【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
あっけにとられる私達の前で、シュゼットは早口に話を進める。
「ハーティアの王が正式に認めた縁談なら、キラウェアのお父様も無下にはできません。一度話し合いのテーブルにつかせさえすれば、あとはこっちのもの。ありとあらゆる手段を使って結婚してみせますわ」
「グラストンとのことは、フランからちょっと聞いてたけど、本当に本気だったんだ」
「もちろん。グラストン様こそ理想の夫ですの」
おだやかにほほ笑んでいるようで、その目だけは笑っていない。ヘルムートに監禁されていた間に、何があったというんだろうか。
「えっと、野暮な気はするんだけど、理由をきいてもいい?」
なにしろランス家は勇士七家にありながら、身内から反逆者を出した問題伯爵家だ。ヘルムート討伐戦に加わったおかげでなんとか面目を保っているけど、いつ取り潰しになってもおかしくない。
それに、ここ数代失策が続いたおかげで財政状況もよくない。邪神の呪いのせいで長年の忠臣の多くも失っている。
隣国の由緒正しい姫君が嫁いでくるメリットが一切見当たらないのだ。
シュゼットをランス城から助け出したのはグラストンだと聞いているし、その間に吊り橋効果的なドラマチックなアレコレがあったのだ、と考えられなくもないけど。
愛や恋を理由にするのは、ハーティアとの外交がやりたいからと、留学してきたシュゼットらしくない気がするんだよね。
「だって、グラストン様と結婚したら、ランス伯爵夫人になれるじゃないですか!」
「理由そこなの!?」
まさか地位目当ての結婚だったとは。
私が声をあげると、シュゼットはむっと頬を膨らませた。
「そこ呼ばわりは失礼でしてよ。ランスといえば、キラウェアとハーティアを繋ぐ要所ではありませんか。ランス家に嫁ぐということはつまり、両国の外交に携われるということではありませんか」
あ、めちゃくちゃシュゼットらしい理由だった。
この期に及んで、初志を貫こうとする彼女の姿勢には、いっそすがすがしいものがある。
「外交のためにご結婚されるのですか」
これにはAIユキヒョウも驚いたみたいで、アイスブルーの瞳をぱちぱちと瞬かせている。
「もちろん、それだけではありませんわ。私が嫁げばランス家はキラウェア、ハーティア、両国から復興支援を受けられます。ランス家に騎士伯でいてほしい方々にとっては、利のある婚姻のはずです」
それはうちの国にとってのメリットだ。外国人のシュゼットに背負わせていい問題ではないような気もするのだけど。
「それになにより!」
シュゼットはさらに続ける。
「リリィやセシリアたちと交遊を持ち続けられますわ!」
「理由そこなの!?」
同じツッコミが口をついて出てしまった。
「だから、『そこ』程度じゃありませんの! 誘拐騒ぎに巻き込まれておいて、何の対策もせずに母国に戻ったら、もう二度と国外に出してもらえませんわ! あなたがたと二度と会えなくなるなんて、絶対に嫌ですの!」
「えええ……」
確かに、シュゼットの立場と経緯を考えたら、あり得る事態だけどさ。
「友情や外交を理由に、好きでもない人と結婚するのはさすがに……」
「すっ……好きでもない、とは、言ってませんわ」
さっきまであれほど饒舌だったシュゼットの声が、あからさまに上ずった。みるみるうちに白い顔が赤くなっていく。そのすぐ後ろで、グラストンの顔も同じように赤く染まっていった。
ふーん?
へー?
ほー?
そういう理由もちゃんとあったんだ?
やっぱり私達の知らないどこかで、ドラマチックな何かがあったらしい。
「恐れながら!」
生暖かい空気にみたされた応接室に、突然グラストンの声が響いた。
騎士は女王セシリアの前に跪く。
「私はシュゼット姫を救い出すために突入したランス城で、逆に姫君の気高さに救われました。夫として、シュゼット姫を一生お守りすることをお許しください!」
まさに、一世一代の告白だった。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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