【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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彼らが無謀な籠城戦を始めた理由(フランドール視点)

「ヘンドリックに……ルシアン? アーガイルまで、どうしてお前たちが」

 

 グラストンが呆然と彼らの名前を呼ぶ。

 彼らの行動の理由は推測できたが、すぐには口にできなかった。代わりに指示を出す。

 

「ジェイド、撤退だ。すぐにドローンを離脱させろ」

「はいっ!」

 

 ジェイドが手を振ると同時に、ドローンが急上昇を始める。が、次の瞬間、何か紐のようなものが映りこんで画面が真っ暗になった。

 ピー……と耳障りな高音が響き、すぐに途切れた。

 モニターに残った白猫が首を振る。

 

『通信途絶。ドローンが破壊されたようです』

「わかった、作戦終了だ」

 

 宣言してから、はあ、と大きく息を吐く。これ以上の作戦継続は不可能だ。

 

「……今のは……何だったんですか?」

 

 グラストンがパソコンのモニターを見つめながら、立ち尽くす。その顔は、さきほどカメラに映った人影よりも青い。

 この状態のグラストンに、現実を突きつけるのは酷な気がする。

 だが引き延ばしたところで状況は変わらない。

 俺は小さく息を整えてから、彼らの正体を告げた。

 

「生ける屍……アンデッドと呼ばれる存在だな」

「魔の森に現れたという、あれですか」

「そうだ」

「……!」

 

 断言され、グラストンが息をのむ。

 

「単純なゾンビの他に、吸血鬼も紛れているようだな。ドローンを叩き落としたのは、吸血鬼が獲物を捕らえる触手だ」

 

 忘れもしない。

 女神の作った幻想ダンジョンで遭遇したモンスターだ。ヤツは、その触手で邪神の化身ユラを捉えて生気を吸うことで、無限に回復する攻略不可の化け物となった。

 

「外部との接触を一切断ちながら、ランス城が機能している理由がわかった。すべての騎士が死んでいるからだ。死者には水も食料も必要ない」

 

 グラストンが、わなわなと震える手で顔を覆った。

 

「ずっと、疑問だったんです。ランス城には俺が生まれる前から仕えている、忠臣の部下が何人も詰めています。ランスの子とはいえ、まったく関わってこなかったヘルムートが姫君を連れて帰ってきたところで、誰も従うはずがないだろうと……」

 

 彼はがく、と膝からその場に崩れ落ちた。

 

「彼らの意志は関係なかった……。みんなとっくに死んでいて……その体を、利用されていたんですね……」

 

 一族を支える家臣を城ごと全員殺された当主は、涙を流すこともできずに頭を抱えた。

 

「……さきほど見たシュゼット姫も死者なんでしょうか」

 

 アルヴィンがぽつりと疑問を口にした。

 襲撃されるまで、俺たちはアンデッドの可能性を一切考慮に入れてなかった。それは、カメラごしとはいえ、モニターに映し出されたシュゼットが自然に生きているように見えたからだ。

 もちおがふさふさの白い尾をゆっくりと振る。

 

『画像を解析しました。シュゼット姫には、まばたきや呼吸など生命活動を示す動作が見られます。99パーセントの確率で、生者と判断します』

「それは、断定とほぼ同義だな」

「彼女が生きているのなら、まだ希望はありますね」

 

 アルヴィンが顔を歪める。笑い顔を作ろうとしてうまくいかなかったらしい。

 

「グラストン、作戦を立てるぞ」

 

 俺は立ち上がると、うずくまるグラストンの肩を叩いた。びくっと大きな体が震える。

 残酷だが、指揮官として彼に悲しみにひたる時間は与えてやれない。

 

「殲滅戦だ。姫君を奪還し、残された騎士すべてを焼き払う」

 




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