【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
突然現れた黒衣の男を見て、お父様は一瞬真顔になった。赤い瞳でじいっと男を見つめていたかと思うと、大きく首をかしげる。
「ジェレミーとは何の冗談だ。ソレの中身はジェイドだろう」
あっさり見破られて、その場にいた私達は全員がくっと膝から力が抜けた。
「えええ……もうバレちゃうの?」
「ダ、旦那サマノ目ハ、誤魔化セマセンネ……」
しゃがれ声のまま、ジェイドは肩を落とす。
最強騎士の野生の勘が鋭すぎる。
「身内から代役を立てたところで、ダガー家の血をひいてなければ意味がないだろう」
「それがそうでもないのよ、お父様」
「ん?」
「ぼくノ父ガ、フェルディナンド、ナノデス」
ごほ、とジェイドが咳払いした。耳障りなノイズまみれだった声が、元に戻る。
「母がボクを産んだあと、父から一方的に離縁を突き付けられて、ボクごと追い出されたんです。その後、呪殺集団に誘拐されていたところを、師匠が助けてくれて」
「それで賢者殿の弟子になったのか。だがどうしてわざわざこんな格好を?」
「……ボクに、ダガー家を継承する意志がありませんので」
ジェイドは静かに断言した。
「しかし、国中に魔物が出現している今、『ダガー』の戦力を眠らせたままにするには惜しいと宰相閣下に要請されてしまって。そこでお嬢様と相談して、ジェレミーという仮のダガー伯爵を立てることにしたのです」
体を覆う黒衣と仮面、そして風魔法を使ったボイスチェンジは偽装のためだ。身長以外の特徴を隠した彼を見て、中身がジェイドだと言い当てることのできる者など、うちのお父様以外にいない。
「この『ジェレミー』は誘拐先で呪いを受け、顔と喉が潰されていることになっています。邪神との戦いに区切りがついたところで、呪いが悪化して命を落とします」
「そして、ハルバードの家臣ジェイドが戻ってくるわけか」
「はい、その通りです」
「伯爵になれるチャンスなんだぞ、いいのか?」
ジェイドは首を振った。仮面の奥の顔は見えなかったけれど、悲痛な感情は伝わってくる。
「ボクは師匠の弟子で、お嬢様の側近です。母を死に追いやったダガー家に戻りたくはありません。ボクをハルバード侯爵家の一員のままでいさせてください」
「……建国神話では、勇士の末裔は血を繋いで聖女に協力すべし、とあるんだけどね」
「……っ」
「聖女たる女王陛下はどう思われますか?」
お父様はくるりとセシリアを振り返った。臣下として、まずは仕える君主の判断を仰ぐべきだと判断したらしい。突然話を振られて、セシリアがぴゃっと身をすくませた。
「だ、だだ、大丈夫です。すでに宰相から一度相談されて、許可を出しました。この戦争の間、力を貸していただけるのならその後の処遇については、希望を通していただいて構いません」
「寛大な処置に感謝します」
セシリアの言葉に、お父様は軽く頭をさげた。
「旦那様……」
「勇士が仕えべき聖女が許可を出しているんだ、私が反対する理由はないよ。そもそも、身内の情より優先される伝説なんてないと思うし」
お父様はジェイドの肩をぽんと叩いた。
「励みなさい。君がウチのジェイドとして戻ってくるのを待っているよ」
「ありがとうございます!」
これで、白銀の鎧『ダガー』の操縦者問題は片付いたかな? たぶん!
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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