【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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独立宣言

「貴様、何をねぼけている。ランスは私だ」

 

 ランス伯爵がズカズカと大股で報告した騎士に詰め寄った。

 

「私がここにいるのに、そんな世迷い事が宣言されるわけがないだろう」

 

 騎士伯爵に睨まれ、騎士は震え上がる。

 それでも彼は自身に課された報告の仕事を、放棄するわけにいかない。

 

「それが……ご子息の……ヘルムート殿が、宣言を出されたようでして」

「ヘルムートが?!」

 

 その場にいた全員の思考が、一瞬途切れた。

 なぜ、ここでヘルムートの名前が。

 騎士は報告書を握りしめながら、必死に言葉を絞り出す。

 

「シュゼット姫を女王とする、愛の千年王国を樹立する……と……」

 

 それでどうして、シュゼットの名前が出てくるのか。

 え? あのふたり一緒にいるの?

 シュゼットがランスの女王になるの?

 っていうか、愛の千年王国って何なの?

 短い報告のくせにツッコミどころがありすぎて、理解が追い付かない。

 

「なんっ……だ、それは……!」

「私に言われても困ります! 私はただ届けられた宣言書を、読んでいるだけですので」

 

 一介の騎士に求めるにはあまりに問題が大きすぎる。

 

「……言葉だけを拾えば」

 

 ぽつりと宰相閣下がつぶやいた。

 

「シュゼット姫を誘拐したヘルムートが、彼女を旗印としてランス領独立を宣言した、ということになるが」

「は……?」

 

 ランス伯爵は呆然とその場に立ち尽くす。

 

「反乱を起こした、ってことかしら?」

 

 王妃も訝しむ顔だ。彼女も予想外の事態らしい。

 国王陛下が、カツンと王笏の束で床を叩いた。

 

「審議は中止だ。至急ランス領反乱に対処せよ」

 

 さすがに、勇士七家のひとつが独立宣言とあっては、審議も何もない。先にそっちをどうにかしろ、という王様の命令は妥当だ。

 

「ヘルムートが……ランス家が反乱……?」

 

 ふら、とランス伯がよろめく。

 

「父上、しっかり」

 

 息子のグラストンがその体を支えようとした瞬間、がくんっ! とランス伯の体からいっさいの力が抜けた。そのまま糸の切れた操り人形のように、床へ倒れこむ。

 危ういところでグラストンが上半身を抱え、頭が床に激突するのを避けた。

 

「父上?」

「グォォ……」

 

 ランス伯は床に横たわったまま、大いびきをかきはじめた。

 支離滅裂な挙動に、広間にいた貴族たちがぎょっとする。

 

「……父上? こんな時にいびきなんて、しっかりしてください!」

「ダメ、待って!」

 

 そのまま体を揺さぶろうとしたグラストンを、私は思わず止めた。

 

「リリアーナ嬢?!」

「今頭を揺らしちゃダメ! そっと床に寝かせて、気道を確保! セシリア、手伝って!」

 

 慌てて駆け寄って、横向きに寝かせる。

 私もそんなに詳しいわけじゃないけど、これは多分、っていうか絶対ヤバい症状だ。

 

「ランス伯、ランス伯! 聞こえますか? 返事できますか?」

 

 何度か声をかけてみるけど、返事はない。

 完全に意識がなかった。

 

「誰か、ランス伯をそっとベッドに運んで。頭は絶対に揺らしちゃダメよ。それから、ハルバード侯爵邸に人をやって、東の賢者を連れてきて! 私の手には負えないわ!」

 

 でも、東の賢者の手に負えるとも思えない。

 不思議パワーで回復する医療魔法も、脳へのダメージはさすがに想定してなかったと思う……!




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