【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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幕間:お別れの挨拶(ミリアム視点)

「お、お待たせしました……ローゼリア、さん」

 

 指定された場所に行くと、すでに私を呼び出した女官が待ち構えていた。濃い蜜色の髪の女は、翡翠の瞳を細めてにんまりと笑う。

 

「久しぶりね、ミリアム」

「……」

 

 私は身をすくませる。

 でも、これはあと少しの辛抱だ。

 

「突然の災害で、連絡がとれなくなってたけど、元気そうでよかったわ」

「その……王宮に避難してからは……ひとりで、出歩けませんでしたから……」

「ふうん」

 

 肯定しているようで、まったく信用する気のない返事だった。

 

「あなたのことだから、新しい場所でまた秘密の恋人を作っていると思ってたわ」

「あ……あれは、あれっきりのことで……! そもそも、あなたたちが仕掛けたことじゃないですか」

「それでも、母国に婚約者がいながら彼についていったのはあなた。彼と関係を持ったのもあなた。元から関わらなければ、罠になどかからなかったのに」

「う……」

 

 私は唇を噛んで必死に耐える。

 もう少しだ。

 もう少しだけ耐えればいい。

 

「もう……失礼させてください。私たち、帰国するんです」

「そうらしいわね。国を隔てても末永くお付き合いを……」

「む、無理です! 堪忍してください……!」

「やめてあげる」

「……は」

 

 翡翠の瞳の女は、にやにやと笑っている。

 

「やめてあげる、って言ったの。あなたとの取引は、これっきりにするわ」

「……そ、う。ですか」

 

 どくどくと心臓が早鐘を打っている。

 落ち着け。

 女は取引をやめると言っているのだ。

 自分が一番望んだ結果じゃないか。

 

「これでも、あなたには感謝してるのよ? 宰相家の連中は誰も彼もガードが硬くて、なかなか近づくこともできなかったから」

 

 ローゼリアは懐から何かを取り出した。

紅い布張りの小さな箱。蓋を開けると、そこには大粒の真珠がひとつ、おさまっている。

 

「な……に、ですか」

「お礼よ。あれだけ働いてもらったのに、ご褒美もナシじゃかわいそうでしょ」

「結構です……!」

「遠慮しないで」

 

 拒否しようと一歩下がったら、無理やり荷物にねじこまれた。

 

「ね?」

 

 睨まれて、私は抵抗をやめた。

 どうせこれきりだ。

 この場を乗り切れば、縁が切れる。

 小箱ひとつ受け取れば解放されるのだ。

 従ったほうが早くすむだろう。

 

「……ありがとう、ございます」

「いい子ね」

 

 ローゼリアが身を引いた。ねっとりとした蛇のような視線が、ようやくゆるむ。

 彼女は優雅にお辞儀した。

 

「ごきげんよう。永遠に、さようなら」

 

 ついに悪魔から逃れた私は、大急ぎで主の元へと向かった。

 




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