【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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奇跡の子

 私は医療魔法使いでもある従者の言葉を思い返す。

 

「寝てるだけで、健康上の問題はないみたい。血色もいいし、呼吸も安定してるって。脱水で肌がカサカサになることも、寝たきりで筋肉が衰えることもないそうよ」

 

 長く寝返りを打たないことでできる褥瘡も、一切できる気配がないそうだ。

 なんてうらやましい。

 

「ええ……?」

「寝ている間は、飲まず食わずのはずだよな?」

 

 トンデモ話に慣れてきたシュゼットも、さすがに困惑顔だ。クリスは首をひねる。

 

「東の賢者、ディッツの見立てによるとセシリアの持つ膨大な魔力が、生きるために必要な要素……この場合は、水分とか栄養素ね、これらを周囲から集めて体に循環させてるんだって」

「魔力ってすごいんだなあ」

 

戦闘は物理派の姫君がふむふむとうなずいている。横でシュゼットが額に手を当てた。

 

「すごいどころの話じゃありませんわ。私も王女として、魔法はひととおり学びましたけど、いくら魔力があるからって、何日も寝たままでいられる術なんて聞いたこともありませんもの」

「セシリアには可能なのよ」

 

 私はセシリアが奇跡を起こすことに驚かない。

 

「あの子は特別だから」

 

 血統の意味でも、役割の意味でも。

 彼女は世界の命運を握る鍵だ。

 きっと運命の女神が彼女を見放すことはない。

 

「生きてるぶんには一安心、と言いたいところだけど……目を覚まさないのはやっぱり心配ね」

 

 倒れる直前、セシリアには強いストレスがかかっていた。

 女神のダンジョン内で邪神に絡まれ続け、脱出したと思ったら翌朝には王都が燃えていた。実は王女、という素性を暴露され、王族としての責任をつきつけられた直後に、あの光景を見るのはキツい。

 私たちがそばにいる、と励ましたくても相手は夢の中だ。

 眠ったままでは何の手助けもしてあげられない。

 

「王都がもう少し落ち着いたら、一度屋敷に帰って直接セシリアの容態を見てこようと思う。それまでは引き続き、ディッツに看病させるわ」

「そうする他、ないか」

「問題はそれがいつかってことよね」

「復興のめどは、まだ立ちそうにありませんか」

 

 シュゼットは窓の外を見た。

 堀と塀に囲まれている離宮からでは、その先の市街地の様子を見通すことはできない。

 時々スマホごしに伝えられる情報によると、がれきの撤去や避難場所の整備は進んでるみたいだけど、完全復活には程遠いようだ。さらに、東西同時防衛に、魔物の出現。事態は良くなってない。なんとか悪くなる前で踏みとどまってるだけだ。

 

「ごめんね。今日みたいなことになる前に、どうにかしたかったんだけど」

「あなたが謝る必要はありませんわ。悪いのはユラですもの」

 

 話していると、ちょうどタニアがやってきて来客を告げた。

 私たちはそろって立ち上がる。

 

「危機的状況で外国人留学生を留めおくことはできない。大人の判断はおおむね正しいと思います」

 




「クソゲー悪役令嬢」⑤巻発売中!
書籍版もよろしくお願いします。
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