【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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ドミノ倒し

 図書室は、大変なことになっていた。

 

「うわあ……」

 

 あまりの惨状に思わず声が出てしまう。

 地震のニュースで、棚から本が落ちる映像は何度か見たことがある。でも、目の前の光景はそれ以上だった。本棚から投げ出された本が床一面に広がり、さらにその上に本棚そのものが倒れていた。しかも倒れてるのはひとつだけじゃない。倒れた本棚が隣の本棚を倒し、倒された本棚がさらに隣を……と連鎖的に倒れて、絵にかいたようなドミノ倒し状態になっていた。

 製紙技術はあっても、まだ印刷技術が存在しないこの世界で本は貴重品である。食べ物みたいに、潰れたら再起不能ってわけじゃないけど、この量の本がぐしゃぐしゃになっているのは心が痛む。

 

「もったいないなあ」

「のんきなこと言ってる場合じゃないぞ」

 

 ヴァンが嫌そうに顔をしかめた。

 

「え?」

「だって、俺たちの目的地ってこの図書室の一番奥だよね?」

 

 ケヴィンも困り顔で苦笑する。

 隠し部屋の入り口があるのは、図書室の一番奥、古い歴史書のあるコーナーだ。つまり、この広い図書室いっぱいに広がった本の海をかき分けていかなきゃたどり着けない場所なわけで。

 

「細かい本の整理は後回しだな。とにかく、奥まで行ってみよう」

 

 思い切りのいいクリスが、先頭をきって歩き出した。あわてて私たちもその後につづく。とにかく、道をふさいでいる本棚をどけて、道を確保しなくちゃいけない。本棚そのものをヴァンとケヴィンが担当する中、私たちは落ちている本を拾って、邪魔にならない場所へと積み上げた。

 

「フィーア、これお願い」

「かしこまりました」

 

 この場には、隠し部屋の事情を知るメンバーということで、ヴァン、ケヴィン、クリスに加えて、ドリーとフィーアもいる。特別室メンバーがそろって離席するのはどうかと思ったけど、むしろいい判断だったみたいだ。フィーアとふたりだけだったら、絶対隠し部屋までたどりつけなかった自信がある。

 

「なあ、あんたどうせシュゼットの世話役って肩書きもあるし、リリィとふたりきりにさえならなきゃいいんだろ? 手伝うなら男に戻ってやってくれよ」

 

 何個かめの本棚を移動させたところで、ヴァンがドリーに声をかけた。

 そういえばそうだった。ドリーは元々薬の力で変身したフランだ。災害現場では馬力の出せる男の姿のほうが都合がいいはず。力仕事を嫌がるタイプじゃないのに、どうしたんだろう。

 ドリーは本を積み上げながら、嫌そうに眉間に皺を寄せた。

 

「今は男に戻れない。クールタイム中だ」

「あー……あれかぁー」

「うん? 何それ」

 

 ヴァンが納得する横で、ケヴィンがきょとんとした顔になった。何度か薬を飲んだことのあるヴァンと違って、ケヴィンは詳しい使い方までは知らないもんね。

 

「性別変更薬は、連続使用できないのよ。短時間で何度も変身してたら、体に大きな負担がかかるから」

「昨日の夜、リリィたちを女子寮に送り届けるのに変身して、その後男に戻って……今朝クールタイムぎりぎりで女に化けたところだったんだ。あと数時間はこのままでいないと、体がもたん」

「ぶっ倒れるよりは、まだ女の格好で動いてたほうがマシ、か。わかった」

「悪いな」

「いいって、昨日帰る前にクリスを引き留めて、あんたに護衛やらせたのは俺だし」

「……私がご主人様たちについていられればよかったのですがね」

 

 本を積みながらフィーアがぼそっともらす。

 実はこのふたり、ダンジョンを出たあとそれぞれ婚約者と話すことがあるからって言って別行動してたんだよね。

 

「いいいいいや、あれは気にしなくていいからね! いきなり地震が起きるなんて、誰も予想つかないから!」

「あの男が素直に伯爵家を継いでいれば済んだ話です。全く面倒な……」

 

 ねえ、本当にきみたちどれだけ感情こじらせてるの?

 主人としてめちゃくちゃ心配よ?

 

「隠し部屋のドアが見えたぞ!」

 

 本棚を動かしていたヴァンが声をあげた。見ると、古い本ばかりが並んだ、見覚えのある本棚の姿がある。さすがに奥が隠し通路になっている棚は、壁にがっちり固定されているようで、そこだけ様子が変わっていなかった。

 

「こっちの本棚もどけて……」

「スイッチを押すわよ」

 

 目印になっている本を押し込む。でてきたドアにパスワードを入力して、ドアを開けてみたら……

 

「え?」

 

 なぜか、扉の奥から王子様が出てきた。

 

 

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