消えるので、誰を攻略するにしても必ず処理をしなくてはいけない爆弾野郎だ。
「あー、だから時限爆弾」
「今世の家族としても、大事な人だから家出なんかせずに、ハルバード家に残ってもらいたいんだけどね」
「和解は難しそうですか?」
「原因の大半は私のワガママにあるから、行動を改めたらどうにかなるんじゃないかな。なんだかんだいって家族だし、毎日顔を合わせながら少しずつ歩み寄っていければ……」
「あれ? お兄さんと同居してましたっけ?」
「あっ」
私は大慌てで攻略本のページをめくった。
そこには、『15歳で王立学園に進学して以降、一度も領地の城に帰っていない』とあった。よくよくリリアーナの記憶を思い返してみると、確かに去年の秋に学校の寮に入ってから戻ってきてない。学校が完全に閉鎖される冬至の休み期間も、王都にある社交用のタウンハウスに数日滞在して、また学校に戻っている。
今日だって、社交の季節だからと領地から私を連れて王都にやってきた両親が、無理やり夕食に誘って学校から連れ出したから顔をあわせたのだ。普通に生活していたら、顔を合わせないまま5年後になってしまう。
やばい。
こんな状況で、10歳の少女に『死ねばいい』と言い放つくらい関係がこじれた家族と、やり直すことができるんだろうか。
「まあなんとかなりますよ」
「なんとかできなくて、異世界の人間の手を借りてる女神がそれ言っちゃう?」
「小夜子さんなら、きっと」
ふわりとわらって、女神は姿を消した。
おそらく、彼女の手助けはこれが最後。今ここからは自分の力で運命を変えなければならない。
私は大きく深呼吸をした。
「やってやろうじゃないの」
世界を救って、幸せな人生を歩んでやる!