【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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西部国境戦線

「まさか、このタイミングでお父様が挙兵? そんな……ありえませんわ……」

「その通りだ。兵を送ってきてるのはキラウェアじゃない」

「じゃあどこが?」

 

 クリスが首をかしげた。

 

「これは地図があったほうがいいな。リリィ、頼む」

「もちお、スマホにハーティア西部の地図を表示して」

『かしこまりました』

 

 白猫が返事をすると同時に、画面が切り替わった。地図にはハーティア西部、ランス領の先にキラウェアの国土が描かれている。

 ヴァンは指先で国境を示すと、そこからさらに南へと滑らせた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「今回狙われているのはキラウェア国境の南、魔の森と呼ばれる樹海だ。ここに、大陸南西部のダルムールって国が兵を送り込んできている」

「南西……人の住む領域ではない、と国境線が引かれていなかった地域ですわね」

 

 母国が攻め込んできたのではない、と知ってシュゼットは、ほっと息を吐いた。

 私は疑問を口にする。

 

「魔の森に侵入してくるって、正気? あんなアンデッドパラダイスで、人間が生きていけると思えないんだけど」

「アンデッド? 何言ってるんだ」

「あそこは森が深いけど、幽霊が出るって話は聞いたことがないよ」

「でも、現にジェイドが……あー……いや、そっか、その未来はなくなってたんだった」

 

 説明している途中で、私は自分の勘違いに気づいた。

 王国西側の魔の森には、最悪の死霊術師(ネクロマンサー)の根城があり、中に迷い込んだ者すべてをアンデッドに変えてしまう。その伝説が存在したのは女神のゲームの中だけだ。

 敬愛する師匠を蘇らせるために、禁忌の呪術に手を出すはずだった魔法使いは、今では私の忠実な部下として働いている。

 

「リリィ、何をご存じなのですか?」

「ごめんなさい、気にしないで。ちょっと記憶違いしてただけだから」

 

 心配そうなシュゼットに、私は手を振った。

 いろいろと王家の秘密をバラしてしまったシュゼットだけど、さすがに転生だとか女神のゲームだとかの話まではできない。

 

「えっと……アンデッドがいないのなら、あそこは普通の森よね。兵士が入ってきてもおかしくないのかしら」

「まあ、森が深いうえに底なし沼やら、毒沼やらがそこら中にあるから、人の暮らしに向かねえんだけどな」

「ダルムールは、西側諸国としてキラウェアとも交流のある国です。しかし……妙ですね」

 

 西の姫君は眉をひそめる。

 

「かの国はいくつかの氏族がまとまってできた小国です。大国ハーティアとコトを構えるほどの力はないはずですわ」

「今回の派兵で、ハーティアそのものを侵略する意図はないと思う。奴らがほしいのは、樹海の開拓権あたりじゃないかな」

 

 ケヴィンが推理を披露した。きっとそれは大きく外れてはいないだろう。

 危険な樹海でも、地道に森を切り拓き沼を埋め立てれば集落ができる。そして国土が広がれば国力も一緒に上がっていく。

 アンデッドのような呪われた存在がないのなら、十分考えられることだ。

 

「ヨソの土地なら勝手にしろと言いたいとこだが、そうもいかねえ。樹海を押さえたら次に目がいくのはその東……ハーティア南部穀倉地帯だからだ」

「国の食糧庫を危険にさらせないわね」

 

 現代日本で農業国というと田舎の印象を受けるかもしれない。

 確かに南部農業地帯は、ひたすら田園風景が広がっている地域だ。

 しかし近代産業が発達していないファンタジー世界で、毎年安定して食料を生産できる温暖な土地ほどチートな武器はない。枯れず、尽きず、飢餓を駆逐する豊穣の国。

 だから南部貴族(ハルバード)は富豪なのである。

 

「こっちはランス騎士伯が迎撃に出るの?」

「いいや」

 

 ヴァンは首を振った。

 

「友好国っていっても、キラウェアとはそこまで気の置けない間柄じゃねえからな。国境守護のランス騎士団は動かせねえ」

「じゃあ誰が?」

「南部穀倉地帯を守るんだぜ、南の盟主ハルバード侯爵が出るに決まってんじゃねえか」

「お父様……!」

 

 今度は私が息をのむ番だった。

 

 




「クソゲー悪役令嬢」⑤巻発売中!
書籍版もよろしくお願いします。
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