【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「え……えっと」
突然年上の騎士から、婚姻の許可を求められた新米君主はうろうろと視線をさまよわせた。
話は理解しているけれど、自分で判断していいのか迷ってしまったらしい。
すがるような目を向けられて、私はうなずく。ここは許可一択だと思ったから。
同じように視線を向けられたユキヒョウも、ゆっくりうなずく。
何度か呼吸を整えたあと、セシリアは唇を震わせながら言葉を紡いだ。
「ゆ、許します」
「感謝します!」
これでハーティア国内において、シュゼットとグラストンの婚姻が認められた。キラウェアからの許可がまだおりてないから、婚約状態というべきか。
自分のために君主に跪いたグラストンを見て、シュゼットはぽーっと顔を赤くしている。グラストンの潔い行動が心の奥深くに刺さったらしい。
貴族の結婚は必ず君主から許可を得る必要がある。これはこれで、この世界の価値観では理想のプロポーズのひとつだ。
まさか間近に目撃することになるとは、思わなかったけど。
「この国に責任を持つ王として、おふたりの結婚を認め、支援いたします。いいですよね、ディー?」
「よいご判断と思います」
従者からの賛同を得て、セシリアは、ほっと息を吐いた。ディーは壁に向かって前脚をああげた。壁の一部が真っ白なモニターに切り替わり、そこにさまざまな情報が映し出される。
「シュゼット姫帰国前に、宰相のギュスターヴ様も交えて今後のスケジュールを相談いたしましょう。国内で段取りできるところはすべて整えてから送り出したほうがよいでしょうから」
「お願いします」
「……と、彼にも加わっていただいたほうがよいですね」
ふとディーが応接室のドアを振り返った。軽いノックとともに、入室許可を求める声が響いてくる。
聞き覚えのある低い声だ。
セシリアが許可を出すと、藍色の上着を着た黒髪の騎士が入ってきた。ランスに派遣された騎士たちをまとめている総大将、フランドールミセリコルデだ。
真新しい眼鏡をかけたフランは主君に跪いているグラストンを見つけて、ぎょっと足をとめる。
「現状報告にうかがったのですが、何事ですか? これは」
グラストンはあわてて体を起こした。
「セシリア陛下に、シュゼット姫との婚姻の許可を頂いておりました」
「ああ、そういえばそんな話をしていたな」
彼女たちのことはフランも把握していたようだ。ふむ、と興味深そうにうなずく。
と、唐突にフランもまたセシリアに向かって膝を折った。
「セシリア陛下、私はハルバード家に婿入りしリリアーナ嬢と結婚することを希望しています。どうか、許可を」
「はあああああ!?」
今度はツッコミではなく、悲鳴が口をついて出た。
なにやってんの。
パニックになっている私の前で、当のフランはけろっとしている。
「恋人にプロポーズしたのは俺も同じだ。高位貴族として陛下に許可を願い出るのは当然のことだろう」
「必要なことだけどね?」
これは絶対あれだ。
後輩が結婚の既成事実を作っているのを見て、先を越された気になったに違いない。
独占欲の権化なフランが、こんなチャンス放っておくわけがなかった。
私を縛るためならどんな手段でも取る、その気質は嫌いじゃない。
でも絶対、今じゃないと思うの。
「えええええ、きょ、許可! 許可します!」
こくこく、とセシリアは壊れた首振り人形のように頭を縦にふりながら、許しを与えた。
にんまりと笑ってフランが立ち上がる。
私達の縁談はもともと両家の親はもちろん、姉兄からも切望されている。そのうえ最高権力者からの許可までもぎとった。
さすがにここから破談になることはないと思う。
「即位してすぐに縁談をふたつもまとめられるとは、すばらしい功績ですね」
ユキヒョウ従者は手放しで主君を褒めてるし。
「ツッコミが……ツッコミが足りない……」
思わず令嬢らしからぬうめき声を出してしまったのは、しょうがないと思う。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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