【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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無自覚疲労

「通信機が必要な用事は終わったから、女子生徒と合流しましょうか」

 

 通話を終了させた私は、後ろに座っていたクリスを振り返った。

 生徒のまとめ役ポジションのはずなのに、呼び出されて席を外してばかりだ。ある程度落ち着いてきたことだし、ここからはしっかり働かないと。

 

「ん……」

 

 てっきり一緒になって気合をいれてくれると思った友達は、なんとも歯切れの悪い返答をする。不思議に思って顔を見たら、顔もぼんやりしていた。眼の焦点も微妙にあってない。

 

「クリス?」

「あー……すまない。リリィは先に戻っててくれないか、ちょっと頭がくらくらするんだ」

「それ、ちょっとって言わないわよ」

 

 元気で健康が取柄のクリスがぼんやりしてるなんて異常事態だ。ただの疲れだけならいいけど、感染症だったら大変なことになる。

 私はクリスの額に手を当てた。

 

「熱はなさそうだし、顔色もそこまで悪くないけど」

「んー」

「すぐにディッツを呼びにいって……」

 

 ぐうううう……。

 

 クリスの状態を細かく確認しようとした私たちの耳に、とてつもない音が聞こえてきた。多分、クリスのお腹のあたりから。

 

「あれ?」

「ん?」

 

 私たちはお互いに顔を見合わせた。静かに控えていたフィーアが、ごほんと咳払いする。

 

「……失礼ながら、クリス様のめまいは空腹によるものではないでしょうか」

「あっ」

 

 よくよく考えてみたら、私たちは全員、地震でたたき起こされてから走り回りっぱなしである。その間に、食事をした記憶も、水を飲んだ記憶すらない。めまいくらい起こしても不思議じゃない。

 

「空腹とめまいの区別がつかなくなるとは……どうかしてるな」

 

 自分自身の状態が信じられなかったのか、クリスが目も目を丸くする。

 

「非常事態で緊張しっぱなしだったもの、しょうがないわよ」

 

 アドレナリンの過剰分泌で、空腹感や疲労感がわからなくなっていたんだろう。

 災害現場とか、緊急事態ではたまに聞く話だ。

 

「お水を飲んで、少し何かお腹にいれましょ。食事と休憩をとれば、落ち着いて感覚が元に戻るはずだから」

「わかった、そうする」

 

 今はたいしたことないけど、疲労と空腹は免疫力を低下させる。丈夫なクリスでも、このまま放っておいたら、倒れて大変なことになるだろう。

 

「問題は、この状況で食べ物が残ってるかってとこよね」

 

 地震が揺さぶったのは図書室や医務室だけじゃない。食堂だってかなり揺れたはずだ。火事こそ起きてないけど、中は棚から落ちてきた食器類でぐちゃぐちゃのはずだ。まともに料理ができるとは思えない。

 

「その心配はなさそうですよ」

 

 フィーアがネコミミをぴくぴくと震わせた。すん、と軽く何かにおいをかぐ仕草をする。

 なにを感じ取ったのか、彼女は廊下に出ると私たちを案内して歩き始めた。

 

 

 




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