【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「では、このように進めましょう」
シュゼット帰国までの簡単なスケジュールを決めた私達は、一旦会議を終わらせることにした。カレンダーや地図など、予定決めに必要な資料を映していたモニターが、ふっと暗くなる。
データ管理をしていたAIユキヒョウ、ディーが会議の参加者を見た。
「本日の議事録は、整理してメールでお送りします。みなさま、スマホにてご確認ください」
それを聞いて、グラストンが軽く手をあげる。
「シュゼット姫への情報共有はどうしますか」
そういえば、セシリアやフラン、グラストンなど勇士七家メンバーが多いから気にしてなかったけど、この部屋にいるメンバーの中でシュゼットだけがスマホを持っていない。
今回の議題は彼女の帰国スケジュールについてだ。本人があとで確認できないのは不便だろう。
ディーは丸い頭をこっくりと上下させる。
「ご心配なく、シュゼット様用のスマホはすでに手配しております」
「外国人の私が持ってよいのですか?」
乙女の心臓を本格運用するにあたり、近衛や使用人たちにもスマホが支給された。しかし、それはやはり信用のおける自国民に限った話である。
姫君の疑問にディーは肩をすくめる。
「この艦は、全ての乗員がスマホとIDを持つことを前提に設計されています。シュゼット様にもスマホをお渡ししなければ、快適にお過ごしいただくのは難しいかと」
他国への情報流出リスクとかは考えなくていいんだろうか。シュゼットがすすんで情報を盗むとは思わないけど、万が一、という可能性もある。
私の疑問を見透かすように、ディーは耳をぴこっと揺らした。
「ご心配なく。リスクは使用者の権限でコントロールします。シュゼット姫のスマホには、基本的な通話とメール機能以外は付与いたしません」
「ああ、子供用スマホみたいなやつ」
「その通りです」
悪意を持ってスマホを使おうにも、そもそも悪用できるような機能がなければ、使えない。しっかり制限つきのゲスト用スマホが用意されていたようだ。さすが上位互換AI、隙が無い。
主君にはだだ甘なのに。
「シュゼット姫、お疲れになったでしょう。艦内に個室を用意しましたので、そちらでお休みください」
「ありがとうございます」
グラストンのエスコートで、シュゼットがソファから立ち上がる。
「グラストン、シュゼット姫を部屋に案内したらD7区画に向かってくれ。ランス家ゆかりの騎士たちをそちらに配置している」
「かしこまりました」
フランの指示にうなずくと、グラストンはシュゼットと一緒に部屋を出ていった。応接室には、セシリアとディー、フランと私が残される。
「セシリア陛下、今報告よろしいですか?」
四人だけになったのを見計らって、フランがセシリアに話しかける。
「話の流れでシュゼット様を優先しておりましたが、いくつか共有したい事項があります」
「あ、そういえば、フランドールはもともと現状報告に来たのでしたね。はい、よろしくお願いします」
セシリアが姿勢を正すと、フランは軽くうなずいてからスマホを操作した。一旦暗くなっていたモニターに、また情報がずらりと並ぶ。
「ランス攻城戦のために派遣した王国軍のうち、ランス家ゆかりの者を中心に百名ほどをランス城の復旧と維持のために残していくことが決まりました。近隣の領主から派遣されてきた騎士は各自帰途へ。それ以外の、残り三千名ほどを『乙女の心臓』に収容しています。彼らはこのまま、女王の兵として運用されることになります」
「ご苦労様です。白銀の鎧はどうなりましたか?」
女王の質問を受けて、フランがモニターを振り仰いだ。
短剣を持った鎧と、槍を持った鎧の二体が表示される。
「ミセリコルデ、ランス、ともに艦内に収容ずみです。ただ、ほぼ無傷であったミセリコルデに比べて、コクピットを破壊したランスの損傷が大きいです」
「こちらについては、私から報告を」
ディーが告げると、また画像が変わった。槍を持ったランスの姿が大きく表示される。コクピットのあるお腹の部分が赤く塗られている。
「インフラ管理AIデネブによる報告です。中心部のコントロールユニットが全損。ただ、幸いに、というべきかわかりませんが、破壊されたのはここだけですので、残存するパーツを組み直せば、再稼働は可能です」
「修理にはどれくらいかかりますか?」
セシリアの質問に、ディーはヒゲをそよがせる。
「だいたい半月ほどでしょうか。邪神の召喚したモンスターが跋扈する現状で、白銀の鎧が半月も使用できないのは痛いですが」
「いや、むしろ好都合だ」
フランが口をはさんだ。
「パイロットのグラストン・ランスはつい先日スマホを使い始めたばかりだ。白銀の鎧どころか、電子機器の使用もおぼつかない。王立学園地下にあったようなシミュレーション機能を使って、ある程度練習させる必要がある。その上、ランス城の後始末にシュゼット姫との縁談のこともある。あいつに課せられた問題を考えれば短すぎるくらいだ」
「そうでしたね。グラストンのためには、必要な期間かもしれません……」
セシリアが心配そうに眉根を寄せる。しかし、女王の立場からそう言ってあげられないのが現状だ。
「白銀の鎧は、勇士七家の直系子孫しか操縦できませんからね」
「そのことなんだが、ディーにひとつきいていいか?」
フランが軽く手をあげる。
「なんでしょう?」
「我が家に伝わる白銀の鎧は、その名前の通りミセリコルデ宰相家の者しか操縦できないはずだ。しかし昨日、戦場にミセリコルデを運んできたのはリリィだった。明らかに仕様と食い違っている。理由を聞かせてもらおうか」
フランの疑問に、ユキヒョウはこくりとうなずいた。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
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