【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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王族の矜持(フランドール視点)

『私がハーティアで命を落としたら、母国キラウェアは黙っていません。貴国とは深刻な戦になるでしょう。私は王女として、両国の友好の継続を望みます。そのためには必ず、生きて帰らなくてはなりません』

 

 王族は国のために生まれた存在だ。危機に陥ったからといって、軽々に死を選ぶことは許されていない。たったひとりで敵地に囚われ、不安でたまらないだろうに。それでも少女はまっすぐドローンに訴えかける。

 

『お願いします、ここから助け出してください』

 

 彼女の姿は正しく、キラウェアの王族だった。

 

「もちお、シュゼットにメッセージを返すことはできるか?」

『申し訳ありません。こちらのドローンにスピーカー機能は搭載されていません』

「……そうか」

 

 気丈にふるまう姫君のために、何か一言でも伝えて励ましてやりたいのだが。白猫は小首をかしげたあと、新たな手段を提案する。

 

『上部に小型ライトがあります。明滅させて、メッセージのかわりにするのはいかがでしょうか?』

「何もリアクションがないよりはいいだろう。やってくれ」

 

 パソコン上でピピッと耳慣れない音がして、ドローンのライトが明滅した。瞬間、シュゼットの顔がはっとしたものになった。ライトの光に気が付いたのだろう。

 

『それは、お返事……ですか?』

 

 シュゼットは一瞬目を伏せて考えこむ。それから恐る恐る、こちらをうかがうようにカメラを見上げてきた。

 

『はい、なら一度、いいえなら二度、光をください』

「もちお、イエスで答えてくれ」

 

 ピッ、と音がしてまたライトが光る。それを見てシュゼットの瞳が瞬いた。ドローン越しにこちらと意思疎通ができたことに、顔を輝かせる。

 

『助けて、くれますか』

「イエスだ」

 

 ピッ、とまた音と共にライトが光る。

 

『……っ!』

 

 答えを返されて、安心したのだろう。シュゼットはやっと年相応の少女のように顔をほころばせた。

 

「何がなんでも、救い出さねばならんな」

 

 俺の言葉に、その場にいた全員がうなずく。ひとり閉じ込められる恐怖など、いたいけな少女が体験していいものじゃない。一刻も早くあの部屋から救出しなければ。

 

「もちお、もう一度城内を周って……」

 

 追加の指示を出そうとした瞬間、映像が途切れた。

 

「な……」

「もちお、姿勢制御!」

『はい!』

 

 ジェイドがとっさに指示を飛ばす。映像はガタガタと激しく揺れたあと、不意に安定した。映し出されているのは、先ほどよりずっと低い中庭だ。映像が乱れている間に、かなり下へと落ちてきたらしい。

 

「どうして……?」

 

 周囲を見回すように、ドローンがその場で旋回する。

 カメラが城壁に向けられた瞬間、異様な光景が映し出された。

 

「……!」

 

 アルヴィンが思わず息をのむ。彼がそうしたくなる気持ちはよくわかる。俺も以前に似たようなものを見ていなかったら、声をあげていただろう。

 壁には何人もの人間が、蜘蛛のように貼り付いていた。

 手と足だけで壁を登るという異常行動をしているというのに、彼らの顔に表情はない。ただただ、うつろな瞳をこちらに向け続けている。その肌は一様に血の気がうせて青白かった。

 

 




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