【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
私は言葉をなくしてその場に立ち尽くした。
つないだ手のひらから、かあっと熱くなる。
脳裏に浮かぶのは、少し前にランス城の仮眠室で起きた出来事だ。フランに求められて、ベッドに押し倒されて、唇を貪られた。
セシリアたちが『乙女の心臓』に乗ってランス城に駆け付けていなければ、どうなっていたかわからない。
応接室に入ってくるなり、フランがセシリアに跪くとか、アホなことをするもんだから、完全に頭から抜けてたけど。私達はついさっきまでなんてことをしていたんだ。
会議は終わったんだから、すぐに部屋を出ればいいのに、どうしてフランは手を掴んできたんだろう。どうしてそのまま、動こうとしないんだろう。
まさか、このままあの時の続きをするつもりなのか。
確かにこの部屋には他に誰もいない。
でも多分来客をもてなす部屋だから、きっと監視カメラがどこかにあるはずだし、まああのユキヒョウの性格だったら、気づいても見て見ぬふりされそうだけど、でも。
「落ち着け」
はあ、とため息が落ちて来た。
フランはむうっと眉間に皺を寄せたまま、私を見つめている、というかほとんど睨んでいる。昔からフランの癖を理解してる私だから平気だけど、一般人だったら泣くほど怖い顔だと思う。
「お前を引き留めたのは、そういう意味じゃない。その……謝りたくて」
「謝る? 何を」
「ついさっきまで、自分がどんな目に合わされそうになっていたのか、忘れたわけじゃないだろう」
フランはぐりぐりと皺の寄った眉間をもみほぐす。それから、頭をさげた。
「悪かった」
「ええ……」
「お前をベッドに組み敷いた時の俺は、正気じゃなかった。戦闘で気が立っていたからといって、あんな風に奪おうとするものじゃなかった。すまない、もう二度とあんなことはしない」
結構男尊女卑気質の強いこの世界で、年上の男の人が頭を下げて謝るのは、かなりの重大事だ。それくらい、私に悪いことをしたのだと思っているんだろう。心の底から謝っていることはわかる。
でも、真摯に謝罪をするフランを見て、沸きあがってきた気持ちは「嬉しい」じゃなかった。むしろ「がっかり」だった。
「……謝らなくていいのに」
「え」
「そんなの、とっくの昔に許してるから」
だからあの時私は、いいよと言ったのだ。
私だって、フランに抱きしめられたかった。キスされたかった。抱きしめたかったし、キスしたかった。あの瞬間、私はどうにかなっていいって思ってた。
もう二度としない、なんて言われるのは何か違う。
「婚約したってことは……これから結婚するんでしょ、私達」
「ああ」
「夫婦になるんだし……全然いいんじゃない?」
貴族の世界は貞操に厳しい。未婚の男女が二人きりで会っているだけで何を言われるかわかったもんじゃない。でも正式な手続きを下手男女なら別だ。
「タイミングがあえば、また、そういうことをするのも、やぶさかではないというか」
「……!」
そこまで言ったところで、フランは突然しゃがみこんだ。はああああ、と特大のため息を漏らして、顔を覆っている。
「お前という奴は」
「フラン?」
「……俺を幸せにしたいのか、破滅させたいのか、どっちだ」
もちろん幸せ一択ですが、何か!?
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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