【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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生者に口あり

「うううううっ!」

 

 がたん、と大きく証言台を揺らして、ローゼリアがうなり声をあげた。さっきまでのしおらしい態度はどこへやら。

 黒衣のツヴァイが後ろから抑え込んでるから、身をよじる程度で済んでるけど、ロープを離したら最後、宰相閣下に掴みかかっていくに違いない。

 やばい。

 目が本気だ。

 しかし、宰相閣下は冷たくローゼリアを見据えた。

 

「何やら、言いたいことがあるようだな」

「うううっ!」

 

 猿轡を噛まされているから、まともな言葉はしゃべれない。

 しかし彼女が「王妃黒幕説」に異議を唱えたがっているのはよく伝わってきた。

 暗殺に失敗した彼女にとって、王妃の立場を守ることが、最後に残された使命なのだろう。果たさせてあげるわけには、いかないけど。

 

「宰相、罪人とはいえ、言いたいことのひとつもありましょう。何もしゃべらせずに、話を進めるのはどうかと思いますぞ」

 

 ローゼリアの様子を見てランス伯がまた意見する。

 宰相閣下は首をかしげた。

 

「では、ローゼリア自死の責任は、ランス伯がとっていただけると?」

「は? 自死?!」

「その者の口に詰め物を噛ませているのは、発言を封じるためではありません。舌を噛み切って自死するのを止めるためですよ」

 

 ぎょっとローゼリアを見る目が変わる。

 舌噛んで死ぬ、も物語ではよく聞く話だけど、本当にやりそうな人間に出くわすことって、まずないかならあ。

 でも目の前のローゼリアには、本当にやってしまいそうな危うさとすごみがある。

 裁判が始まるまで、ずっとコレの監視してたのか……。

 フランの心労を思うと、かわいそうになってくる。

 

「し……しかしだな……さすがに、王の御前でそのようなこと」

 

 ある意味最高のパフォーマンスだと思うけどね?

 ここで血みどろ殺人ショーやったら、それはそれで裁判どころじゃなくなって、王妃が命拾いすると思う。

 コツ、と宰相閣下が一歩前に踏み出した。

 

「ローゼリア……貴様の口の縄をほどいてやってもいい」

「うう……!」

「しかし、自死した瞬間、王妃の身が危うくなると知れ」

「!」

「私はすでに、王妃をお前の黒幕だと指摘した。すでに議論の焦点はお前と王妃のつながりへと移っている。ここでお前がただ自死したらどうなると思う? ほらやっぱりやましいことがあったのだ、と王妃が糾弾されることになるぞ」

「う……」

「死人に口なしに、なってしまうなあ?」

 

 にい、と宰相閣下が口の端を吊り上げた。

 いっそすがすがしいくらいの悪人顔である。

 そういやこの人、フランの父親だったわー。

 ハーティア王宮の政治を一手に握る辣腕宰相だったわー。

 ただの誠実なおじさまなわけがなかったわー。

 目をギラギラとさせながらも、ローゼリアの動きが止まる。言葉だけでローゼリアの自死の道を封じた宰相閣下はツヴァイに目くばせをした。

 ゆっくりと、罪人の口から猿轡が外される。

 はあ……と小さく息を吐いたあと、ローゼリアはごほっ、と勢いよく咳き込んだ。

 止められたにも関わらず、即自死を選んだのか、と周りに緊張が走る。しかし、ただ喉を整えていただけだったらしい。

 ローゼリアはきっと顔をあげた。

 

「私、ローゼリア・シュヴァインフルトは証言いたします」

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