【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
私は聖女じゃない。だから、自分自身の手で世界を救うことはできない。
小夜子の記憶とともに目覚めた十歳のときから、繰り返し言い聞かせてきたことだ。
この世界のヒロインはあくまでセシリア。悪役令嬢の私はどんなにがんばっても、奇跡は起こせない。できるのはせいぜい、聖女が世界を救えるようお膳立てを整えることくらいだ。
それなのに、いまさら私にも聖女の遺伝子があるって、どういうことだろう?
「リリアーナ嬢に限らず、この国の貴族女子の多くは、聖女の遺伝子を持っています。そのため、ある一定の条件下で当代聖女のセシリア陛下がお力添えすれば、聖女の力に覚醒し、聖女に準ずる存在、いわば『準聖女』に昇格することができるのです」
「なんだその昇格制度は」
フランがうさんくさそうな顔で眉間に皺を寄せる。私もそのご都合主義はよくわからない。
「覚醒というと、私がリリィを送り出した時に使った力ですよね?」
セシリアがそっと私の手に触れた。その瞬間、私の体の周りに金色の花びらのような光が舞い始める。今までどの魔法でも起きなかった現象だ。
「手を握って、とにかくリリィに力を貸したい、と願ったら発動しましたけど、私自身もよく理屈はわかっていないんですよね」
「その光は、リリィがミセリコルデのコパイロット席に座っている時にも見たな」
「はい。これが準聖女の覚醒です」
ディーは私が金の光を纏わせているのを見て、満足そうにうなずく。
「五百年前の戦いの折、聖女は勇士たちの協力を得ることはできましたが、その反面女性の側近は少なく、戦いの場で苦労することがたびたびありました。のちの子孫が苦労しないよう、側近候補となる『準聖女』のシステムを作ることにしたのです。
白銀の鎧は、準聖女も『聖女』と認識します。リリアーナ嬢がミセリコルデに乗ってランスまで飛行することができたのは、まさにこの機能によるものです」
私が準聖女だったから、ミセリコルデを操縦することができた。
一見理屈は通っているように見える。だけどフランはまだ納得できていないようだった。
「ディー、お前はさきほど『ある一定の条件下でセシリアが力を貸せば準聖女になれる』と言った。その一定の条件とは何だ?」
「難しい条件ではないですよ」
ディーはぴこん、と片耳をふるわせる。
「聖女の遺伝子を持つこと、女子であること、セシリア陛下に信頼されていること、そして何より、恋をしていること」
「……は?」
フランが真顔になった。
私もセシリアも、ディーの言葉が信じられなくて、目を丸くする。
「恋、が条件なのですか?」
「はい」
セシリアの問いに、ディーがはっきりとうなずいた。
「そもそも、聖女の力の根源は恋する乙女心なのですから」
「あったね! そんな設定!!」
ここのところ殺伐とした状況が続いてたから忘れてた。そもそもここは、運命の女神が救済方法を探ろうとシミュレーションゲーム化したら、乙女ゲームになってしまうような世界なんである。
恋心が条件になるなんてあたりまえ、むしろ必須条件と言っていい。
「リリアーナ嬢は、フランドール様への恋心を起点にして準聖女に覚醒し、ミセリコルデに乗って戦場へ向かった。いかにも運命の女神が好みそうな、恋の奇跡です。作戦が成功しないわけがない」
ディーはまるで運命の女神を知っているかのような口ぶりで語る。
しかし、大筋に間違いはないだろう。実際にその通りの奇跡が起きているのだから。
「ねえディー、私からも質問いい?」
私は軽く手をあげた。
今までのディーの説明に大きな矛盾はない。私が聖女の遺伝子を持っていて、フランに恋をしていたからミセリコルデに乗れた。そこはなんとなくわかる。
でも、元現代日本人の小夜子としてどうしてもわからないことが、ひとつ残っていた。
「聖女の遺伝子って、どうやって受け継いでるの?」
「おや、そこが気になりますか」
「貴族女子の多くが遺伝子を持ってる、って言ったけど、初代聖女が跡継ぎを産んだのは五百年も前でしょ? そんなに世代が離れてたら、元の遺伝子なんて残ってないんじゃない?」
ディーはにやりと笑った。
「もちろん、ちょっとした仕掛けがありますよ」
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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