【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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再登場フラグ

「え? フラン?」

 

 状況を掴んだとたん、脳が一気にフル回転しはじめた。

 どうしてフラン?

 ここって、私の部屋だよね?

 それもベッドだよね?

 女子寮では添い寝したことも一度あったけど、こんな風に屋敷の自分の部屋でフランに触れられたことなんて、っていうかそもそもベッドルームに男の人がなんで。

 

「あれ……まだ、夢?」

「そういうことにしてもいいが、現実だな」

 

 優しい手が私の頭をなでる。

 間違いない、本物のフランの手だ。

 フランなでなでソムリエの私が間違うはずがない。

 

「なんで?」

 

 私はがばっと体を起こした。

 フランが苦笑する。

 

「顔が、見たくて」

「あー……」

 

 その気持ちはわかります。

 王都に残る私がこれだけ不安なんだもん。当事者のフランが、私に会いたいって思っても不思議じゃないよね。

 いや疑問に思ってるのはそこじゃなくて。

 

「どうやって、ここに入ってきたの?」

 

 自慢じゃないが、私はほうぼうから命を狙われまくりながら育ったご令嬢である。安心安全な生活を送るため、常に鉄壁のガードに守られてきた。

 特にこの屋敷にはお父様直属の護衛騎士十数名と側近が寝泊りしている。

 フランの実力なら護衛騎士の隙をついて忍び込むくらいのことはできそうだけど、さすがにジェイドとフィーアの目はごまかせないと思うのよね。

 ふたりは私とフランが親しいのは知ってるけど、逆にだからこそ寝室にまで入れたりしないと思うのよ。

 わけがわからず、じっとフランを見上げていたら、ぺろりと舌を出した。

 

「悪いが、手品の種は明かさない主義なんだ」

「それは私の専売特許―!」

 

 人のキメ台詞を勝手に使うな!

 ツッコミいれても、相手は悪びれもしない。かわりにぎゅうっと抱きしめられた。

 

「……っ」

 

 大きな体に包み込まれると、もう何も言えない。

 

「ああクソ……やっぱりお前はかわいいな」

「かわっ……」

 

 いきなり何を言い出すんだこの男は。

 こんな恥ずかしいセリフどんな顔して言ってるのか見てやりたいけど、胸に顔を埋めてるので身動きが取れなかった。

 頭の上から声だけが降ってくる。

 

「ランスも、邪神も、何もかも煩わしい……」

 

 それはひどく、かすれて疲れた声音だった。

 私を抱きしめる腕に力がこもる。

 

「このまま、お前を攫ってしまえたら、どんなに楽か」

「……フラン?」

 

 思わず顔をあげる。

 攫うって。

 それは。

 フラン片手で私の体を抱いたまま、頬をなでてきた。

 

「泣こうが喚こうが、誰にも見つからないどこかに閉じ込めて、俺だけのお前を味わってひと時の夢のままに果ててしまえれば」

「フ、フラン、まって」

「わかってる。そんなことをしたら最後、お前はもう二度と……こんな風に笑ってはくれない」

 

 フランは意識して口の端を上げる。

 青い瞳は揺れていた。

 フランの苦悩を感じて、胸が締め付けられそうになる。

 無理もない。大災害が起きてから今まで、フランは働きづめだった。その上ランス城への出兵だ。消耗しないほうがおかしい。

 彼は万能の守護者じゃない。

 どんなに有能でも、どんなに強くても、所詮二十歳そこそこの若者だ。

 いっぺんにあれもこれもと背負わされて、つぶれそうになるのはむしろ当然。

 私はぎゅうっとフランの体を抱き返した。

 私は何をすればいい?

 何をすれば、この人を助けられる?

 きっとフランが求めているのは、癒しだ。

 私が与えると言ったら、きっと満足して受け入れるだろう。

 でも。

 それは本当に与えていいのだろうか。

 今のフランはパンパンに詰まった風船と同じだ。

 下手に空気を抜いてしまうのは、危険なのではないだろうか。

 緩んだまま戦場に送り出したりしたら。

 私はゆっくりと息を吐く。

 これからすることは、残酷かもしれない。

 もしかしたら、ぎりぎりで耐えてるフランにとどめを刺すことになるかもしれない。

 それでも、私がフランにすべきことは、きっとこちらだ。

 

「しっかりしなさい、フランドール!」

 

 ぱあん、と恋人の頬を張り飛ばした。

 

「……っ?!」

「何弱気になってるのよ、あなた、女侯爵の夫になるんでしょ? この程度のことでいちいちつまずいてどうするのよ」

 

 言い出したら止まらない。

 私はフランの胸倉をつかんで叫ぶ。

 

「私は、素敵な家族と愛する夫と一緒に、ニコニコ平和にハルバードで侯爵をやりたいの。駆け落ち先でひとりぼっちで死ぬなんてまっぴらごめん! そんなことしたら、どんな手を使ってでも逃げ出すからね!」

「……お前なら、やりかねんな」

 

 ふん、と私は行儀悪く鼻を鳴らす。

 

「私の笑顔をかわいいって思うんなら、グダグダ言ってないで、さっさとヘルムートの首とって帰ってきなさい。その時が一番晴れやかな笑顔だと思うわ」

「お前、戦争をなんだと……」

「わかってるわよ、危険なことくらい。あなたが死ぬかもしれないってことも」

 

 私はずい、とフランに顔を寄せる。

 

「でも、あなたが死ぬなんて許さない」

 

 我ながらむちゃくちゃなことを言ってる自覚はある。殺し合いの戦争に絶対はない。私が命じたって、死ぬ時は死ぬのだ。

 それでも言わずにはいられなかった。

 

「だいたい、あなたが戦場で死んだらどうなると思うのよ」

「どう、とは?」

「私が王子の妻になるわよ」

 

 ひゅっ、とフランが息を呑む音が聞こえた。

 

「私があなた以外の男に奪われて、あなた以外の子を産むのに、耐えられる?」

 

 私を抱きしめていた手に、再び力がこもった。

 ちょっと痛い。

 

「それが嫌なら、さっさと行って、さっさと奪いに戻ってきなさい!」

 

 命じた瞬間、食いつくようにキスされた。

 強烈な衝撃に一瞬視界が揺れる。

 顔をあげたら、フランがにいっと凶悪な笑みを刻んでいた。

 

「ほんっとうに……お前はひどい女だ」

 

 ひた、と両手で顔を包み込まれる。

 

「覚悟しろ」

 

 何を、と問いただすことはできなかった。

 サファイアブルーの瞳が怖い。

 

「俺は必ず戦場から舞い戻る……。そして、今度こそお前を奪いつくすだろう」

「望むところよ」

 

 もう一度私の唇にキスして、男は闇に溶け込むようにして去っていった。

 残された私はベッドの上で呆然とつぶやく。

 

「やる気を出させるのは成功したけど……、これ悪役の捨て台詞じゃない?」

 

 絶対再登場するフラグだから、いいけどね!

 




というわけで!
ここで「クソゲー悪役令嬢」王宮大法廷編完結です!

全然途中って感じですが、一応の区切りはついているので!
次章は「ランス城戦闘編」かつ、「大法廷後始末編」な感じです。
今章と次章はふたつあわせて前後編な構成になっています。今回発生した伏線や展開の回収は次章で!!!

しばらく「無理ゲー」と「クソゲー」のサンドイッチ連載の予定です。
次が「無理ゲー」の続きで、その次が「クソゲー」の続きになるかと。

がんばって製作しているので、お楽しみに~!

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