【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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がけっぷち(カーミラ視点)

「ローゼリアの裁判ですって……?!」

 

 伝えられた用件に、目の前が真っ赤に染まるのを感じた。

 無能だ、無能だと思っていたが。

 まさかあの無能侍女がここまで無能だったとは。

 暗殺に失敗しただけでなく、裁判まで起こさせてしまうとは、なんたる無能。

 あの宰相がわざわざ国王の前で裁判を起こすのなら、事実関係の確認などでは終わらない。

 ローゼリアに指示したのが誰なのか。

 王城にローゼリアを引き入れたのが誰なのか。

 絶対に追及してくるに違いない。

 そして、黒幕として名指しされるのは、カーミラ・ハーティア。

 王妃である自分だ。

 

「あの馬鹿……死ねばいいのに」

 

 裁判は訴えられる相手がいてこそ成立するものである。

 ローゼリアが死んでしまえば、そこでくだらない茶番劇は終わる。

 しかし、待てど暮らせど、ローゼリアが牢で自死したという知らせは伝わってこない。

 失敗の時には必ず死ね、と命じておいたのに。

 この期に及んで怖気づいたのか。

 そんなところまで無能なのか。

 

「誰かさっさと殺してくれないかしら」

「いや~それは無理ですねえ~」

 

 飄々とした声が部屋に響いた。振り向くと、男がひとり悠々とソファに座っている。

 きめの細かい象牙の肌に、真っ黒な髪と瞳。

 ハーティアをはさんで西と東、お互いにこの国の崩壊を願う協力者だ。

 しかし、目的は同じでも抱いている熱量は全く違う。

 何が起きても、男はいつも他人ごとだ。

 

「ミセリコルデ宰相の息子が、ローゼリアの牢につきっきりで張り付いてて、まったくスキがないんですよ。あれを殺すなんてとてもとても」

 

 ユラはヘラヘラと笑っている。

 こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際だというのに。

 

「だったら、他の方法を考えなさい!」

 

 衝動に任せて、男の顔に扇を振り下ろす。

 バチンと大きな音がして、男は殴られるまま顔をそむけた。

 しかしそれだけだ。

 男の表情は変わらない。

 相当な力が加わったはずの頬には、痕すらなかった。

 へら、とまた笑い顔がこちらに向けられる。

 あまりのおぞましさにぞっと、背筋が粟立った。

 

「わ、私はこんなところで失脚するわけにいかないの! 生きて……生きてキラウェアに帰らなくちゃいけないのよ」

「わかってますって」

 

 ユラは肩をすくめて立ち上がった。

 

「要は、裁判で有罪にならなければいいんでしょう?」

「そ……そうよ」

 

 男はにいっと口をつりあげた。

 

「じゃあ、めちゃくちゃにしてあげますよ。有罪だ無罪だなんて、悠長なことが言えなくなるくらいに」

 

 何をするつもりなのか。

 問いただすことはしなかった。

 まともではない男が、まともなことをするとは思わなかったからだ。

 

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