【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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ユキヒョウ

 すうっと空中を移動して、高く伸びた管制室と思われる部屋に近づく。

 大きな鋼鉄のドアの前まできて、停止した。

 ここから中に入れということらしい。

 

「先に行くわね」

 

 私が前に立つと、ドアは勝手にすっと開いた。

 中はやはり管制室だったらしい。大きな窓とモニター、そしてオペレーター用のモニターとテーブルがずらっと並んでいる。

 指揮官用の席も部屋の後方に取り付けられていた。

 

「大丈夫そうよ、入ってきて」

 

 私が声をかけると、ゴンドラにいたメンバーが管制室にやってきた。

 

「これはまた面妖な……軍の作戦室に似てはいるが」

 

 SF的な風景にはなじみがないんだろう。宰相閣下をはじめ、全員が不思議そうに周囲を見ている。ケヴィンが肩をすくめた。

 

「リリィ、使いかたわかる?」

「全然。さすがにこんな専門的な機器は手に負えないわ」

 

 小夜子は所詮、病院育ちの箱入り娘だ。ゲームやスマホ程度はわかっても、軍事施設の動かし方まではわからない。

 

「ようこそおいでくださいました」

 

 柔らかな男性の声が響いた。

 振り返ると、何か白い大きなものが部屋に入ってくる。それもひとつじゃない、全部で三つだ。

 

「ユキヒョウ……?」

 

 白い何かには、ネコ科特有の丸い頭と三角の耳がついていた。そして、全身に散らばった黒い模様に長いしっぽ。図鑑や映像でしか見たことのない、孤高の猛獣ユキヒョウだ。

 突然猛獣に遭遇したというのに、恐怖は感じなかった。ゆっくりと落ち着いた様子で歩いているし、なぜかそれぞれ、青、赤、緑のリボンを首にかけていたからだ。

 サイズは大きいけど、飼い猫っぽい雰囲気だ。

 ユキヒョウたちはセシリアの前まで来ると、ちょこんとそろってお座りした。

 

「はじめまして、私たちはこの空中母艦『乙女の心臓』の管理AIです。当代聖女セシリア、私たちはあなたを歓迎します。

「えーあい……、もちおのような存在ですか?」

 

 先頭にいる青いリボンのユキヒョウがうなずいた。

 

「はい。管制施設のほうのAIには、かわいらしい姿と名前を与えてくれましたね。私どもは、彼の上位互換と捉えてくださればよろしいかと」

 

 青リボンのユキヒョウは、仲間に視線をやる。

 

「赤いリボンの名は『アルタイル』、主に火器管制を担当しています。緑のリボンの名は『ベガ』、主にインフラ管理を担当しています。最後に青いリボンの私の名は『デネブ』、他二体を統率し、この母艦全体の管理をしています」

「夏の大三角かな?」

 

 突然飛び出してきた中二病ネーミングセンスに、思わずぽろっとツッコミが出てしまった。いやだって、アルタイルにベガにデネブって。

 ふ、とデネブがヒゲをそよがせて笑う。

 

「なるほど、あなたが今世の転生者ですか」

「えっ……なんでいきなりわかるの」

 

 くつくつと、青リボンのユキヒョウは笑っている。AIのはずなのに、その表情は妙に人間くさい。

 

「仕様上、夜空の星々はどの世界でも同じですが、つけられた名前はそれぞれ違います。私どもの名前を聞いて夏の大三角を想起するのは、先代聖女と同じ世界を知る、転生者以外にないかと」

「先代って、同じ世界出身だったんだ」

 

 神の超技術には、スマホとかドローンとか、前の世界で見た機械と同じものが多かった。なぜこんなに? と思ってたけど、前世の世界を共有していたというなら納得だ。

 

「それで? あなたがたはなぜ、この『乙女の心臓』の封印を解いたのですか?」

 

 前世の記憶に引っ張られていた私は、デネブの声に我に返った。あれこれ前のことを考えてる場合じゃない、今すぐ助けないといけない人がいるのだ。

 

「実は緊急事態なのよ、デベブ……」

 

 噛んだ。

 慌ててしゃべるとろくな事がない。

 デネブはふ、とまたヒゲをそよがせた。

 

「ラテン語由来の名前ですからね、発音しづらく感じるのは当然です。どうぞお気軽に『ディー』とお呼びください」

「あ、ありがとう」

 

 私は息を整えて、デネブ改めディーに話しかけた。

 

「ディー、東の国境に巨大なサイクロプスの群れが出現したの。人間の騎士たちだけじゃ太刀打ちできないわ。白銀の鎧を復活させて、救援できないかしら」

 

 ディーはすっとアイスブルーの瞳をセシリアに向けた。私の命令に従ってよいのか、という意思表示だろう。

 セシリアはこくこくとうなずいた。

 

「転生者であるリリィ様には、私では手に負えない超技術の管理をおまかせしています。彼女の言葉は私の言葉として、従ってください」

「かしこまりました。リリアーナ・ハルバードを管理者のひとりとして登録します」

 

 こく、とうなずいてまたディーがこちらを向いた。

 

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