【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
ざばっ、と音をたててローゼリアは頭から水をかぶった。
「なっ……この程度!」
一瞬視界を奪われたものの、すぐに顔をぬぐって前を向く。
でも私にはその一瞬で十分だった。
地下に出現した水たまりに手をあてて、フルパワーで雷魔法を実行した。
「ぎゃあああああああっ!」
突然体に大電流を流されて、ローゼリアが絶叫する。
こわばった手から、剣が落ちた。
私はすかさずそれを通路の奥へと蹴りこんだ。
「ぐ……っ!」
電撃のショックから立ち直ったローゼリアが私を睨む。剣を追おうと背後をふりかぶり、結局私に向き直った。
毒の剣は真っ暗な通路の先だ。拾うためには闇の中を手探りで剣を探さなくちゃいけない。
でも背中を見せたら最後、私に何されるかわかんないもんね。
追撃を用意していた私は、ローゼリアの賢明すぎる判断のせいでたたらを踏む。
「あの距離で……どうやって雷魔法を」
「ごめんなさい、手品の種は明かさない主義なの」
水の通電性を語ったところで、どうせ聞いちゃいないだろうしね。
「リリアーナ・ハルバード! 殺す! お前だけは殺す!」
武器を失ったローゼリアは、体ひとつでつかみかかってきた。
暗い通路は狭くて逃げ場がない。私は彼女に押し倒されるようにして、床に転がった。
必死に雷魔法を発動させるけど、興奮した彼女は痛みを無視してぐいぐいと首をつかんでくる。
まずい。
水魔法、フルパワー雷魔法、と魔法を連続発動させたせいで魔力が残り少ない。
どうがんばっても、出力が上がらなかった。
酸欠と、首に食いこむ指の痛みで、意識がとびそうだ。
「死ね! 死ねえええええ!」
視界がかすむ。
ローゼリアの叫びだけが妙に耳に響いた。
嫌だ。
死ねない。
私は生きるって決めたんだ。
絶対生き延びて、あの人と一緒に暮らすんだ。
だから、こんなところで、こんなやつに殺されてられない。
私は生きるんだ。
「ぐっ……うぅ……っ!」
ローゼリアの腕をつかむ。
どうにかして押し返そうとした瞬間……ごんっ! とすさまじい音がして、ローゼリアの体が崩れ落ちた。
「……ぁ?」
首を解放されて、口から吐息と一緒に声が出た。
倒れたローゼリアの体の先に見えたのは、眼鏡をかけた青い瞳の青年だった。相手が誰なのか認識する間もなく、ローゼリアの下から引っ張り出され、抱きしめられる。
彼は震える声で私の名前を呼んだ。
「リリアーナ……生きてるな?」
「ん……うん」
喉が痛くて、まだまともにしゃべれない。
こくりとうなずいたら、フランもほっと息を吐いた。
抜け道を通ってきたフランが、ローゼリアを背後から攻撃して助けてくれたらしい。どうやら。
「よかった……間に合った」
「ど、う……して。ここに?」
抜け道の入り口は、王家専用エリアにあった。フランが簡単に入ってこれるような場所じゃない。宰相家の権力を使ったとしても、到着するのが早すぎる。
「それは、俺が案内してきたからだね」
ひょこ、とフランの肩ごしに金髪の王子様が顔を出した。
「クソゲー悪役令嬢」⑤巻発売中!
書籍版もよろしくお願いします。