【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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脱出

「……そう。部屋から出す気はないってこと」

 

 私はドアの前に並ぶ女官たちと、彼女たちを従えるローゼリアを見た。

 彼女たちの決意は固そうだ。

 王妃が仕事を果たせない女官を許すとは思えないもんね。

 かわいそうと思うけど、こっちも気を遣ってあげられる余裕はない。

 私は構わずシュゼットの手をとると、彼女たちとは反対方向、窓に向かって走り出した。

 

「えええ?」

「出口はひとつじゃないってことよ。クリスはひとりで行けるわね?」

「まかせろ」

 

 クリスは一足先にひょいと窓枠を乗り越えた。

 女官たちから悲鳴があがる。

 

「ここは三階……っ!」

 

 その程度なら自力で着地できるのだよ、あのお姫様は。

 

「リリィ?」

 

 シュゼットがおびえた目で私を見た。私は笑顔のまま彼女の手を引く。

 私にクリスみたいな身体能力はない。

 でも、彼女にはない魔法が使える。

 

「行くわよ! 着地はまかせて!」

「信じましたからね!」

 

 私はシュゼットを抱きかかえて窓枠を飛び越えた。

 重力に逆らって魔法を展開する。

 

無重力(ゼログラビティ)いぃぃぃ……!」

 

 小柄な少女とはいえ、魔法だけで人間ふたりぶんを支えるのは大変だ。魔力を消費して、地球の中心からの力に全力で抗う。体の魔力をほぼ使いはたしたところで、やっと足先が地面についた。

 

「これは……ミセスメイプルを助けた時の……魔法……ですわね」

「そういうこと。さ、すぐに走るわよ」

 

 緑の部屋の窓を振り返ると、ローゼリアが真っ青な顔でこちらを見下ろしているのが見えた。バタバタと女官たちが廊下を走る音も聞こえる。何人かが階段を使って降りてきてるんだろう。

 ぼんやりしている暇はない。

 魔力不足でくらくらするのも、今は無視だ。

 

「どっちに行けばいい?」

 

 私たちに並びながら、クリスがたずねてきた。

 

「このまま中庭を進んで。建物の中に入っちゃダメ」

 

 フランは、『空の見える場所に全員で逃げろ』と言っていた。あの状況でわざわざ条件をつけたのには、必ず意味があるはずだ。ここは彼の言葉の通りに行動したほうがいい。

 

「にゃあ」

 

 いつの間に降りてきてたのか、黒猫が姿を現した。

 私たちと一緒に、いやちょっと前に出て走り出したから、先導してくれてるらしい。彼女のことだから、獣人の超感覚で行くべき場所がわかっているのかもしれない。

 早くフランたちと合流しなくちゃ。

 猫のあとに続いて走っていたら、突然横から伸びてきた手に抱き留められた。

 

「え……あ!」

 

 一瞬、追手につかまったのかと、慌てて顔をあげたら青い瞳と目があった。

 彼は深々と眉間に皺を寄せ、嫌そうな顔で私を見下ろす。

 

「お前はまたそういう格好を……」

「これは不可抗力だもん!」

 

 浴衣(よくい)のままなのは、しょうがないと思うの!

 




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