【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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事実確認

「まずは、ひとつひとつ事実確認を進めましょう」

 

 宰相閣下は、また書類を追加した。

 今度のは昔ながらの便せんだ。コピー用紙を見たあとだと、妙に分厚く見える。

 そこには、荒れた筆跡で文字が並んでいた。

 

「ヘルムートの書状には、シュゼット姫を女王とする愛の千年王国を樹立する、とありました。そして自身は王配として姫を支えると。ヘルムートとシュゼット姫が協力関係にあるかどうかで、今後の方針が変わります」

 

 宰相閣下は王子と、それから私たちを順に見回した。

 

「王立学園で共に学ばれていた皆さまに、お伺いします。ふたりは恋人関係にあったのですか?」

 

 私たちが作戦室に呼ばれたのは、彼らの関係性を確認するためだったらしい。

 王子が首を振った。

 

「いいえ、そんな素振りはありませんでした。ヘルムートがシュゼット姫と直接会話したことは、なかったように思います。……リリアーナ嬢はどう思う?」

 

 私も肩をすくめる。

 

「学園でも、離宮に越してからも、ずっとシュゼットと一緒でしたけど……シュゼットがヘルムートに話しかけたことなんて、ありませんでしたわ」

 

 私の隣でクリスがうむうむとうなずく。

 

「外交がやりたいって言ってただけあって、シュゼットに友達は多かったように思う。でもその中にヘルムートはいなかった気がするなあ」

「おそれながら……」

 

 今度は、フランが静かに発言した。

 

「私はシュゼット姫が王立学園に滞在する間、専属の調整役を務めておりました。手紙のやりとりなど交遊のすべてを記録しておりますが、そこにヘルムートの名前はありません」

「では本当に、接点がないのか?」

 

 目を丸くする国王に、息子の王子は神妙にうなずく。

 

「もちろん、同じ学園で学ぶ者同士、顔と名前くらいは認識していたと思いますが」

「発言、いいですか」

 

 ヴァンが手をあげた。国王がうなずいたのを確認してから、口を開く

 

「俺もケヴィンも、学園で一緒に学んでいた生徒のひとりです。ヘルムートがシュゼット姫に……というより、オリヴァー王子以外の人間と自発的に話することを見たことがありません」

「手紙の受け取りや、会食の調整など、王子が交友関係を広げるのを手伝いはしてていましたが、彼が自分のために行動することはありませんでした」

「だからこそ、シュゼット姫との関係以前に、王子から離れたこと自体が信じられないのです」

「あれはずっとオリヴァーとともに育ったのだったな。そうあれ、と命じたのは我らだが」

 

 国王の視線が、オリヴァーに映った。

 

「そもそも、あれはなぜお前の側を離れた」

 

 ぐ、と王子は言葉を詰まらせた。

 ヘルムートは王子の影。常に王子とともに行動するのが仕事だ。

 だから、彼は王子の管理下にあったと言っていい。

 王子には部下の不在を説明する責任がある。

 

「その……少し、思うところがあって……側近を整理しようと思ったんです」

 

 ややあって、王子がゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

 宰相閣下が不思議そうに王子の顔を覗き込む。事務的な表情とは違う、心配げな様子だ。

 

「前から、ヘルムートに不満があったのですか?」

「いいえ」

 

 王子は首を振った。

 

「ヘルムートは悪くありません。完全に、私の問題で……私の我儘で」

 

 王子は、はあ、と息をつく。

 

「王宮で火事が起きる直前、ヘルムートに側近の任を解きたいと相談したのです。その結果、言いあいのようになってしまって」

「それで本当に解任したのですか」

「いいえ、私の側近解任には、多くの手続きが必要なことはわかっています。だから、ひとりになりたいと言って、寝室から次の間に一度下がらせたのです」

 

 ぎゅっと王子は拳を握りしめる。

 

「火事の知らせを聞いて、次の間に声をかけた時にはもう、ヘルムートの姿はありませんでした」

「そんなに前から、いなかったの?!」

 

 王妃も目を丸くする。王子はますます肩を下げた。

 

「申し訳ありません。解任が私の判断だったこともあり、なるべくヘルムートの経歴に傷をつけたくないよう、彼の職務放棄についてはしばらく伏せていました」

「軽率な……」

 

 はあ、と王妃がため息をつく。王子は俯いてしまった。

 宰相閣下が王子をかばうように一歩前に出る。

 

「この件に関して、私たちも王子を責められません。反乱宣言が届けられるまで、私たちの誰も、彼の不在に気付かなかったか、気づいても調べようとしませんでした」

「それはそうなのだけど……あら? 火事の直前に姿を消した、ということはそのすぐ後には、シュゼットをさらっていたのよね」

「……時系列的には、そうなりますね」

 

 王妃の言葉に、宰相閣下もふむ、とうなずく。

 

「なぜ、そんなことになったのかしら」

 

 もっともな疑問である。

 宰相閣下も額に手を当てながらゆっくり考えを整理する。

 

「ヘルムートは、シュゼット姫の王配となることを望んでいます」

「望みは、己が主になることではないのね」

「だとすると……まさか、新たな主としてあおぐために、姫を求めた……?」

 

 オリヴァーの顔から、さあっと血の気がひいた。

 

「つまり、私が……ヘルムートを解任しようとしたせい……ですか……?!」

 




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