【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「セシリア? どうしてこんなところに!」
私は慌てて、クレイモア伯のエスコートでコクピットから出てくるセシリアに声をかけた。セシリアはへにょ、と眉を下げてほほ笑む。
「ここがアギト国との境と伺いましたので……かの国を、境とはいえ一目見てみたくて」
「あっちから攻撃されたらどうするのよ」
ユラのことだ、超長距離から狙撃する魔法や兵器を持っていてもおかしくない。
自国という有利な場所から襲ってくる可能性は十分あった。セシリアはおっとりと首をかしげる。
「大丈夫ですよ。こんなギャラリーの少ないところで、派手好きのユラが狙ってきたりしませんから」
確かに、あのはた迷惑な邪神の化身が、こんな地味でさびれた場所を犯罪の舞台に選びそうにないけど。
普段は気弱なのに、ユラ関連の時だけ急に大胆になるのはなぜなの。
「この星を救うには、邪神だけでなく彼が巣食う国も打ち倒さなくてはならない。……国内をめぐり、力をつけた暁には、『乙女の心臓』でこの先に乗り込んでいかなくては、ならないのですよね」
「理屈としては、そうなるわね」
フランは今度は『侵略戦争だ』とは言わなかった。アギト国からは何度も侵略戦争を仕掛けられ、多くの犠牲を出していたからだ。キラウェアと違いアギトの嫌ハーティア意識は根深い。こちらから討って出て、政権を倒すくらいのことまでしなければ、争いが止まることはないだろう。
ゲーム版の世界でも、アギト国に兵を向かわせるシナリオがいくつかあった。
「進む時は、私達も一緒だから」
「……ありがとうございます」
ぽんと背中を軽く叩くと、セシリアは儚げに笑った。反対側からクリスもセシリアの背中を叩く。
「私とヴァンの操るソーディアンは最強だからな。頼りにしてくれていいぞ」
「む、私とフランのミセリコルデも負けてないわよ」
「じゃあ手合わせしてみるか?」
「待て待て待て、強化されてるソーディアンとミセリコルデで戦ったら、木が折れるどころか地形が変わるからやめてくれ」
ノリノリの婚約者をヴァンが止める。
さすがに手合わせごときでそこまで被害を出すわけにはいかない。
「……いいですね、ボクも副操縦士がほしいです」
私達を見ていたジェイドがぽつりともらした。意外な一言に、私は目を丸くしてしまう。
「ええと、恋人を乗せたい、ってこと?」
ストレートに解釈すれば、フィーアと一緒に乗りたいっていう意味になるんだけど。
ジェイドは慌てて両手をぶんぶんと振った。
「いいいいい、いいえ、そういう意味ではなくて。純粋に、操縦サポートがほしいんです」
「サポート?」
「ボクは素手で戦うより魔法を使うほうが得意じゃないですか。白銀の鎧で戦う時も、遠距離魔法攻撃を使っています。そのせいで、魔法を使いながら機体を操作しようとすると、少し動作が遅れてしまうんです」
魔法使いパイロットの意外な弱点だ。
「機体操作をサポートしてくれる副操縦士がいれば、楽になるのになと思ってしまって」
なるほど。それなら気心の知れたフィーアが適任だ。
しかし、それは彼女が準聖女の条件を満たしていれば、の話だ。
「新しく婚約者を募ればいいじゃないですか」
フィーアが冷えた声が屋上に響いた。