【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
魔の森のゾンビを殲滅した私達は、その後も破竹の勢いで国の南側を東へと進んでいった。
まずはハルバード城の地下から『ハルバード』を発掘。
この白銀の鎧にはお父様が乗り込むことになった。
単純な搭乗条件だけなら、私とアルヴィン兄様も当てはまるのだけど、なにしろお父様は最強騎士である。どう考えてもお父様が適任、ということで満場一致で決まった。
お父様は最初、鎧の操縦方法に戸惑っていたけれど、三日もすれば自由自在に乗りこなすようになった。現在はとんでもない勢いで南部地方の魔物を撃破して回っている。
次に向かったのはカトラスだ。
『カトラス』の搭乗者も、現当主のダリオが勤めることになった。
こちらも現当主だから、という理由ではない。うちと反対に適格者が彼しかいなかったのだ。カトラス家は七人兄弟だけど、ダリオの弟妹はまだ十歳にも満たない子供ばかり。次男のルイスがかろうじて十七歳だけど、一年前に交易の勉強のために国外に出て、それっきりまだ帰ってきてない。戦闘経験もほとんどないそうだから、連れて帰ってきたところで、戦力にならないだろう。
魔物災害の現場指揮を執っているダリオが前線に出ることに、懸念の声も上がったけれど、それはダリオ本人が無理やり封じ込めた。
どうも前々から自分で乗って戦いたかったらしい。
白銀の鎧に乗り込んで、『これであの白蛇クソ野郎をぶちのめせる!』と叫んだダリオの目は完全に据わっていた。
どれだけリヴァイアサンに苦労させられてたの。
早速『カトラス』で飛び出していって、即仕留めて帰ってきた彼を、領民はもろ手を挙げて称えたとかなんとか。その後も海に出現する魔物を倒して回って、すっかり領地のヒーローになっているそうだ。
莫大な借金さえなければ、有言実行の真っ当な領主なんだよね、ダリオは。
国土の南を西から東へと移動し、ついに東の国境クレイモア伯爵領に到着した私達を迎えたのは、大量の魔物の骨と、それらを倒して回った無敵の白銀の鎧『ソーディアン』と『クレイモア』だった。
「セシリア! リリィ! クレイモアにようこそ!」
『乙女の心臓』をクレイモアの居城近くに停泊させると、早速クレイモア伯爵家の面々が乗り込んできた。
勇ましく騎士の上着を着たクリスを先頭に、同じく騎士服姿のヴァン。そして、後ろからゆったりと白いオヒゲがかっこいいクレイモア伯爵がやってくる。
「お久しぶりです、クリス、ヴァン。そしてクレイモア伯は初めましてですね」
「この老骨めに援軍をお送りくださり、ありがとうございます」
クレイモア伯が膝を折ると、クリスとヴァンもそろってセシリアに跪いた。
「クレイモア伯爵家はセシリア陛下に忠誠を誓います。一族が貴女の剣となることをお許しください」
「許します」
「ありがたき、幸せ」
ハルバードでも、カトラスでも、同じように繰り返されたからだろう。以前よりはずっと落ち着いてセシリアは老伯爵の忠誠を受け入れる。
多分これからもまだ行く先々で同じように跪かれるんだろうなあ。
「面をあげて楽にしてください」
これもいつもの繰り返しだ。セシリアが許可を出すと、クリスがぷはっと息を吐いて立ち上がった。
「少し前から本当は王族なんだって知ってたけど、セシリアに忠誠を誓うのは少し不思議な気持ちになるな」
「これ、言葉を慎みなさい」
うちのお父様よりさらに自由人なクリスを祖父がたしなめる。セシリアがふふ、と年相応の少女らしく笑う。
「いいんです、お気になさらないで。クリスには学園に通っていた時からずっとお世話になっていましたから。私もあなた方に剣を捧げられるのは、まだなんだか落ち着かないです」
「学園の同級生組は、プライベートでは今まで通りでいい、ってことになってるわ。気を遣いすぎるのはそれはそれで失礼になるから、普通にしゃべりましょ」
