【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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宰相閣下の次なる一手

『今大丈夫か?』

 

 スマホをビデオ通話モードにすると、聞き心地のいい低い声がすぐに聞こえてきた。

 私は、お互いに顔が見えやすいようスマホを適当な場所に立てかける。

 

「セシリアと庭で話してたところよ」

「あ、あの……私、お邪魔でしょうし、退席しますね」

 

 恋人同士のイチャイチャ通話だと思ったらしい。セシリアはあわてて腰を浮かせた。

 しかし、元が真面目人間のフランは勤務時間中に私用通話をしてこない。十中八九、仕事関係の通話だ。

 

『いや、セシリアにも同席してほしい。君にも関係あることだ』

 

 案の定、仕事モードのままセシリアの同席を指示してきた。

 

「わかり……ました」

 

 セシリアはちょこん、と椅子に座り直した。私たちが聞く姿勢になったのを見て、フランが話し始める。

 

『リリィたちを襲った暗殺者、ローゼリアの裁判が王宮で行われることになった』

「さいばん?」

 

 唐突な報告に、私とセシリアはそろってきょとんとしてしまう。

 

「王城に火を放って、王族と侯爵令嬢を殺しかけたんだから、裁かれるのは当然だけど、それってわざわざ報告すること?」

『ああ。何しろ、国王陛下の御前での、大法廷で行うからな』

「ええ……?」

 

 大法廷、と聞いてますます首をかしげてしまう。

 

「それって……大きな戦争犯罪をした指揮官や、重大事件を起こした政治犯を裁くための法廷ですよね?」

 

 セシリアがたずねる。

 

『王族暗殺未遂が重大事件じゃなかったら、なんだというんだ』

 

 それはそうなんだけど。

 

「やっぱり疑問は残るわ。重大事件は重大事件でも、本当に責任があったのは誰なのか、とか、政治的な争点を明らかにするのが目的でしょ」

 

 王様がわざわざ出席する、とはそういうことである。

 しかし、ローゼリアが犯人だということは、すでに明らかになっている。

 

『争点ならある。ローゼリアに暗殺を指示したのは誰か、だ』

「え、指示したってまさか……」

『父宰相は、この裁判で王族暗殺未遂の黒幕として、王妃を断罪するつもりだ』

「できるの?」

 

 今まで、さんざん政敵からの追及を逃れてきた王妃だ。ローゼリアに暗殺未遂事件を起こさせて、逃げ道を用意してなかったとは思えない。

 ローゼリアは王妃の配下の中でも特に忠誠心が高かった。

 黒幕の名前を問われても、そう簡単に口を割るとは思えない。

 

『それなりに勝算はある。現在の王宮には王妃派閥はほとんど残っていない。父宰相の主張を否定する貴族は少数派だ。ローゼリアが王妃の子飼いであるという証拠もある』

「そういうものなんだ」

 

 王妃の味方をする貴族が少ないから有罪にできそう、と聞いて少し複雑な気分になる。

 現代日本の裁判は証拠が一番で、検察や弁護士が体制の主流派かどうかは、関係ない。しかしここは科学捜査が全く発達してないファンタジー世界だ。証拠が残りにくいし、見つけにくい。

 裁判のやり方もまた、動かぬ証拠だけでってわけにはいかないんだろう。

 

『そこで、ローゼリアに直接襲われた被害者として、リリィとクリス殿下に出席してもらいたい』

「裁判には証人が必要ってことね」

『すでにクリス殿下からは、承諾を得ている』

「怪我人のクリスが出席するのに、私だけサボるわけにいかないわね。行くわ」

『それから……』

 

 フランはふと視線をセシリアに向けた。

 セシリアはきちんと背筋を伸ばしてフランの意志を受けとめる。

 

「私も、法廷に行くべきですよね」

『……君は本来、あの場で裁決を下す立場だ。直接参加せずとも、何が行われているのか、見て知っておいたほうがいい』

 

 今はラインヘルト子爵家令嬢ってことになってるけど、本来のセシリアはハーティア王家の正当後継者だ。ずっと王家と無関係というわけにはいかない。

 

「私のおつきのひとり、ってことにすればセシリアも王城に連れていけるものね」

『襲われた直後だ。付き添いが増えても、咎める者はいない』

「わかりました。私もリリィ様に同行させてください」

『あなたの勇気に感謝します』

 

 ふ、と口元を柔らかくほころばせて、フランが一礼した。

 王族としてのセシリアに敬意をはらったんだろう。

 私たちは頷きあってから、通話を終了した。

 

 

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