【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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悪役令嬢は幸せになりたい
侍女との再会


「ご主人様!」

 

 ジェイドを連れてランス城の中庭に出て来た私の所へやってきたのは、フィーアだった。気が急いているのか、彼女にしては珍しい早足だ。

 

「ご苦労様」

「はい。ご主人様がご無事でよかったです」

 

 私は上空を見上げた。

 そこにはランス城よりも巨大な空中母艦『乙女の心臓』があった。重力に引かれて落ちるでもなく、風に流されるでもなく、空飛ぶ城はそこに有り続ける。どういう理屈かはわからないが、とにかくあの巨大な鉄の塊は、周りに影響を与えることなくその場に浮いていられるらしかった。

 空中母艦の複数個所から蜘蛛の糸のようにエレベーターやエスカレーターが地上へと伸びている。フィーアはあれを使って降りてきていたらしい。

 

「セシリア達は上?」

 

 たずねると、フィーアはこくりとうなずいた。

 

「セシリア陛下は、『乙女の心臓』のコントロールルームにいらっしゃいます。宰相閣下は貴族たちをまとめるために、ハーティアの王城に残られました。こちらに母艦を移動させたのは、戦闘の後始末と破損した銀の鎧『ランス』の回収のためです」

「ミセリコルデでコクピットを破壊したけど、ほとんどの機能は残ってるものね。修理して再利用したほうがよさそう」

 

 幸い、ランス家のパイロット候補はまだ生き残っている。弟が最期を迎えた場所、と考えるとかなり複雑な気分になるだろうけど、使ってもらうしかないだろう。

 

「フィーアはどうやって、『乙女の心臓』に?」

 

 私たちが封印を解いた時、空中母艦には私達勇士七家の末裔しか乗っていなかった。そこからフィーアが降りてきたということは、発進前に何かしらの指示があったに違いない。

 

「セシリア陛下のためです」

 

 フィーアは静かに説明を加える。

 

「乙女の心臓を出航させるにあたり、艦の運用や、セシリア陛下の護衛のために、百名程度の近衛や文官が同乗することとなりました。しかし、王家と関わりなく育ってきた陛下にとって、彼らは今まで一度も会ったこともない男性たちです」

「おびえるセシリアの顔が目に浮かぶわ」

 

 今でこそ女王という権威の頂点に立っているけれど、セシリアはもともと引っ込み思案な普通の女の子だ。近衛とはいえ見知らぬ男性に取り囲まれたら、恐怖しかないだろう。

 

「そこで、セシリア陛下と面識があり、護衛役もこなせる侍女ということで、私が同乗することになったのです。勝手ながらアルヴィン様に許可をとって、ハルバード侯爵邸につとめるメイド数名にもついてきていただきました」

「いい判断と思うわ。王城のメイドも質は高いでしょうけど、知らない人に身の回りの世話をされるのは、ストレスでしょうからね」

 

 立場の変化でただでさえ負荷がかかっている。生活面のストレスは極力減らしてあげたほうがいいだろう。

 

「早速、セシリア陛下の御前にご案内いたしますね……あら?」

 

 案内のために身を翻そうとして、フィーアは足を止めた。

 

「胸元のブローチが曲がってしまっています。お直ししますね」

「あ、それは」

 

 侍女のお仕事として私の服を整えようとしたフィーアはブローチの裏を見て手を止める。

 

「変ですね、金具が曲がっています……」

「……うん」

 

 私はゆっくりとうなずいた。

 緊急の呼び出しでフランが部屋から出ていったあと、身なりを整えようとして気づいたことだ。胸元のリボンを留めていた薔薇のブローチの金具が『なぜか』曲がっていて、どうがんばってもナナメにずれてしまうのだ。着替えなんか持ってきてないし、つけてないよりはマシ、と無理やりリボンをまとめたけど、やっぱり不格好に見えてしまう。

 とはいえ、『なぜ曲がったのか』については説明しづらい。

 私が口ごもったのを見て、勘のいい側近は一瞬で答えにたどりついた。

 さあっと顔を青ざめさせる。

 

「ご主人様、まさか!」

「いいいいい、いや、何もない! 何もなかったのよ!」

「何もなくて、女子のブローチが引きちぎれたりしません。ジェイド、あなたがついていながら!」

「あれはボクにだって止めようがないよ!」

「同意の上のことだし、本当になにもなかったから!」

 

 言ってていたたまれない。

 しかも、未遂だったのがさらにいたたまれない。

 あんなタイミングで『乙女の心臓』が到着しなくてもいいじゃない。私を単身白銀の鎧に乗せて送り出したものの、やっぱり心配になって追いかけてきてくれたセシリアたちの気持ちはうれしいんだけどね?

 

「……この件については、これ以上追及しないで」

「かしこまりました」

 

 ため息ひとつついたあと、フィーアは侍女の仮面をかぶり直した。

 

「改めて、陛下の御前にご案内いたします」

「お願い」

 

 私達はそろって『乙女の心臓』の搭乗エレベーターへと向かった。





ついに最終章の連載開始です!
広げに広げた風呂敷を畳む時がついにきました!

応報して収束する因果の行く末をご覧あれ!

そ! し! て!
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」が2026年7月31日に発売されます!

めちゃくちゃ面白いので、よろしくお願いします!
できれば予約して、買って!!
詳細は活動報告に!

皆さまの応援が作品の寿命を延ばします!!!
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