「はい、そうしてくださったほうがうれしいです」
「陛下がそうおっしゃるなら、そういたしますが……」
長年、王様に仕えてきた老伯爵は困惑顔だ。しかしこの場はひとまず、友達のノリを優先させてもらおう。
ヴァンは興味深そうにきょろきょろと辺りを見回した。
「白銀の鎧を三体も復活させたんだろ? 全部この城に置いてあるのか?」
「そちらについては、私がご説明いたしましょう」
ぴこぴこと耳を震わせながら、ユキヒョウのディーが前に出た。
クレイモア伯爵との面会ということで、従者のディーと護衛役のフィーアも実は後ろに控えていたんだよね。
ちなみにフランとジェイドはお仕事中で来られなかった。作戦行動中、兵たちをまとめる管理職はこういう時はめちゃくちゃに忙しい。
「ハルバードとカトラスは魔物退治のために出撃中です。ミセリコルデとダガーはこの城の防衛のために格納庫で待機。戦闘でコクピットが大破したランスは修理中。そろそろテスト起動の予定です」
「待機状態の鎧が二体もあるのか。それは頼もしいな」
「ミセリコルデとダガーを交代に出して、一度ソーディアンとクレイモアを母艦に収容させましょう。破損部分の修復が必要です」
「それはありがたい!」
クリスがぱっと笑顔になった。
「アギト国から送られてくる魔物がとにかく多くてな、あちこちガタがきているんだ」
私は城の外に積みあがった魔物の骨を思い出す。肉が残ってないから衛生面にそこまで問題はないんだろうけど、あれだけ山になるって何体分の骨なんだろうか。
「まあ、あれだけ戦っても、『ガタ』程度ですんでるのは、さすが白銀の鎧って感じだな」
「いやそれだけではないと思うぞ?」
ヴァンの言葉に、クレイモア伯が疑問をさしはさむ。
「儂が使っているクレイモアに比べて、ソーディアンのほうが明らかに頑丈で出力も高い。建国の祖の機体として、特別に強化されているのではないか」
「そうだったの?」
私は思わずディーを見た。
彼の説明では、白銀の鎧のスペックは横並び。武装が違うだけのほぼ同型機だったはずだ。
「ああ、それは恋する乙女効果ですね」
ユキヒョウはしれっとした顔で、とても恥ずかしいことを言い出した。
「恋する……おとめ?」
クレイモア伯がぽかんとした顔になる。ディーはヒゲをそよがせて笑った。
「皆さま建国神話は御存知でしょう? 聖女の力の根源は、恋する乙女心。準聖女として覚醒しているリリアーナ嬢とクリス嬢は、同乗者が恋人である場合に限り白銀の鎧を大幅パワーアップさせることができるのです」
「そんなところまで乙女ゲーム仕様……!」
恥ずかしい仕様もあったものである。
「つまり、私がヴァンのことを好きだから強かった……ってこと、か?」
それを聞いてクリスの白い肌がみるみる赤く染まっていく。
いやまあ私もクリスも、婚約者を公表してるからふたりでラブラブしてたって、別に世間的に問題はありませんけどね?
恥ずかしいものは恥ずかしいんですが!
「そういえば私がミセリコルデに乗ってる時も、出力が上がってたわね。コパイロット席から支援してるからだと思ってたわ」
どうしよう、そのうちふたりで手を繋いでハート型のビームとか出すようになったら。やってやれないこともなさそうなのが怖い。
まさか裏でそんなバフがかかっているとは思わなかった。
「今のクレイモアに必要なのは、休息と修復ですね。ディー、ソーディアンとクレイモアの格納の手配を。それから、フランドールとジェレミーを呼び出してください。修復中の国境警備を受け持っていただきます」
「かしこまりました」
それを聞いて、私も格納庫に足を向ける。
フランが出撃するのなら、もちろん私も出撃だ。
「一時、国境守護の名をお預けします。ご武運を」
「まかされたわ!」
クレイモア伯の言葉に、私は笑顔で答えた。
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