【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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オーパーツ

 副寮母が用意してくれたのは教室棟の隅の部屋だった。

 部屋を確保しただけで、まだ寝泊りする準備が整ってないのだろう。殺風景な部屋には机と椅子がいくつも並んでいる。先に入ったフィーアが素早く部屋の中を確認し、窓のカーテンを全部閉めていった。

 私も廊下側から部屋の中をのぞけないよう、持ってきたシーツで目隠しをする。

 

「準備完了しました。窓はすべて閉鎖、周囲の気配もありません」

 

 ネコミミをぴくぴくさせて、フィーアが報告した。

 彼女の鋭い感覚でも、他に人がいないというなら安心だ。

 

「最初はリリィが何を言い出すのかと思ったが、確かにコレを使うなら人目を避けるべきだろうな」

 

 椅子のひとつに腰かけながら、クリスがポケットから黒い板を取り出した。管制施設から持ち出した異世界産のスマホだ。神の造り出した超アイテムは、クリスの手の中でわずかに振動を繰り返している。

 

「スマホは存在そのものが国家機密だからね」

 

 現代日本ではありふれた通信機でも、ここでは超一級のオーパーツだ。

 最低限通信するための密室はそれぞれに必要だろう。

 

「ハンズフリーでこっそり通話できる機能とか、追加してもらうかな……」

 

 よくよく考えれば、着信がくるたびに隠れる指揮者は不審だ。図書室から出てこない私を観察してた王子と同じように、関心を持った誰かが聞き耳をたてる可能性がある。

 いつもの女子寮なら大きな問題はなかっただろう。私もクリスも特別待遇で個室があったから、『ちょっと部屋で仕事』とか言えばどうにでもなったはずだ。

 でも個室が建物ごと倒壊した上、災害対応で周りに必要とされることが多いこの状況では使いにくい。

 正体を隠して活躍する変身ヒーローってこんな気持ちだったんだろうか。

 周りが全く気が付かないご都合展開がほしい。面倒くさくてしょうがないから!

 私は自分のスマホをポケットから取り出すと、画面を確認した。

 着信欄には白い猫のアイコンと『もちお』の名前が表示されている。スマホを配布したメンバーではなく、管制室からの連絡だったらしい。

 ナビゲーションはしてても、積極的に使用者にコンタクトをとることのなかったAIにしては珍しい。何か非常事態でも起きたんだろうか。

 

「はい、もしもし?」

 

 ボタンを押すと、ビデオ通話モードが起動した。見慣れた白猫が管制施設のロビーを背景にして表示される。しかし、次の瞬間画像が揺れた。いや、それだけじゃない、声もガサガサでよく聞き取れない。

 

『……さま、……を』

「もちお?」

 

 なんだろう、このノイズ。通信障害っぽいけど。

 

『……しん、機器を……窓……て』

「窓?」

 

 試しに教室中央から、窓際へと移動してみる。すぐに画像がクリアになった。もちおの声も聞き取れるようになる。

 

『リリアーナ様、聞こえますか?』

「聞こえるわ。あなたは聞こえる?」

『はい、ご対応ありがとうございます』

「ごめん、用件の前に聞きたいんだけど、さっきのノイズってなに? 窓際に来たら減ったけど」

『遮蔽物による通信障害ですね』

「え?」

 

 なんだそれ。

 もちおの説明がよくわからなくて、私は首をかしげる。建物で通信障害ってなんだ。建物の中ってむしろ通信が安定する場所ってイメージだったけど。

 

「リリィもわからない話なのか?」

「私もスマホ事情が全部わかってるわけじゃないから……」

 

 考えこんでいたら、スマホの画面が切り替わった。アンテナのついた建物が書かれたイラストが表示される。そのアンテナはスマホと通信しているみたいだった。

 

『この通信機器は、本来各所に設置した基地局を介して送受信する設計になっています』

「私の知ってるスマホもそんな感じね」

『しかし、現在の地上には利用可能な基地局が存在しません』

「あ」

 

 監視カメラの時と同じだ。

 王立学園も含めて、ハーティアの国土には基地局も通信ケーブルも残っていない。端末はあっても情報を中継する機械が存在しないのだ。

 

『そのため全ての通信機器は、一旦大気圏外の通信衛星を経由しています。なるべく遮蔽物のない場所でご利用ください』

「そういうことかぁー……」

 

 私は思わず頭を抱えてしまった。

 通信衛星の電波が届かない場所では、スマホがつながらない。

 基地局がないことで産まれた弱点。オーパーツだからこそ存在する問題だ。

 

「リリィ?」

「この通信端末は建物の奥みたいに屋根が分厚いところだと、うまくつながらないってこと。窓とカーテンくらいは大丈夫だけど、なるべく空の見えるところで使ったほうがよさそうね」

「へえ……神の作った機械にも不思議な弱点があるんだな」

「私も、まさかこんな理由でつながらないとは思ってなかったわよ。説明ありがとう、もちお。それで、用件は何だったの?」

 

 すっかり脱線してしまったけど、もちおも理由があって連絡してきてたはずだ。

 

『それが……』

 

 申し訳なさそうな顔で白猫が頭をさげる。

 

『ドローンのひとつが、撃墜されました』

「え?」

 

 なにごとだよ?!

 

 




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