【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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乙女ゲーム的いちゃらぶ展開

「ほっ……報告します! ランス城内のチェックすべて完了。アンデッド、吸血鬼ともに元の死体に戻っていることが確認されました」

 

 若い騎士が背筋を伸ばして報告した。フランが顔をあげる。

 

「報告ご苦労。ヘルムート死亡と同時に、すべてのアンデッドが停止したことから考えると……アンデッドたちの呪いの主はヘルムートひとりだったようだな」

「そ、そのようで……」

「死体を放置しては疫病の原因になるし、ふたたびアンデッド化される可能性もある。一か所集めて荼毘に付せ。遺骨は司祭立ち合いのもと丁重に埋葬するように」

「は……」

 

 指示を出されているのに、騎士はどこか上の空だ。フランの青い瞳が騎士をじろりと睨んだ。

 

「死体の火葬と埋葬だ。聞いているのか?」

「は、はいい……! か、かしこまりましたっ!」

 

 騎士はバタバタと大急ぎでその場を去っていった。

 フランはまた手元の書類に目を落とす。

 

「城内については問題ない。城外に展開していた騎士たちの収容が急務だな。……敗残兵がすべて死体になったぶん、捕虜等の対処が必要ないのは楽だが」

 

 そんなことをつぶやきながら、書類に何かを書きつける。デスクには指示書が次々に積み重ねられていった。その間に、騎士たちがいれかわり立ち代わりやってくる。

 彼が今いるのは、ランス城の中。それも上級騎士の執務室だ。

 ランス城を外から攻めていたはずのフランが、なぜこんなところにいるのか。それは白銀の鎧『ランス』のせいである。

『ランス』の金の槍が叩きつけられたことで指揮所のテントは全壊。そのほか、王国軍の設備の多くが破壊されてしまった。建て直そうにも、資材ごと燃やされてしまっている。

 一から設営し直すよりは、まだ無事だったランス城の建物を使ったほうが早い、ということになり、出入りしやすいこの執務室が臨時指揮所になったのだ。

 シュゼットを不快にさせないためだろうか。城の中心部は驚くほど綺麗だった。汚れはおろか、匂いすらない。ついさっきまでアンデッドが支配していたとは思えないほどだ。

 執務室のデスクに陣取ったフランは、てきぱきと戦後処理を進める。

 膝に私を乗せた状態で。

 そう。

 この男は、すべての作業を私を抱っこしたまま行っていたのだ。

 婚約者とはいえ女の子を膝に乗せたまま、大真面目で執務をする軍の総大将って何なの。

 公私混同甚だしすぎる。

 そりゃー若い騎士も上の空になるってものである。

 私が彼の立場だったら全力でツッコミいれてると思う。

 一応室内には、ジェイドとツヴァイも控えているんだけど、彼らに助けを求めようとしたらさっと視線をそらされてしまった。

 フランと私の間にはさまりたくない、ってことなんだろう。

 薄情者―!

 気持ちはわかるけど!

 

「ね……フラン、ずっとこんな体勢じゃ疲れるでしょ。一度降ろしてくれな」

「断る」

 

 食い気味に拒否されてしまった。

 

「でもほら、やっぱり一介の令嬢が軍の執務室にいるのって、問題じゃない。別室で待機してたほうが」

「要人ひとり警備するのに何人必要だと思う。この忙しいときに、別行動して人員を割かせるな」

 

 つまり、人員温存のために一緒にいろと。

 

「だったら、シュゼットと一緒にいればいいんじゃ……」

 

 姫君と私なら重要度がほぼ同じである。別室で警護されているシュゼットと合流すれば追加の警備員はいらないのではないだろうか。

 しかしフランは静かに首を振る。

 

「姫君は今のうちにグラストンと婚姻の話を進めておく必要がある。彼らの邪魔をするな」

「あのふたりいつの間にそんなことになってるのよ」

「知らん」

 

 私のすぐそばでフランが首を振る。彼も預かり知らぬ事態だったらしい。

 

「だが、姫君の決断は正直ありがたい。キラウェアの姫君を迎えるとなれば、国としてもランス家を支援しやすいからな」

「それはそうなんだけどね」

 

 経緯がさっぱりわからないのはひっかかる。シュゼットを直接助けたのはグラストンだったらしいから、吊り橋効果とかそういうアレなんだろうか。しかし、結婚を宣言するシュゼットはぴかぴかの笑顔だった。本人が幸せそうなら、もうなんでもいいのかなあ。

 

「別室待機がダメなら、せめて降ろして……」

「ん」

 

 言葉は、フランの唇に遮られた。

 お、お前……!

 キスで黙らせるとか、どこの乙女ゲーキャラだよ! 現実でそんなことやる人間がいるとは思わなかったよ!

 私が固まっている間に、フランはまたさらさらとペンを走らせる。

 

「もうすぐ終わるから、おとなしくしていろ」

「なっ……」

 

 おとなしくって何!

 現在進行形でおとなしくないのは、そっちでしょうが!

 反論の言葉を探しているうちに、フランは指示書を書き終えた。数枚をまとめて、ツヴァイに差し出す。

 

「これを、各所に配って指示を」

「かしこまりました」

 

 さらに、残った書類をジェイドに渡す。

 

「お前はこっちの処理だ。やれるな?」

「……わかりました」

 

 フランはデスクにペンを置くと、私を抱えなおした。

 

「俺は少し仮眠をとる。緊急の時には声をかけろ」

 

 それはつまり用がなければ声をかけるなってことだ。仕事を与えて従者たちをさがらせたフランは、私を抱えたまま立ち上がった。

 

「あのう……休むなら、私は別室に行っても……」

「もちろん、お前も一緒に決まってるだろう」

 

 ですよねー。

 なんとなく、というか、しっかりはっきり嫌な予感がしてるのだけど、抱っこされているので逃げ場がない。

 フランは執務室を横切ると、隣の部屋につながるドアをあけた。

 そこには簡素なベッドと、サイドボードが置かれている。

 どうやら、執務室に詰めている騎士用の仮眠室のようだ。

 フランは私をベッドの上に降ろした。

 

「ちょっと……」

 

 体を起こそうとしたら、フランの大きな手に遮られた。

 のしかかられて、また逃げ場を失ってしまう。

 私の体をまたいで膝立ちになる、つまり馬乗りの状態でフランが見下ろしてきた。

 なんなの、この体勢。

 それでどうしてフランは、上着を脱いでるのかな?

 

「何考えてるの」

 

 私の問いに、フランはまたにやりと笑った。

 

「これからどんな目にあわされるか、わからないほど子供じゃないだろう?」

 

 そうですけどね?

 心の準備ってものがあると思うの!!

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