【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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再審議

 再び訪れた謁見の間は、以前よりずっと静かだった。

 王妃の進退をかけた、大法廷だというのに出席者は前回の半数ほどしかいない。特に、王妃派に所属する貴族の姿はまばらだ。今回の審議が彼女にとって分の悪いものだと、感じ取っているのだろう。

 まったく雰囲気が変わってしまった謁見の間で、私はもくもくと審議の準備をする。

 

「それが、今回の新兵器か?」

 

 声をかけられて振り向くと、眼鏡をかけた銀髪の少年がいた。快活そうな少年の隣には、いつも通り銀髪の少女の姿がある。ヴァンとクリスだ。先日やっと抜糸を終えたクリスは、自由になった右手を振って笑う。

 

「そんなところ。ヴァン達は、今日もクレイモア伯の名代?」

「そ」

 

 家紋の刻まれたブローチを胸に着けて、ヴァンはにやっと笑う。

 

「だって気になるじゃねえか、お前らがどうやってあの女狐を追い詰めるのか」

「ちょっと面白がってない?」

 

 一応、国政を左右する重大審議なんだけど。

 

「見世物になっちゃうのは、もうしょうがないんじゃないかな」

 

 横から柔らかな声が入ってくる。ヴァン同様、モーニングスター侯爵の名代として登城したケヴィンだ。実家にいる侯爵と通信するためだろう、彼もスマートグラスをかけている。

 

「まあ、パフォーマンス込みで準備はしてるけどね」

 

 私は機材を予定した場所に置く。そのついでにずれてしまった眼鏡を指先で戻した。

 

「今日はリリィも眼鏡なんだね」

「もちおと連携する必要があるからね。途中で通信が途切れないよう、Wi-Fiルーターも設置したわ」

「わい?」

 

 クリスがきょとんとした顔で首をかしげる。

 

「通信を中継する機械よ。ルーターに衛星との通信をさせることで、謁見の間内での通信を安定させるの」

「ん……通信の、通信?」

 

 スマホの扱いに若干慣れているヴァンも首をかしげてしまった。今のは私の説明が悪かったかもしれない。

 

「ざっくり言えば、置いておくだけでスマホがつながりやすくなる機械よ。もちお、ヴァンとケヴィンのスマホも、Wi-Fiネットワークにつなげてあげて」

 

 私がスマートグラス越しに命令すると、視界の端でもちおがこっくりうなずいた。ネットワークに追加されたことが、ふたりのスマホに通知される。

 スマートグラス越しに状況を確認して、ヴァンがにやっと笑った。

 

「お、確かに接続が安定したな。これって、うちの家にも置けたりしねえ? 部屋で操作してると、結構途切れるんだよな」

 

 携帯電話基地局のないこの世界だと、ネットはすべて通信衛星頼みだからなあ。部屋の奥とか、地下に入っちゃうと、通信できなくなっちゃうんだよね。

 

「それはまた今度ね。スマホに比べてWi-Fiルーターは数が少ないの。宰相閣下の部屋とか、フランの作戦室とか、通信が大事な場所が優先よ」

「ならしゃーないか」

 

 神の超技術は数に限りがあることは理解してくれているんだろう。ヴァンはあっさりと引き下がった。

 

「リリィ様、国王陛下たちが入室されるそうです」

 

 フィーアを連れたセシリアがやってきた。今回も彼女には、私の侍女役として出席してもらっている。真の王位継承者として、この裁判の行方は見届けるべきと思ったからだ。

 

「こっちの準備も終わったから、あとは始めるだけね」

 

 見ると、宰相閣下とマリィお姉さまもすでに入室している。あとは国王一家がそろったら、審議開始だ。

 奥の扉から、国王陛下とオリヴァー王子が姿を現した。

 そして……。

 

「なぜこんな茶番劇を?」

 

 王妃のヒステリックな声が謁見の間に響いた。




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