【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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エスコート

「あなたが出向かえてくれるなんて、思わなかったわ」

 

 顔に淑女の仮面を貼り付けて、私はオリヴァーの手をとった。

 現在の私の立場は「王子の婚約者」。大勢の使用人の前で、彼の手を拒否できない。

 私がオリヴァーに促されるまま歩き出したのを見て、おつき役のセシリアとフィーアも後ろからついてくる。

 

「俺のエスコートじゃうれしくないのは知ってるけどね」

 

 使用人たちに気づかれないように、こっそりとオリヴァーが苦笑した。

 だったら放っておけばいいのに。

 

「キミのお父君は戦地にいて、兄君はハルバードの領地だ。宰相家は表向き他人だから、直接エスコートをつけられない。護衛を連れているのはわかってるけど、今の不安定な王宮を、ひとり歩きさせられないよ」

「……守って、くれてるの」

「ほんの少しの間だけどね。紙の盾よりはマシじゃないかな」

 

 オリヴァーはわざとらしくおどけて、肩をすくめる。

 

「……今日の裁判、俺も証人として出席するよ」

「え」

「王家の抜け道を使って離宮に向かい、暗殺者を捕らえた人間のひとりだからね」

 

 私はオリヴァーの顔をまじまじと見つめてしまう。

 彼が、裁判に出席する?

 でも。

 この裁判の目的って。

 彼の母親の。

 

「見たままを、証言するつもりだ」

「……いいの?」

 

 何が、とは具体的に言えなかった。

 問題が深刻過ぎて、言葉にできない。

 

「君たちが殺されそうになった。それは許されないことだ。……そこに、俺との血縁は関係ないよ」

 

 もう覚悟を決めているのだろう。

 オリヴァーの言葉にブレはなく、声も落ち着いていた。

 

「……」

 

 なんと声をかけていいかわからなくて、沈黙する。

 彼は、王様には向いてなかったかもしれない。

 人を導くために必要な血筋も、リーダーシップも、与えられなかった。

 しかし間違いなく彼は、善人ではあるのだ。

 まだたった17かそこらの少年に背負わせるには、あまりに重い。

 

「心配してくれるの?」

「え……あの、それは」

 

 オリヴァーのことが気がかりじゃない、と言えばウソになる。

 でもそれは、婚約者としての感情じゃない。

 伴侶として深く思いやれない自分が、軽々しく口にしていいものじゃない。

 

「いいんだよ、君はそれで」

 

 オリヴァーは穏やかに笑う。

 

「俺も、そうしてほしいと思わない。コレは俺が自分で抱えて、自分で立ち向かわなくちゃいけないことだ。誰も巻き込むつもりはないよ」

「……そう」

 

 オリヴァーは広間の前で止まった。すぐ脇にある、控室らしい部屋のドアを軽くノックする。ドアの奥からは聞き覚えのある声が響いてくる。

 

「オリヴァーだ、リリアーナ嬢を連れてきた」

「え? オリヴァーとリリィ?」

「どうして!」

 

 その声はどれも、頼もしい友人たちのものだ。

 

「君もがんばって」

 

 王立学園の同じ教室で学んでいても、オリヴァーはその輪の中に入れない。静かな笑みをうかべたまま、彼は早々にその場から立ち去っていった。

 

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