【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

509 / 588
置物国王

「みな、表をあげよ」

 

 低い声に従って、臣下たちはいっせいに顔をあげた。

 私も顔をあげる。

 玉座を見ると、すでに王族の一家三人が着席していた。

 国王を中心にして、左手に王妃、右手に王子が座っている。清楚なドレスを着た王妃は、もう十七になる息子がいるとは思えないほど若々しく美しい。息子のオリヴァーはやや緊張しているようだった。

 そして、彼らの中心に座る国王はというと。

 意外にもイケオジだった。

 王子と同じ、輝く金髪に澄んだ緑の瞳。王の権威を示す豪華な軍服の上から、重そうなマントを羽織っているけど、その姿に衣装負けした様子はない。彫りの深い顔立ちに、整えられたヒゲがよく似合っていた。

 これが、置物と陰口をたたかれる国王?

 見た目だけなら名君と称えられていてもおかしくない、イケオジぶりだ。

 とても優柔不断な王様には見えなかった。

 キラキラ王子様のオリヴァーの父親なんだから、顔のつくりが美形でもおかしくないんだろうけど。

 

「……!」

 

 私のとなりで、セシリアがさっきの私とは別の意味で息を呑んだ。

 

「大丈夫?」

「思ったより、父に似ていて……びっくりしました」

 

 ほう……とため息をもらす。

 セシリアの父親と現国王は、本物と影武者の関係だ。本物によく似るようにと、選ばれて連れてこられた子供なのだから、髪と目の色が一緒なのは当然だ。しかし、彼らがすり替えられたのは赤ん坊の時。大人になった今でも似ているとは思わなかった。

 

「今日、お前たちを集めたのは他でもない。ある重罪人について、審議するためだ」

 

 すでに全員目的を知っているからだろう。

 国王の宣言を遮る者はいなかった。

 

「ギュスターヴ」

 

 国王に呼ばれ、ギュスターヴ・ミセリコルデ宰相閣下が前に出る。資料を手に、宰相閣下が審議を開始した。

 

「先日、王宮内の複数個所にて火災が発生。その隙をついて、王妹殿下クリスティーヌ様と、ハルバード侯爵令嬢リリアーナが襲われました。幸い、おふたりとも命は助かりましたが、クリスティーヌ殿下は骨折した上に火傷。さらに毒を仕込んだナイフで切り付けられ、生死の境をさまようことになりました」

 

 クリスが襲われたとは知っていても、そこまでの重症だとは思っていなかったらしい。

 貴族たちの驚きの視線がクリスに集まった。

 腕を吊ったままのクリスが苦笑する。

 

「殿下が今ここに立っていられるのは、事件当時リリアーナ嬢が適切な処置をしたこと。その後、薬学の権威と名高い東の賢者ディッツ・スコルピオの治療を受けたおかげです。亡くなっていてもおかしくはありませんでした。そのため、私はこれを殺人と同等の罪として裁くことを進言いたします」

「……王族殺しか」

 

 国王がぽつりとつぶやく。

 その場にいた貴族たちは、それぞれにどよめいた。

 今回事件の標的は私だったかもしれない。

 でも、その結果として王の妹であるクリスが傷つき、死にかけた。

 だからこの事件は王族への加害として扱われるのだ。

 

「提案を受け入れる。……進めてくれ」

「は。では罪人をここへ」

 

 ごとん、と重い音がして謁見の間正面の大扉が開かれた。

 頭からすっぽりとフードを被った黒衣の男が、女をひとり連れて入ってくる。濃い蜜色の髪に翡翠の瞳。ぼろぼろの姿だけど間違いない、地下道で私たちに襲い掛かってきた王妃の侍女、ローゼリアだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。