【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「勇士七家の末裔が世代交代する時、王宮の水盤で遺伝子チェックするのは、御存知ですよね?」
「継承者が血を捧げて、先代との血縁関係を確認するのよね?」
「はい。血からDNAを抽出し、先代までの遺伝子データベースと照合。どれだけ近しい血縁かを確認し、一定内の親族である場合にのみ継承を認めます」
つい最近、セシリアの王位継承でも使ったシステムだ。
「これは白銀の鎧を後世に残す、と決めた際に作られたものです。次代に託すにあたり、遺伝子、つまり血縁であることを継承条件にしたのです。他にも、頭脳や体力、人柄など様々な特徴が条件に挙げられたのですが、どれも不適当で」
「人柄のよさとかは、時代ごとに基準が違うもんね」
うむうむ、とディーがうなずく。
「純粋な体力や知力を基準にしてしまうと、実力のあるサイコパスが使用者になる可能性があります。それに、誰がテストして合格にするかという問題もありますし。それで結局、血族に託す、という形に落ち着きました」
「血族の中でその時一番良いと思う者を継承者にさせることで、人材をある程度選別させていたのね」
「代々続く古い家系は、人材だけでなく知識も財産も継承していきますので、必然的に指導者向きの者が生まれやすくなります。もちろん、完璧ではありませんが」
「ダガー家やランス家なんかは、断絶寸前になったからねえ」
「それでも最後のひとりが生き残っている。そういうシステムなんだろう」
フランがため息交じりにそう言う。
白銀の鎧を勇士個人ではなく、血族へと継承したのはリスク分散も期待されていたに違いない。
「そこで問題になったのが、建国王と聖女の血族です」
「他の勇士たちと一緒じゃダメなの?」
「DNAはどうしてもシステム上、両親の形質を混ぜることになるじゃないですか。二代目ですでに建国王と聖女の遺伝子がブレンドされて一緒くたにされますし、三代目以降は外からさらに別のDNAが加わって、どんどん因子が薄まっていくでしょう。建国王の遺伝子はともかく、聖女の遺伝子はもっと明確に子孫に受け継がせたくて」
「そこで混ざっていくのが、進化の重要なポイントだと思うけど」
世代交代を繰り返すことで新たな形質を獲得する。それが生物進化の大事な要素だ。変化しない生物は、いずれ環境変化に耐えられず絶滅の道をたどっていく。
「なので、聖女の遺伝子はDNA以外の器官で受け継がせることにしました」
「DNA以外って何」
遺伝子といえばDNA、DNAといえば遺伝子。親から子へと受け継げるのって、そこしかないと思うんだけど。
私が首をかしげていると、またモニターがぱっと切り替わった。
「こちら、一般的な動物細胞の図になります」
シンプルな線で書かれたそれは、小学校の教科書で見かけたような図だ。DNAを抱えた丸いボールのようなものを中心に、いくつも細かい器官浮いている。
そのうちのひとつ、いくつも部屋を持った楕円形の組織が、赤くマーキングされた。
「リリアーナ嬢はこれが何か御存知ですか?」
「ええと……理科で習ったような気がするけど……いまいち覚えてないあ、呼吸に関する器官だったような? 気がする」
「正解、酸素からエネルギーを作り出す、ミトコンドリアです」
「あ……」
ようやく、ディーが何を言おうとしているのかに思い至った私は声をあげた。
もしかして。
「生物発生のシステム上、子は必ず母親のミトコンドリアを受け継ぎます。それも、父親と要素の混ざるDNAと違い、完全なコピーです。このミトコンドリアを利用することで、後世にまで聖女の因子を受け継がせることに成功しました」
「ミトコンドリア・イブうううぅぅぅぅ……」
私は思わず呻くことしかできなかった。
聖女の遺伝子が、そんな形で受け継がれてたなんて。確かにミトコンドリアなら、DNAよりずっと正確に伝わるだろうけど。
人類のミトコンドリア遺伝子たどっていったら、最終的に数人の女性に集約されるとかそんな話につながるとか思わないじゃん。
「……リリィ、そろそろ俺たちにもわかる言葉で話してくれないか」
遠慮がちなフランの声が投げかけられた。振り向くと、フランとセシリアが困り顔で私とディーを見ている。途中から私達の言ってることがわからなくなってしまったらしい。
「えーと、DNAとかミトコンドリアの話って、どこから説明すればいいのかな」
「人体の細胞組織と、受精プロセスからじゃないでしょうか? この時代の医療技術ですと、卵子や精子を見た者がいないでしょうし」
「そこから?」
「そもそも顕微鏡が普及してませんからねえ」
ぐぬぬ、そこから説明となると話が長くなるぞ。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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