【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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白銀の鎧『ランス』(フランドール視点)

「……白銀の、鎧?」

 

 ジェイドが呆然とつぶやいた。

 身の丈十メートルを超す巨体、全身を覆う白銀。手には金に輝く長柄の槍を持っている。

 あの姿は、見たことがある。女神の管制施設に収められたカタログに載せられていた。

 

「ランス家の象徴、『ランス』だ」

 

 なぜヘルムートが籠城先にわざわざランス城を選んだのかがわかった。

 最終兵器として、『ランス』を持ち出すためだったのだ。

 

『シュゼットぉ……さ、まああぁぁ!』

 

 白銀の鎧は、甲高い声で雄たけびをあげた。

 

『シュぜットォ、さマは……どこだァァ!!!』

「不在に気付いたようだな」

「そのようです」

 

 俺は騎士たちを振り返った。

 彼らは困惑の表情で、じっと『ランス』を見上げている。

 それもそうだろう。白銀の鎧といえば、ハーティア建国の象徴であり、正義の象徴である。狂った逆賊とはもっとも相いれない存在だ。

 刃を向けていいのか、そう思う者も多いのだろう。

 だが、あれに乗っているのは邪悪な存在だ。

 ひゅっと『ランス』が金色の槍を振りかぶった。ぞっと悪寒が走る。

 

「全員退却だ! 逃げろ!」

 

 その叫びが届いたかどうか。

 確認する間もなく槍が叩きつけられ、軍勢が割れた。精強なはずの騎士たちが、まるでゴミくずのように宙を舞う。

 いっせいに悲鳴が上がった。

 

「逃げろ! これは命令だ! とにかく散開して距離をとれ!」

 

 言いながら俺自身も指揮所から駆け出す。

 騎士たちにわかりやすいよう、指揮所は中央に据えていた。このままではいい的だ。

 

「退却だ!」

 

 叫びながら走る俺に、白いマントを羽織った魔法使いが並走する。律儀な従者はこの先もつきあってくれるらしい。

 

「フランドール様、作戦はありますか?」

「ない! あんなものとまともに戦えるか!」

 

 我ながら指揮官として最低な台詞だと思う。

 だが、それ以外に言いようがない。人間が神の兵器に勝てるわけがないのだから。

 走りながら、スマホをコールする。

 

「こちらフランドール! 誰でもいい、聞いてくれ。ランス城の地下から、白銀の鎧『ランス』が出現した! 周囲を破壊しながら暴れまわっている。至急、救援を……」

 

 言葉の途中で、ひゅっと何かが風を切る音がした。

 とっさに頭を抱えて転がる。

 

「ぐ……あっ!」

 

 衝撃が体全体を襲った。

 何かが直接当たったわけではない。すさまじい空気の衝撃だけで吹っ飛ばされたのだ。

 顔をあげると、ついさっきまで走っていた地面が大きくえぐれていた。何かがとんできて炸裂したようだ。

 ぶら、と視界を眼鏡が遮った。レンズがすっかり割れてしまっている。

 振り返ると『ランス』がまだ武器を振り回していた。金色の槍は、ただ叩きつけるだけでなく、光る魔力の弾をばらまいているらしかった。

 

「フランドール様、お怪我は」

「大事ない」

 

 ジェイドが声をかけてきた。

 彼も余波をくらったのだろう。眼鏡がとんで、マントが泥だらけになっていた。

 

「行くぞ」

「どちらに?」

「グラストンとシュゼット姫のところだ」




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