【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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悪意まみれ

「姫様方、リラックスできましたでしょうか」

 

 お風呂から上がってくると、侍女たちが大きなタオルを持って待ち構えていた。その中心には相変わらずローゼリアがいる。

 彼女は笑顔で私たちにドレスを差し出してきた。

 

「皆様とても仲がよろしいので、お揃いのドレスにしてみましたの」

「まあ……なんてきれいな緑」

 

 体を拭かれながら、シュゼットが思わず目を見開く。

 そう思うのも無理はない。ドレスはどれも、新緑を思わせる明るい緑に染められていたからだ。

 現代日本ほど染色技術が発達していないこの世界で、明るい色を鮮やかに表現することは難しい。こんなにキレイな緑を出すのは至難の業だろう。

 三つ子コーデ風に並べられた三枚のドレスは、どれも上質な絹地と、幾重にも重なるレースで彩られている。これらが最高級品であることは疑いようもなかった。

 

「素敵でしょう? きっと、シュゼット様のブロンズ色の髪と青緑の瞳によく合いますわ」

「クリスティーヌ様の銀の御髪と紫の瞳も映えると思います」

「リリアーナ様の黒髪には……その、意外性があってよいと思いますわ……ほほほ」

 

 姫君たちを口々に褒めたたえていた女官たちは、最後のひとりを見て言葉を濁した。

 自分にパステルカラーが似合わないのはわかってるよ!

 王宮勤めの女官なら、うまくごまかすくらいの語彙は持ってて!

 だけど、私の顔が引きつってる理由はそこじゃない。

 ドレスの緑に見覚えがあったからだ。

 

(よりにもよって、コレを持ってくる?)

 

 あまりの状況に言葉が出ない。

 私が黙っていると、ローゼリアたちはさらに小さな容器をテーブルに並べ始めた。

 

「お化粧品も、王都で人気の最高級品をご用意しました。花の香りの美顔水に、クリーム。それから、こちらが白粉《おしろい》になります」

 

 ぱかりと蓋をあけたそのケースには、少女に似合いそうな優しい色合いの真っ白な粉が詰まっている。その美しい粉にも見覚えがあった。

 

「口紅はこちらを」

 

 手の先に乗るほどの小さな容器が示される。

 中には明るい朱色の軟膏のようなものが入っていた。

 

「緑のドレスには、少し黄みが勝った赤が合いますわ」

 

 ローゼリアは翡翠の瞳を細めてにっこり笑う。

 

「……!」

 

 王妃の思惑は、殺意だ。

 嫌がらせとか、陰謀とか、計略とか、そんなちゃちなものじゃない。

 ストレートに、私たちに殺害の意志を向けている。

 彼女たちの接待をそのまま受けたらダメだ。

 全部拒否しなくちゃ命にかかわる。

 私は深呼吸して息を整えると、腹の底から声を出した。

 

「ばっ……かじゃないの?!」

 




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