【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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生死を分ける訓練

「もっと危ない目にあってたほうがいいってことか?」

 

 クリスが首をかしげる。

 私はぶんぶんと首を振った。

 言いたいことはわかるけど、言い方は考えていただきたい。

 

「ええと、実際に危険なことをさせる必要はないのよ。ただ、最低限……地震が起きたら、まず身を守るとか、すぐ避難するとか。避難所では不自由な生活になるよ、とか、そういうことを学んでおいたほうがいいなって思ったの」

 

 現代日本の避難訓練の考え方だ。

 学校や病院で避難訓練を受けていた時は、『だるいなー』としか思ってなかったけど、実際に予備知識なしで右往左往している生徒たちを見ていればわかる。

 避難知識の有無は生き死にを分けるのだ。

 邪神の封印が揺らいだハーティアでは、これから災害の頻度が上がる。

 次同じことが起きたとして、今回みたいに全員無事とは限らない。

 

「最低限避難訓練は必要よね。あと、野戦食の試食会」

「このスープを、わざわざ食べさせるんですの?」

 

 シュゼットが目を丸くする。

 

「大事なことよ」

 

 大きくうなずいて、私は中庭に目を移す。

 彼女たちにとっては、被災することそのものが大きなストレスだ。こんな状態で、食べたこともない料理を、想像もつかない作法で食べさせられるのは、さらに大きなストレスになる。

 私たちが食べて見せたことで、やっとスープに口をつけるようになったけど、こんなパフォーマンス、毎回やってられない。

 

「何かあったとき、こんなものが出ますよってあらかじめ知ってれば、あの子たちだって手を出しやすいでしょ」

 

(今思えば、非常食クッキーの試食とか、結構大事な教育だったんだなあ……)

 

 小夜子は体質的に食べられるものが少なかったから、災害で流通が止まった時の食事は重要な問題だったんだよね。急に食べ慣れないものを渡されても困るだろうからって、おやつに長期保存パックのアレルギー除去クッキーが出たのはいい思い出だ。

 

「でも、それって難しいんじゃありませんの」

「どうして?」

 

 今度は私が首をかしげる番だ。

 

「貴族はプライドこそが大事ですもの。わざと粗末なものを食べさせる訓練なんて、家の威信に傷がつきますわ」

「えぇー……」

 

 言いたいことはわからなくもないけど、非常時のプライド面倒くさい。

 だからって無理に押し付けるのも何か違う。各家庭に考えが広がらなくちゃ訓練の意味がない。

 

「じゃあ、避難訓練と一緒で試食会も学校のカリキュラムのひとつにするのはどうかな。国主導で、淑女の心得として体験させる、みたいな感じで」

「……それなら、アリかもしれませんわね」

 

 階級に関わらず在学生全員が体験することだ。各家庭の事情に関わらないから、反発は少ないだろう。

 

「落ち着いたら、女子部の先生とミセス・メイプルに提案してみましょう」

「私も協力しますわ。その訓練はキラウェアでも有益と思いますから」

「問題は、学校がいつ再開できるかってことよね……」

 

 荒れ果てた学校を眺めて私たちはお互いため息をつきあった。

 




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