【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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大法廷

「あー……あー……じいさん、聞こえるか? ……ん、わかった。基本俺のほうでやっとくけど、何かあったらコメントくれ。……りょーかい」

 

 眼鏡をかけたヴァンが、耳に手をあてながらぼそぼそと小声でしゃべっている。

 領地にいるクレイモア伯爵と連絡をとっているんだろう。

 ケヴィンに情報を共有してもらったヴァンは、あっという間に仕組みを理解して、遠距離情報共有システムを構築してしまった。

 君たち、現代技術に適応しすぎじゃないのかね。

 私の現代日本人としてのアドバンテージが、どんどんなくなっていくんだが。

 味方が有能に越したことはないんだけどさあ。

 

「リリィ様、ちょっと緊張しますね……」

 

 セシリアが小声でささやいた。

 彼女が緊張する気持ちはわかる。ついに、大法廷が開かれるからだ。

 私たちはあのあと、控えの間から広間へと案内されていた。

『大法廷』と名前がついていても、現代日本のように専用の部屋があるわけじゃない。謁見の間として使われている大広間に関係者一同を集めて、容疑者や証人を前に議論するのだ。

 

「こんな格式の高いところ、滅多にこないからねえ」

 

 私は広間を見渡した。

 そこはファンタジー世界によく出てきそうな、いかにもなデザインの謁見の間だった。大きなフロアの奥に、豪奢な玉座。その両脇に置いてある、少し小ぶりな椅子は王妃と王子のためのものだろう。

 玉座と正面入り口の間には、高級そうな長い絨毯が敷かれている。これは普段、王様に謁見する貴族たちが立つ場所なのだろう。今日はそこに高さ1メートルほどの手すりのようなものが置かれている。……現代で言うところの、証言台みたいなものなんだろうか。

 玉座と絨毯の両脇はピカピカに磨かれた石造りの床が広がっている。

 私たちが立っているのは、この石造りエリアだ。普段は謁見者を見守る見学者スペースとして使われている場所だと思う。

 

「中央には行かなくて、いいんだよな?」

 

 玉座と証言台(仮)を見比べながら、クリスが首をかしげる。

 

「私たちは証人であって、容疑者じゃないからね。脇に控えておいて、必要な時だけ意見する形だと思うわ」

 

 脇に控えているのは私たち証人だけじゃない。

 裁判を見届けなければならない、貴族や騎士、役人などが何十人と集まっていた。絨毯をはさんだ、反対側の石造りエリアにもたくさんの人がいる。

 特に席順は決まってないみたいだけど、玉座に近いほど身分が高く、絨毯をはさんでこちら側が宰相派、あちら側が王妃派のようだった。

 今の勢力図を表してか、王妃派貴族の数はやや少ないようだった。

 

「え~と……証人がそろったところで、国王陛下が入ってきて、容疑者を前に告発が始まるんだっけ?」

 

 祖父との通話が終わったらしい、ヴァンが会話に合流してきた。

 ケヴィンもへにゃりと眉尻をさげる。

 

「裁判は学園の授業で一通り習ったけど、実際に参加するのは初めてだからねえ」

「領主にでもならない限り、なかなか裁判なんて……お、そういえば領主代理経験者がここにいたか。段取りとか教えてくれよ」

「私だってそう詳しくはないわよ?」

 

 無責任に意見を求められても困ってしまう。

 

「領主代理として裁決を下してたっていっても、司法官の報告書を読んでサインしてただけだもの。人を集めての裁判が必要な重犯罪は、父様に任せてたから」

「リリィなら、どんな難事件でもバッサバッサと裁いてそうなのにな」

 

 クリスが笑う。

 友人の評価はうれしいが、世界はそう単純じゃないのだ。

 

「私の判断力の問題じゃないのよ。領主代理やってたころの私って、12かそこらの子供じゃない? 人殺しするような賊が、女の子に『アンタ死刑』って言われて、納得すると思う?」

「無理だな」

「重い判決には、どうしたってお父様みたいな大人の威圧感が必要なのよねえ」

「大法廷じゃ、その威圧感ってやつを王様が担当するんだが……あの置物国王にそれができるのかね?」

 

 ヴァンが首をかしげる。

 現国王は自分の意見のない優柔不断なイエスマンだ。周りに意見を言われたら、はいはい、とそのまま従ってしまう。

 そんな王様に裁決を下されて、納得できる人間は少数派だろう。

 

「そこは、補佐である宰相閣下にがんばってもらうしかないわね。

 

 ぎい、と重い扉が開いて新しい人物が広間に入ってきた。

 宰相閣下たちだ。

 

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