【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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部屋割り

 大講堂には、大勢の女子生徒が集められていた。ひとりになるのが怖いのか、彼女たちはそれぞれいくつかのグループに別れつつも、お互いよりそって座り込んでいる。彼女たちが身に着けている服は、男子制服だったり、ローブだったりと、てんでばらばらだ。騎士科が用意した備品の限界なんだろう。でも、寝間着よりはずっといい。

 

「みんな、ちゃんと着替えられたみたいね」

 

 声をかけると、少女たちはぱっと一斉に顔をあげた。

 

「リリアーナ様!」

「門の外で何があったのですか?」

「騎士科の方々が一斉に向かっていったと……」

「大丈夫よ!」

 

 私はことさら明るく笑ってみせた。クリスも一緒に元気いっぱいの笑顔になる。

 

「問題は全部片付いた。困るようなことは何もない」

「みんな、ゆっくり休んでていいのよ」

 

 女子生徒の中心である私たちが『大丈夫』と太鼓判を押したことで安心したんだろう。生徒たちはほっとした表情で座り直した。

 

「さすがの影響力ですわね」

 

 留学生同士で講堂の隅に陣取っていたシュゼットが話しかけてきた。彼女もだぶだぶの騎士科制服を着ている。ライラより若干小柄なせいか、よけいに制服が大きく見えた。

 

「この中でトラブル慣れしてるのは私とクリスぐらいだから。そう言うシュゼットだって、ずいぶん落ち着いてるじゃない」

「私も王族のはしくれですもの。危機的状況ほど、落ち着くように教育されてますわ」

「おお……」

 

 さすがお姫様。教育水準が高い。

 私が感心していると、シュゼットは苦笑する。

 

「とはいえ、下手なことをしてしまわないよう、おとなしく座っているのがせいぜいなのですけど」

「いやそれ、十分すごいと思うわよ」

 

 どこかの王子様と大違いである。

 この状況でシュゼットが冷静でいてくれるのは、正直な話めちゃくちゃ助かる。自分たちのことで手一杯なのに、他国のお姫様にまでパニックで暴れられたら、手に負えない。

 

「シュゼット様、リリアーナ、少しいいですか?」

 

 今度はライラを連れた副寮母が声をかけてきた。彼女の手には校舎の見取り図らしい紙が握られている。今度は何なんだろう。

 

「無事な教室棟を仕切って、女子生徒の寝泊りする部屋を用意しました。配置について相談させてください」

「そっか、女子寮にはもう入れないですもんね……」

 

 相談してもらえて助かった。勝手に変な場所に部屋を用意されると身動きできなくなるところだったから。

 副寮母は丁寧に見取り図を示しながら説明を始める。

 

「一般生徒は基本的に一部屋につき十人。寮の部屋割り方針は身分制でしたが……」

「今はそんなこと気にしてる場合じゃないですよね。できるだけ仲の良い生徒同士で、お互いに助け合えるように入れましょう」

「私もそう思います。どの子も突然の災害で不安定になっていますからね」

「特に不安定な子は、ミセス・メイプルたちのそばに配置したほうがいいかもしれません。……先生方には負担をかけることになりますが」

 

 災害にショックを受けているのは、教師も一緒だ。混乱している中で生徒のケアまでするのは、かなりの重労働だろう。しかし副寮母は気丈にほほ笑む。

 

「むしろ、そういう時のために私たちがいるのです。安心して頼ってください」

 

 問題教師が一掃された王立学園、頼もしすぎる。ゲーム通りのギスギスマダムが支配する女子寮じゃ、こんなにスムーズに部屋割りが進まなかっただろう。

 

「シュゼット様をはじめとしたキラウェア留学生は、ひとつの部屋にまとまっていただこうと思います」

「そうしてくださいませ。私たちもそちらのほうが安心できますわ」

 

 副寮母の配慮に、シュゼットも笑みで返す。しかし副寮母はちょっと困り顔になった。

 

「とはいえ、シュゼット様たちだけでは何かとご不便かと思いますので……ハーティアの学生も同じ部屋で寝泊りすることをお許しください」

「私たちだけでは、何かあったときに気づきにくいですものね。わかりました、お願いいたします」

 

 シュゼットが素直に受け入れると、副寮母はあからさまにほっとした顔になった。避難所生活は情報が錯そうすることが多いから、仲介役になる生徒がいたほうが便利だろう、っていうのが理由だけど、きっとそれだけじゃない。

 多分、この状況で他国人の生徒たちを単独行動させられないんだろうなあ。行方不明になっている問題生徒もいるわけだし。

 留学生の部屋に入る生徒は、悪い言い方をすれば監視役だ。

 シュゼットはこの程度の意図に気づかないほど鈍くない。きっと全部わかった上で、受け入れてくれたんだろう。彼女の心の広さに、重ね重ね感謝だ。

 

「シュゼット様の部屋には、私が入ります」

 

 ぺこりとライラが頭をさげた。

 

「あなたが同室ですの? ふふ、同級生が一緒でほっとしましたわ」

 

 この人選も意図的なものだろう。

 ライラは去年特別室に入っていた生徒で、私たちとシュゼットの両者に親しい。監視を抜きにしても、連絡役として適任だ。

 

「あとはリリアーナとクリスの部屋ですが……」

 

 寮母が私たちを心配そうに見る。

 先生方の好きにしてください、って言いたいところだけど、そうもいかないんだよなあ……。

 




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