【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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カメラの正しい使い方

「カメラアプリとかどうかな?」

「……かめら?」

「さっき出て行ったドローン、空飛ぶ使い魔と同じ機能よ。ここについてるレンズで写した映像を保存できるの」

「映像……保存……?」

「使ってみたほうが早いわね。フラン、ちょっとこっち向いて」

「うん?」

 

 きょとんとしているフランにレンズを向けて、シャッターボタンを押す。カシャッと小さく音がして、画像が保存される。改めてスマホの画面を見ると、そこにはフランの顔が映し出されていた。

 

「かっ……こよ……」

 

 セルフスチル保存ありがとうございます。

 このスマホ私のだよね?

 管制施設を出たあとも持ち歩けるんだよね?

 つまり、人目にさえ気を付ければ、いつでもフランの顔を見放題ってこと?

 あれ? これって、夢の『カレシの写真ゲット』シチュですか?

 

「ふおぉぉ……」

 

 思わず、変な声が口から出てもしょうがないと思う。

 こんなの喜ぶしかないじゃない!

 

「リリィ?」

「あ、ごめん。こんな風に風景がそのまま保存できるの」

「……確かに、便利だな」

「カメラは両面についてるから、切り替えたら……ねえフラン、ちょっとこっちの画面見て」

「こうか?」

 

 私はインカメラに切り替えると、フランに体を寄せた。一緒になってスマホを見る。

 そのままシャッターボタンをもう一度。

 今度は私とフラン、ふたり並んでる写真がとれた。

 あこがれの!

 カレシとツーショット写真ゲットだぜ!

 

「うわあ……本当にツーショットだぁぁ……」

 

 これはロックかけて永久保存するしかない。

 絶対に消去不可だ。

 

「お前との絵姿は悪くないが、いいのか? こんなものを他人に見られたら……」

「スマホ自体がそもそも重要機密だから、人のいる所では使わないわよ。それに、持ち主以外操作できないよう、ロックもかかってるし」

 

 スマホの利用者自体が限られまくっているこのファンタジー世界で、情報を抜き取ってくるハッカーなんてほとんど存在しない。管理さえ気を付ければ、流出する危険性はほぼゼロだ。

 

「……なら、いいが」

 

 今度はフランが自分のスマホでカメラアプリを起動させる。

 何度か指令室の中に向けてシャッターを切っていたかと思うと、不意にこちらを向いた。

 

「リリィ」

「え、私?」

「恋人の絵姿がほしいのは、お前だけじゃない」

 

 言いながら、スマホ片手に見つめられると、また頬が熱くなる。

 そういえばそうだった。

 私がフランの写真で喜ぶのと同じように、フランも私の姿で喜ぶんだったね……。

 気持ちは嬉しいけど、なんだか気恥ずかしい。

 

「こ、こう?」

 

 ポーズをとったらカシャ、とシャッター音が静かな指令室に響いた。

 

「表情が硬いな。もう少し笑った顔のほうが嬉しいんだが」

「ええぇ……」

 

 そんなこと言われても。

 恋人の写真を撮るシチュエーションが初めて、ってことは逆に撮られるのも初めてなんだよ。小夜子の時は自分の姿が好きじゃなかったから、あんまり写真を撮らなかったし。

 せっかくなんだから、かわいく笑わなきゃって思うのに、顔はどんどんこわばっていく。

 

「リリィ」

「ま、待って、待って……笑顔になろうとはしてるんだけど」

「恥じらう姿は、それはそれでかわいいんだがな」

「今そういうこと言わないでー!」

 

 余計緊張するから!

 私が慌てている間にも、フランは恐ろしい勢いでカメラの使い方を覚えて、こちらを撮影してくる。恋人のひきつった顔ばかり撮って君は何がしたいんだ。

 

「ただ撮られるのが緊張するなら、さっきみたいにふたりで撮るか?」

「え、あ」

 

 私の返答を待たずに、フランは自分のスマホをインカメラに切り替えて体を寄せてきた。さっきと全く逆の構図だ。自分も同じことをやってたはずなのに、フランが撮っていると思っただけで心臓が跳ねる。

 

「カメラを見ろ」

 

 密着しているから、声が近い。

 カシャ、とシャッター音がまた鳴った。

 

「顔をあげて」

 

 耳元でささやかれて、私は逆に俯いてしまう。

 

「ね、ねえ……っ、からかっておもしろがってるでしょ!」

「ばれたか」

「もうっ……!」

 

 顔をあげたら、フランの青い瞳と目があった。彼は器用にスマホのカメラをこちらに向けたまま、私を見つめている。

 カシャ、とまたシャッター音がした。

 

「いい顔だ」

 

 唇を寄せられて、吐息がからむ。

 私はとっさに手をのばすとフランの大きな手ごと、スマホをつかんだ。レンズが私の手にふさがれて、画面が真っ黒になる。

 

「こういう時の顔は……撮っちゃダメ……」

「酷なことを言う」

 

 ちゅ、と唇が触れ合った。

 この仮想空間でできるのはここまでだ。そうわかっていても、リアルな感覚が気持ちいい。抱きしめ合ったまま、もう一度キスしようとして。

 ヴーッ! ヴーッ!

 けたたましい警告音が鳴り響いた。

 

 

 

 




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